第17話 イケメンリア充どもめ爆裂しろと思ったら、謎の霧に包まれて地震が来て駅の階段からすっころげた俺が異世界トリップしたということ
「今日から本格的に剣の稽古を始める」
「はい! よろしくお願いします!」
今まで地獄のストレッチや運動ばっかりだったもんな。
ちなみに修行初日に「マテウス先生」と呼んだら、マテウスさんと呼びなさいと言われた。
ずっと師匠だの先生だの言われてきたから嫌なんだそうだ。俺のことは呼び捨てで、とお願いしたけどリョータ殿のままだ。
これから俺の剣士修行が本格的に始まる!
やっと俺が予定してた赤いオーラを纏うわけですよね!
「マテウスさん! 気合でこうドババーっと強くなったり、剣の衝撃波が飛んでいって相手を倒すとかそういう技はありませんか!」
マテウスさんのぽかんとした顔。
これは「何故奥義を知っている?!」の顔――
じゃないですよね、はい、わかります。
「そういうのはないですよね! 地道にやるしかないですよね」
さきに自分で言ってみたよ、しくしく。
「うむ。剣は練習と工夫の繰返しだ」
マテウスさんが練習用の剣をくれた。
重っ。
こんなの使いこなせるのかな。
でもマテウスさんが言ってくれた。
この年齢から剣を習うのだから上達は努力が必要だが、俺の骨や筋肉を調べた感じでは、一所懸命やれば大丈夫だという。
すごいなマテウスさん、骨とか筋肉まで観ているんだ。
何よりすごいと思ったのはマテウスさんの剣の技だ。
歳なので少しだけと言って、剣を振るところを見せてくれた。
俺のよりももっと重い鋼の剣を簡単に振る。
緩やかに構え。
体格も筋肉も俺と同じくらいの痩せた体から、一瞬鋭い気合が発せられた。
切り伏せ、薙ぎ払い、繰り出される剣。
素早く、軽やかに、そして強く。
俺にはそれがどれほどの技量なのかわからないが、剣を振る姿は美しかった。
俺は必死にその姿を見ていた。
マテウスさんのようになりたい。そう思った。
たぶん俺なんかが思うには高すぎる目標かもしれないけど。
毎日、勉強と魔法と剣の稽古。
マテウスさんは丁寧に、時に厳しく教えてくれる有り難い先生だ。
ランジュはいつも俺に優しくしてくれる。
俺はこの生活をくれる二人にすごく感謝している。
だから、ちゃんと話しておきたいと思った。
マテウスさんがランジュのことを話してくれた夜に、俺が言おうとしてたこと。
イケメンリア充どもめ爆裂しろと思ったら、謎の霧に包まれて地震が来て駅の階段からすっころげた俺が異世界トリップしたことを。
「マテウスさん。黙っていてすいません。聞いてください。俺は実はこの世界の人間ではないんです」
言っちゃったー。
俺は剣の稽古の後で、マテウスさんに打ち明けた。
そしたら。
「うむ。そんな感じだと思ってたぞ」
とあっさり言われました。
なぜわかったんですかっ?!
エスパーですか、魔法ですかっ!