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第八話 ジェイルブレイク

ここは一泊数十万エルドの高級ホテル、ではなくエルフの村の留置所だ。

壁に備えられた美しいクリスタルのライトには、ぼんやりとした魔法の明かりが灯っている。持って帰りたいくらい高級な魔法灯だ。

壁の一部が金属格子だけど、それ以外は快適だ。快適すぎる。

そういえば俺はドアにプライバシーの無い部屋によく当たるな。

「ふあーあ」

俺は高級ベッドに寝っ転がって伸びをした。

いったいいつまでここに居ればいいのかな。

夕食も美味しかったので、朝食も楽しみだけど。

俺はベッドに横になりながら、この留置所に来てからのことを考えた。

何かが気になっているんだけど、よくわからない。


ふと、何かの気配を感じて目が覚めた。

静かに身を起こし、目を凝らして静かに様子をうかがっていると、通路に人影が現れた。

ローブのフードを目深に被っている。

「平原人よ」

呼びかけて来た声からすると若い女性のようだ。

この人が近づいてくる気配に俺は気が付いたのか。

おお。気配で覚醒するのってかっこいいぜ。俺がしてみたかったことリストからまた一つミッションコンプリートだ!

だが、喜んでいる場合ではない。この人はなぜこんな夜に留置所へ現れたのか。

「あの。なんの御用ですか?」

もももももしや、深夜に連れ出されて、ごごごご拷問で機密を吐けとかそういうのだろうかっ。俺はそんなたいそうなことなんて、うわあ、異世界知識って超危険な秘密じゃないか。

「私はミルザ。今から鍵を開けます。私についてきなさい」

えっ。脱獄を手引きしてくれるの?!

でもついて行っていいのだろうか。今のところ、俺は村に存在しないはずの人物を尋ねて来たというだけで犯罪を犯したわけではない。けれど脱獄してしまえばそれを罪に問われるかもしれない。

「警戒している……ランジュとマテウスのことで話がある」

二人のついての手掛かりが得られるなら迷いはなかった。

俺は立ち上がった。

「よろしく頼みます」

俺に脱獄の手引きをしようという人物は一歩前に進みフードを肩に払った。特徴のある長く涙滴型をした耳と美しく整った顔が現れる。

やはりエルフの女性だ。若く見えるがエルフは長寿なので外見から判断はできない。

「良い決断の速さだ」

薄明りにその顔がほんの僅かに微笑んだように見えた。

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