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第4話 『通称。輝け! 楽しき憩い亭』強襲事件

そして悲劇が起こった。


「貴様っ! 何をしている!」

バキッッとドアが破壊されて、鎧姿に剣を持った紫の瞳の若い女性が踏み込んで来た。

床にばんっと落ちたドアを挟んで、ベッドに座り硬直している俺と入口に立つ女襲撃者。


「うっ?!」


久しぶりだったし、俺ってすっごく体が健康になりすぎてたわけで。

すばらしい飛距離を見せた大量の白いソレが、紫色の美しい髪に整った顔に降りかかったわけで。

「……ひゃぁぁぁぁぁっ」

女が悲鳴を上げた。

俺は下半身裸のまま呆然としていた。

人生初顔射は異世界で、でした。

もうやだ……元の世界に帰りたいよ……


「あっはっは。それは災難だったね。あははは。若いからしょうがないわ」

宿屋の食堂には豪快に笑う宿屋の女主人カラハさん。

傍らには怒りで顔を真っ赤にして俺を睨みつける女騎士。

そして半泣き状態の俺がいる。

「ぐすっ……ぐすっ……」

かつてこれほどこっ恥ずかしい思いをしたことは無かった。

穴が無くても掘って入りたいくらいだ。

「ほらほら元気出しなさい。あ、元気は元気よね。あっはっは」

ぐはぁ。

とりあえず賢者タイムの冷静さを持って状況を整理しよう。


オナ○ーしてたらドア蹴破られて顔射したので三者面談。


うわぁぁぁダメだぁぁぁ。

状況を整理しても身悶えする。

「貴様が、わたしは、わたしの、ああ! 成敗してくれる!」

女騎士が喚く。

名前はレイナというそうだ。

「ほらほらレイナちゃん落ち着いて。ここは宿屋なのよ。お客さんが自分の部屋と同じようにくつろいでくれたらいいの。憩いの時間に何をしてても……ナニをしてても、あははははっ」

ちきしょー。どういう羞恥プレイなんだよこれは。

「しかしカラハ。あのような破廉恥なマネをっ、私にか、かけっ……き、斬るしかない!」

「待ちなさいってレイナちゃん。ほら彼も反省してるんだから」

ふふん。賢者となった俺には、ナニをされたか思い出して羞恥に染まった顔であっても1ミリたりとも興奮などやばいです思い出したらすごいしてきました。


「反省してない! ぜったい今私をいやらしい目でみてた!」

俺は慌てて目をそらした。

「あっはっは。そんなことないわよ。ね? リョータさん」

「もちろんです」

全力で頷く。視線は合わせない。

「うそだっ、私を、その、や、やらしい目で」

このままではまずい。

「待ってくれっ。たしかに俺が君にしたことは悪かったけど、俺がしてたことは悪いことじゃないはずだ! ドアを壊して入ってきたのは君じゃないか。君が不法に侵入しなければこうはならなかったんだ!」

俺は頑張って反論した。

「そ、それはだな。いかがわしいことをしていると思ったからだ」

レイナによると。宿に戻ると長らく空室だった隣に男が入っていくのが見えた。なぜかそわそわしていて少し怪しい。

どのような人物かと扉に聞耳をたててみると、なんと獣人やエルフを連れ込んで乱暴狼藉を働いてるではないか。これは見過ごせないと踏み込んだのだそうだ。

確かにいかがわしいことは想像でしてたけども。いかがわしいセリフをつぶやいてはいたけども。


「あのねレイナちゃん。この宿ががそんな怪しい連れ込みを許すはずないでしょう? 宿泊客の身元確認はするし、今回もちゃんと冒険者証もチェックしてるわよ」

「う……でも……」

そうだそうだ。もっと言ってやって!

「ちゃんと聞いたなら彼一人だってこと。女性なんか連れてない一人ぼっちだってわかったはずだし、よく聞いたらナニしてたかわかったはずよ?」

あああ。何気に俺にもダメージが。

「わ、わからないっ。みたことないしっ。あ、あんなのっ、知らないっ!」

見たところ20代な感じだけど意外にそういうことは疎いのかな。

へっ。俺もだけどな。

「はぁ。こまったわねえ。とにかくわが宿で聞耳とかドアを壊して踏み込んだ件は、レイナちゃんが良くないわ。ちゃんとこの人にあやまりなさい。この人もかなり恥ずかしい思いをしたのよ。だって、ねぇ……ぷくくくっあはははっ」

うわあん。もう俺の心のHPはマイナスだ。


「わ……私の早とちりだった。すまぬ」

その後、カラハさんに説教されてレイナが言った。

不承不承で数センチ頭を下げただけの謝罪だけど。

洗ったばかりの紫色の髪が揺れた。

うーん。俺その髪にかけちゃったんだよな。

「……俺も、その、ごめん。ごめんなさい」

ショックを与えたのは事実だしな。

俺が謝ったのでレイナは面食らったような顔をしていた。

「うんうん。というわけで。話がついたところでレイナちゃん、ドアの修理費なんだけど30万エルドはかかるのでよろしくね!」

「えっ」

レイナが美しい紫の目を丸くした。


「またプライバシーがなくなってしまったよ……」

夕食後、俺はドアのなくなった一室で寝ている。

レイナは元は騎士団にいたそうで、今は冒険者だそうだ。

少し前から冒険者稼業を始めてランクはD。

剣はかなり使えるがまだまだ手持ちの金は少ないという。

というわけで修理代が払えるまではドアがないままになった。

カラハさんによれば、簡単な物とはいえ魔法鍵つきのドアの修理は値が張るらしい。

他の部屋は空いてない。ドアを壊したレイナと俺が部屋を入れ変わるのが当然だったけど、女性をドアなしの部屋にってのもかわいそうだ。

俺がこのままこの部屋でいいと言うと、さすがに反省したのかレイナが謝罪とお礼を言ってきた。

もちろん俺はその顔に欲情する前に「冒険者は助け合いさ!」なんて言っておいた。うん。良く考えたらレイナはDランクだ。冒険者の先輩になにいってんだろうな。ナニしちゃったし。

まあ、元騎士の冒険者ならドア代くらいすぐに稼ぐだろう……あれ?

よく考えたら宿屋の主としてカラハさんが立て替えてくれればよくね?

もしかして俺ってちょろいのかも……


「……と、とにかく。もう寝よう」

なかなかハードな一日だった。

とにかく明日から冒険者ギルドで講習だ。

ランジュやマテウスさんは元気だろうか。

俺は元気です。

だから明日も朝から稽古をするのだ。

そう、この煩悩を払うためにも!

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