第12話 お兄ちゃんもらい泣きしちゃうよ
水晶が砕けた時の閃光と大音響でダメージを負ってい目と耳は、しばらくすると回復した。
ランジュは目と耳が回復した後も泣いていたが、魔法の水晶に勝手に触ったことを叱られてさらに泣いた。
「あのぉ、マテウスさん。俺が水晶で調べてくださいって言ったからです。怪我も無かったし、反省しているから、どうか許してあげてくださいまし」
金髪翠眼美少女のごめんなさい連呼泣きは、こっちが悪いような気にさせてしまうくらいに破壊力大だった。
「それは……いえ。孫がすみませんでした。ランジュ。魔道具には勝手に触ってはいけないと言っていたのがなぜか。良くわかったじゃろう。時に危険をともなうからなんじゃ。気をつけるのだよ」
マテウスさんは魔道具の誤動作だと説明した。
誤作動?
そうだったんだろうか。
俺は変だなと思ったが黙っていた。
「はい。おじいちゃんおにいちゃん。ごめんなさい」
「いいってことよ! おにいちゃんは、元気だよ!」
俺はにこやかに応えた。
「うん。急に爆発して怖かっただろう。大丈夫だ。大した怪我がなくてよかった」
そう言って愛おしそうに目を細めて、孫を抱きしめるマテウスさん。
「おじいちゃぁん」
ランジュがまた泣き出した。
お兄ちゃんもらい泣きしちゃうよ。
ああ。家族っていいなあ。
そういえば彼女の親御さんは、マテウスさんのお子さんはどうしたんだろう。
どこか出稼ぎとかかな。
何か事情があるんだろうか。
3人で夕食を食べるころにはランジュはすっかり元気になっていた。
よかったよかった。
この世界の食事は美味い。
洋風な食事で肉や野菜やパンが出る。
朝はベーコンやスクランブルエッグのような料理も出してくれる。
和風の味付けや食材が無いのは残念だが、それでもどの料理もすごく美味しい。日本で売り出したら行列ができるんじゃないかと思うくらい。
でもこれってけっこう普通の美味しさだそうだ。
異世界って侮れないぜ。
そう思う俺であった。