第10話 健康って素晴らしい
「よし。走るか!」
学習の後は運動の時間だ。
さっきまでランジュも一緒に体操をしたり運動をして遊んだ。
普段一人で過ごしているからかランジュは、きゃっきゃわいわいと賑やかで。
もちろんぼっちだった俺も、ひゃっひゃうふふだった。
これぞリア充兄ライフかと俺は感動した。
今ランジュは昼寝中だ。
マテウスさんは家事をしている。
俺もさっき川から水汲みを手伝った。
俺は家からあまり遠くまで行かないようにして走った。
運動など久しくしていなかった俺だけど、体を動かしたかったのだ。
服はマテウスさんが着ているようなシャツにズボンとサンダルを貰って身につけている。
空は日本よりも青色が強くて、輝く太陽がまぶしい。
季節は夏のようだが、湿度は高くない。
雪を戴いた山々と森の緑が綺麗だ。
空気も美味しい。
サンダル越しに伝わってくる大地の感触が心地いい。
マテウスさんはランジュを助けた俺に深く感謝してくれてるけど、それは俺の方だ。
健康をくれたのだから。
マテウスさんに詳しく聞いてみたところ。
高度な治癒魔法薬は重病も怪我も癒してしまう。
俺の怪我は酷かったが傷を塞ぐ治癒膏薬とハイポーションで快癒した。
そして前から悪かった視力や悪性腫瘍まで根治されてしまったんだ。
異世界に突然来て病気が判明した時。
あの時は本当に絶望してたけど、この世界に来なかったら病を治してもらうこともなかった。
異世界トリップで命を救われたことになる。
ああ、このポーションを元の世界へ持って帰りたいな。
そうしたら病気で苦しむ人がいなくなるのに。
ファンタジー世界は文明も低く野蛮な世界だと思っていたけど医療レベルは高い。
治癒魔法とポーションと薬草でたいていの病は治ってしまうのだ。
もちろん死者が蘇ることはないらしいし、酷い怪我は別だ。無くなった手足が簡単に生えてくるわけでもない。
また魔物や魔法植物がもたらす魔力を秘めた病気や呪いのかかった疫病等はポーションがきき難い。それでも病気にあった薬や治癒魔法で治るらしい。
どうやら主に状態の異常を治してくれるのがポーションのようだ。怪我も治るがHPが全開するわけではない。けれどそれでも凄いことだと思う。
難病だって治るんじゃないだろうか。
日常生活は簡単な魔法や、魔法が使える魔道具の普及もあって便利である。
マテウスさんは炊事や洗濯に魔法や魔道具を使っているし、ランジュも魔道具を使って手伝う。
ライターみたいな魔道具とかあるし、お湯も沸かせる。
魔法で空っぽの桶に水が練成された時にはびっくりした。
うん。俺の水汲みは不要だったのね。
川が家のすぐそばだったから、生活用水は運ぶんだろうなと思ってた。
早く言ってくださいよもー。
何か俺がえっちらおっちらバケツで運んでるのを見て、水は自然水に限る派なんだと思ったらしい。
そう言われて飲み比べてみたら、川の水の方が美味かった。
気がする。
この森の奥は聖なる場所で、川の水も澄んでいる。
魔法で生成された水より、やっぱり自然水だよね!
ですが次からは普通のお水で。
はい。魔法で出てきたお水で充分とっても美味しいです。
ちなみにマテウスさんは何でも出来る大賢者かと思ったら、魔法使いとしては中級レベルだそうだ。
てっきり引退した大魔法使いさんだと思ってた。
魔法の発達による高い医療と生活だ。
長い寿命をのんびりと暮らせる世界かというと魔物も出るし盗賊が居たり戦争があったりする。
どこの世界もなかなか厳しいらしい。
俺のことは遠くから来たが、詳しくは記憶が曖昧だということになっている。
本当のことを言うべきかも知れないが、どう説明していいかわからない。
まずはこの世界の地理や風土を勉強しないといけないな。
俺はランニングを終えた。
「ふうぅー。いい汗かいたぜ」
体を動かすのが好きになりそうだ。
川に入ってばしゃばしゃと顔を洗う。
上半身裸になってタオルで拭いてすっきりとした。
なんだがすごくワイルドな生活だが、気持ちよい。
天然水だしな。
運動が心地よいのは嬉しいことだった。
せっかくもらった健康だ。
この世界で一所懸命生きなくちゃな。
そして帰還の方法を探すんだ。
そのためにはまずは体力と知識の向上。
そうだ、剣とかも習ったほうがいいのかな。魔物がいるんだから。
あ。せっかくマテウスさんは魔法使いなんだ、俺にも魔法が使えるか聞いてみよう!
家に戻るとさっそくマテウスさんに聞いてみた。
魔法使いになれますかと?
魔法は誰でも使えるわけではないが、まずは魔力量と適正を水晶で調べなければならないと言われた。
きたよきたきた魔力を測る水晶!
これはもう水晶に手をかざすと、色がたくさん出るとか大発光するとかして、おおーこれはすごい魔力だーと皆さん驚愕大絶賛でしょ。
魔力を測る水晶は村にあるそうで、マテウスさんが村へ行くついでに持ち帰り、計ってもらうことになった。