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第11話 素材採取講習

「なぜ私がこんなことをしなければいけないんだ」

レイナは包丁を手にして、いかにも不機嫌そうに言った。

今にもばっさりやりそうであるが、けして危ない人になったわけではない。

ここは『通称。輝け! 憩いの我が家亭』の厨房である。

素材採取講習のためにお借りしたのだ。

採取の授業が厨房からはじまることにもレイナはぶつぶつ言ったけど。

今は野菜を切っている。


「もっと丁寧にしましょう。手を切っちゃうよ?」

「うるさい。そもそも、なぜ私が貴様なんぞに教わらねばならんのだ」

「違うでしょレイナ。リョータさんもしくは先生でしょ。お仕置きにお尻叩きますよ。もちろんパンツ下げて直に。だから、もう一度、貴様って呼んでみてくれ!」

俺は心の底から叫んだ。

「なっ、やはり、おまっ――リョータ……さんは変態だ。斬ればいいんだろ斬れば」

「チッ」

「なんでキサっ、リョータさんは舌打ちをしているんだ!」

「……あーあ。ほら、がんばってー。はーい。もっと丁寧に食材切ってねー」

「なんで私が……こんなヤツと……」

レイナは文句を言いながら千切りにするがかなり雑だ。

この世界の食材にはトマトやレタスなどもあるし、変わった見かけや味のする野菜もある。サラダにすると美味しいのだ。


レイナは料理など今までしたことが無いみたい。

さっき俺が見本に切って見せたけど、レイナの包丁捌きはトマトも葉物も芋の皮向きもめちゃくちゃだ。

「もっと丁寧にお願いします。お返事は?」

「……はい」

講習をするにあたっては言葉使いや態度は先生と生徒。元騎士だろうが先輩冒険者だろうが特別扱いはしない。それがギルド長に提案したことだ。

よって俺はリョータさんもしくは先生と呼ばれるのであり、生徒のレイナを呼び捨てにしているのだ。

ふふ、人生三人目の呼び捨てがこのような美人!

しかも俺には「さん」付けよ~。


レイナは動きやすい服にエプロン姿。

淡い紫色の髪を後ろで結っている。

年齢は23才って聞いた。顔立ちが整ってるし元騎士というだけあって凛々しいし感じだ。細身だけど筋肉で引き締まった体だ。戦闘能力に関してはすごい人なんだろうと思う。

途中で手の切り傷にヒールをかけること数回。

やっとレイナが野菜を切り終えた。

「はい。これをどうぞ。しばらく休憩にしましょう」

「わかった」

レイナはナイフを置くと、俺が渡した治癒軟膏を手に塗る。


俺はドレッシングを作った。

自炊もしてたしマテウスさんのところでも料理作ってたし、マッハ軒でアルバイトもしている俺だ。丁寧かつスピーディに終える。

そして俺がお手本にと野菜を切って見せた方と、レイナが斬った方を分けて皿に取ってドレッシングをかける。

「はい。では実食タイムです。食べ比べてみて。こちらがレイナ。こちらが先生が切った方です。断面や食感などに注意して味わってみてください」

「いったいなんなんだ! さっさと採取を教えればいいだろう!」

レイナがきれた。

もうカルシウム不足なのかしら。


「これも大事な授業なんです! ほら食べてみて。嫌なら俺を呼び捨てにしてくれ!」

レイナは怒った顔でフォークを取った。

「なんでサラダなんて……」

レイナは文句を言いながらも食べ比べていたが、ちゃんと気付いたようだ。表情が変った。

黙々と俺のサラダと自分が作ったサラダを食べ比べている。


「……リョータ、さんの方が美味しい。なぜだ。違う野菜なのか」

レイナは真剣な顔で言った。

「いいえ。まったく同じ野菜です。ただし扱い方が違います」

「どういうことなんだ」

「この野菜サラダに重要なのは新鮮、清潔で、食感が良いことです。つまり丁寧かつ適度な速さで、その野菜に合った切り方をしなければいけないのです」

「食感……切り方……新鮮……」

レイナは再度食べ比べては頷いていた。

よし。これならわかってくれそうだ。


「レイナ。薬草も同じなのです。野菜を薬草に置き換えてみてください」

「薬草も同じ……そうか!」

「はい。清潔で新鮮であること。切り方も大事。それに薬草は人の体の中に取り込まれるでしょ。ポーションやレイナがさっき使った治癒軟膏にも薬草が使われるんだよ。時には命にかかわる物の原料だから。採取は大事にして欲しいのです」

レイナはしばらく真剣な顔で考え込んでいた。

「私は……今までそんな風に考えた事がなかった」

そういう目で薬草を見たことがなかったのだろう。

それは仕方ないことだと俺は思う。

騎士ならば何度もポーションを使ってきただろう。原材料がどうとか一々考えてられないとも思う。しかし、野菜にたとえたらすぐ悟った。元々は賢い人なのだろう。


「はい! ではサラダを食べてお昼にしましょう! それからまた授業だね」

深刻な顔をして考え込んでいるレイナに言った。

「わかった。よく教えてくれた。おまえはなかなか有能なやつなのだな」

有能なヤツなんて初めて言われたよ!

でも、もっと嬉しいことが今の俺にはある。

「おまえって言った~。おまえって言った~。尻たたきです生で!」

「ひっ、あ、え、それは」

慌てているレイナはちょっと可愛かった。

「冗談だよ」

「よかった……」

どんだけ焦ってるんだよ。いくらなんだって俺でもそんなエッチなこと……うん、前科がある。

まあ安心しなさいレイナ。

そんなことはしないさ妄想の中ではその限りではないけどね!


さあ。薬草採集の基本を伝授して、早くドア代稼いで貰わなくちゃ!

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