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転生って?

 もうこうなったら疑似体験をしてもらった方が早いかしいら・・・?

 そう感じたテリファは三人を連れて場所を移動する。とは言え、のんびり歩いて引率するわけではなく、一気にテレポーテーション、瞬間移動である。着いた場所は何もない壁にクッションを配置した安全ルーム少々壁に当たっても怪我の心配がない。

「では始めるわよ。」その声と同時に世界が現れる。と言うか三人にとっては放り込まれたと言った方が早いかもしれない。

 現代人の私たちならVRゴーグルの必要のないVR世界と言えば理解が早いか?

 いづれにしても源三郎ら三人は、突然深い森の中に放り込まれた格好だ。が、今回は違う。腰にはちゃんと大小があり、源三郎に至っては生前?使っていた槍が手に握られている。

「ややッ。これは如何な・・・」と騒ぎ始めるや否や目前の大樹の陰からのっしのっしと人の2倍はあろうかと言う大狼がグルルと声を出しながら姿を現す。

「忠義、文之丞、油断めさるな!」大音声で一喝するように発した源三郎に腰を落として抜刀せんと柄に手をやる二人。じりじりとすり足で狼との間合いを測りながら、互いの間隔もあけていく。

 ちょうど槍を構える源蔵ろうを中心に、左に忠義、右に文之丞と言う陣形だ。ただ源三郎には一抹の不安。

 大人のままであれば自慢の一突きでいなすこともできようが、今の体は童。槍も幾分重く感じ支えているのがやっとの状態。しかも両脇に構える二人に至っては童女。仮にうまく切り込めても、手ごたえには不十分になることが予測される。(なれば・・何か手は?)

 その忠義から、さらに気になる一言が投げかけられる。「オオカミは群れで動く。脇、後方にも注意を払え!」源三郎と文之丞は『うむ』と頷き、周囲にも気を張る。

 そのうちにも狼は距離を詰めて来、「くるぞ!」と忠義。『バッ!』と地面を蹴った大狼は一番の敵を源三郎と見たのか目の前の二人を飛び越しながら、源三郎に襲い掛かる。

「ふん!」源三郎は槍をそのまま何も工夫せず、ただまっすぐに突き出す。

 その角度は図らずも、大狼の胸元に当たった穂先がそのまま押し返され、槍が地面に横たわるところが、きれいに石突が地面を捉えて上手く流れ、槍を倒すことなく大狼の胸に穂先が深く入って行く。

 大狼はその一瞬にグーと唸るが、もう遅い。源三郎は槍から手を放して素早く狼の腹めがけて転がり刀に手をかける。すぐさま鞘から引き抜くと大狼の腹に差し込み際込んだまま後方に走る。

 胸元と腹から血しぶきを上げる大狼。それを機に忠義と文之丞も狼の後ろ脚に追いつき一閃、大狼の足を切り離すことに成功する。「とどめを!」と言われても相手は大きすぎるし急所である心臓やら、目にはさすがに刃を届かせるのは難しい。仕方なく、もう片方に回って再度腹を掻っ捌く。はたまた槍が届いたのか他で効果があったのかは知らぬが当の大狼はすでにゼーゼーと断末に近い様相。

 豪胆な忠義はその大狼に這い上ると、首の辺りに力一杯切り込むザーッ、ザーッと血が定期的に噴き出すのを目にし、動脈に届いたことを確認する。


 やがて大狼は微動だにしなくなった。三人は、刃についた血を振り落とし刀を鞘に戻すした。

「早く抜かんと抜けんようなるぞ。」と忠義が顎で槍の方をしゃくるので、思い出して槍に飛びつく。

「うぬぬ・・抜けん。」力一杯抜こうとするが、血塗られた柄は脂分を含んで意外と滑る。

「手伝ってくれ。」二人に手伝ってもらいようやく抜くことができた。


 すぐに場面が変わる。先ほどまでの激闘が嘘のように次はどうやら城塞都市の入り口のようだ。遠くにその入り口が見えるが少し距離もある。

「どうやらあれに向かえばよいようじゃな?」源三郎は城塞都市の入り口を指さす。

「そのようじゃな。しかし忽然と、大狼の死骸が消えたと思うたらもう跡形なく・・汚れも、血の匂いすらせぬ。」先ほどまでの討伐を振り返りながら忠義が疑問を口にする。

「何とも解せぬことばかりですなぁ。この忙しさ・・これだと目が回りませんか?」

「いかにも。あれほど生臭い大狼の息も感じておったのに・・・」とは源三郎少しの間を開け、続ける。

「しかし、我らもなかなかのものとは思わんか?この童の体であの大狼を屠れるのじゃからな。」

「いかにも。文之丞もなかなかのものではないか?我らに見劣りせん。」忠義が褒める。

「これは意外な評価を痛み入る。某もただ無我夢中で刀を振っただけでござれば・・」

「それこそ謙遜じゃ、闇雲に振っただけではあのように斬れはせん。」

「有りがたきお褒め。されど一番の功名は源三郎殿でしょう。」

「それは間違いない。あの槍働き、・・あれがなければ危なかったかもしれん。」

「まあ、その話はこれまでにして今後のことを話しておかんといかんと思う。」源三郎は話題を変える。当面はあの城壁を越えなっ蹴ればいけないようだが、当然に()の様なものであるだろうから、我らの身元もないも示すものがない。

「・・先ずは、我らの風貌とそれについての話じゃが・・・」源三郎はこれからの話を考えて少々言い淀む。

「我らの風貌・・か?」忠義は顎に手をやりながら考えるようにつぶやく。

「わしを含む皆が童になり、・・言いにくいが・・そちらは女子・・なのでな・・・ほら。」

「ほら?・・と言われても、何がほら なんじゃ。」忠義はとんと理解しいていない様子。

 それに比べると文之丞の方は察しがついたのか、「あ!」と小さく声を漏らす。

 なので源三郎ははっきりと言わねばならんと、

「お主らの仕草、呼び名・・まあほかにもあろうが改めねばならぬことが山積みよ。」

「ちょ・・・ちょっと待たれよ。貴殿は我らに女子の真似をせよと?・・」

「真似も何も・・どう見ても、どこから見ても・・その・・女子ではないか。」源三郎にそう言われて忠義は思わず文之丞を見つめる。文之丞もまたじっと忠義を見つめている。

 それこそお互いの容姿を上から下まで十分に見てまわると、次いで自身に目を向ける。手、足、体つき・・・どれを見ても女子じゃな。

 また二人は昨日?のことも思い出した『あるはずのものがなかった』ことを。

 一通り終えるとガックシと肩を落とし、

「かと申しても・・・な?」忠義は文之丞に話しかける。「これまで身に付いて話し方、所作を急に変えろと言われても・・・。」先ほどまでと打って変わって元気をなくす忠義

「しかし傍から見れば奇妙なことには違いないでしょう?せめて人前でだけでも何とかせねばと思いまする。」文之丞はそのように考えたようだ。

「して、追い打ちをかけるようで申し訳ないが、お主らの呼び方、この際、名を決めようと思う。」

 そう言いきって後、源三郎は文之丞を見て、

「文之丞は、そのまま『おふみ』で如何じゃ?」

「おふみですか・・・?致し方ありませんそうしましょう。」意外とあっさり飲み込む文之丞

「して、忠義殿だが、・・・『おただ』でよろしいな?」

「『お忠』か?何やらこそばゆいが仕方あるまい・・・う~ん?」ガッツリ腕組をして考え込む忠義改めお忠は、今にも泣きだすのではないかと思うほど顔をしかめて、お忠、お忠・・とつぶやき続けている。

「我らはそれでよいとして源三郎殿はいかにします?元服前の童が名を源三郎とはいきますまい?」

 文之丞の言うこともいちいち尤も、ならば幼名に立ち返ればよいかと思い当たり、

「そうじゃな。さすれば我の幼名『徳丸』でどうじゃ?」

「お主だけ徳丸とは・・・ずるくはないか?我らは『お忠』と『お文』じゃぞ?」忠義が恨めしそうに言うが、自分たちが翼に負けて草を食ったからではないかと思わずにいられない源三郎改め『徳丸』である。

「さようじゃな?その上『お忠』と『お文』には正しい所作も覚えてもらわんとおいかんからなぁ」と二人に笑みを返してやっるのだった。


「では、よろしいか?くれぐれも手抜かりのないよう・・・」衛門に続く列に並びながら徳丸はお忠とお文に確認をする。

「「はい。」」二人はそろってできるだけのしおらしさで返事をする。

 悪気はないがその様子と返事を聞いた徳丸は背筋に冷たいものを感じる。

 先ほどの今だからその落差もさることながら、あとで目に物を・・と言われている気もしたからだ。

 しかも付け焼刃ではあるがしっかりと内股でいそいそと歩いている。先ほどまでのドタバタガニ股歩きとは見栄えが全然違う。馬子にも衣裳とはこういううことか?残念ながら衣装についてはぼろのような着物のみではあるが・・・が三人は周りに圧倒されている。なぜなら周りの人たちは背丈が6尺を越えるかと思うほどの偉丈夫だらけで、女性にしてもそこそこの背丈であるのが解る。



「では、次の者!」衛門の警護人から呼びがかかる。見るからの大男でしかもその風貌はやはり ・・・異人か?

「はい。」徳丸が少し大きめの声で答え前に出る。すぐ後ろに並んでお忠とお文。

 前に出た三人を胡乱気に見た警護人はお忠とお文の腰にある刀に目を止める。その視線を追っていた徳丸は自身のうかつさに思わず身をすくめる。

「童女が腰の者にしては少々立派にすぎんか?」二人を交互に見ながら警護人はお忠とお文に直接わけを聞く。

「何故その方らのような童女がそのような立派なものを履いておる?」ん?とでも付け足しそうな勢いで警護人が尋ねる。

「それには・・」徳丸が慌てて間に入ろうとするが、警護人は手で制し「ふん」とだって俺と顎でしゃくる。

「どうしてだ?」何と敷いても二人の口から聞きたいようである。

 お忠とお文は顔を見合わせると、お文が静かに頷き「わたくしが・・」ときりだす。

 相変わらず不遜な態度で顎をしゃくって続きを話せと急かす。

「こちらのことは存じ上げませんが、私どもは幼き頃から剣術を仕込まれます。それには男も女もなく誰もが等しく学ぶのです。」お文はつらつらとそのように述べた。

「それにしてもだ・・・」警護人はお文が腰に佩いた引きずるほどの長さの刀をみて、

「長すぎるだろう?それではいざと言うとき抜けん。」

「まことおっしゃるとおり。ですから普段は一の太刀は脇差で裁きます。」

「ほう?ならばなおさら長いのはいらんなぁ。」にやにやしながらお文の刀をジロジロ見る警護人。

「まさかこちらでは、名乗りも上げず、刀を抜いてもいない者に斬り付ける卑怯者ばかりだと?」少々大げさに驚いたような口調で尋ね返す。

「・・なにを。我らを愚弄すると許さんぞ。」警護人はフンと鼻を鳴らしながら威厳を表に出して威圧する。

「いえいえ、決してそのような・・私どもは長尺を抜く間も与えられないのか?・・とお聞きしただけで。」意味ありげな笑みを浮かべて対応するお文

「ふん。そちらのような童女が長尺を抜いても役に立たんだろうて。」小馬鹿にするような笑みを浮かべ警護人は徳丸に再び目を向け、話を戻す。

「して、その方らは何処に用かな?」

「我らは、旅の途中立ち寄っただけにござれば、二日ほど逗留したく・・」ここまで話してから徳丸は自分たちが路銀の一銭も持ち合わせていないことに思い当たる。

「ふん。まあよいだろう?しかしうぬらのみすぼらしい格好では泊めてくれる宿もあるまい・・ましてや童ばかりの三人だとなぁ。」警護人は天を見上げて、しかしまあ自分には関係がねえやと言葉を続ける。

「では、通行手形を見せてもらおうか?」

「「「通行手形」」」」思わず大声になる。お忠もお文も女子であることを一瞬忘れる。

「はー!お前たちまさか『通行手形』を持ってねえとか・・・言わねぇよな?」訝る警護人が順繰りに三人を見る。

「「「・・・」」」 言葉も出ず固まる3人。

「こいつら・・ぶちこんどけ!」

 と言う訳で、きれいに刀も取り上げられて、衛門の牢に放り込まれた三人である。

「いやはや・・こまったもんだ。」言い訳の一つもする間もなく、童と言えども男女の別に分けられ徳丸は一人、お忠とお文は同牢である。徳丸の牢の隣になっただけども良しとするしかない。

 その徳丸の呟く声を聴きながら、牢の中で胡坐をかくお忠達。

「お前たち。きちんとしておかないとどこから見られてるか分からんだろう。」

「話は解るが、そう易々とはできんぞ。身に沁みついとるからの。」お忠はそういうが、お忠は努力がなさすぎ。しかも言葉使いが壊滅的だ。

「もうどうでもええわい。」お忠はばっと手足を広げ仰向いて大の字に寝転がった。



 


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