表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

50/50

エピローグ 涙のあとに残るもの

 朝が来た。


 灰ではなく、薄い靄〈もや〉のような涙の名残が、悲哀律国エレリアの天を覆っている。

 夜のあいだ降り続けていた王涙の雨は、ようやく止んでいた。


 拍所〈はくしょ〉の塔根。

 昨夜、静哭湖〈ラメント・レイク〉が口を開き、悲哀の王がその身ごと世界の底へ沈んだ場所。


 今、そこにあるのは、ただの濡れた石と、浅い水溜まりだけだった。


 輪郭の曖昧な小さな湖が、王の立っていたあたりにぽつりと残されている。

 水面には、天幕の白と、揺らぐ灯火、それから――ひとりの子どもの影が映っていた。


 ノアが、膝をついてそこを覗き込んでいる。


 金でも銀でもない、淡い琥珀色の瞳が、ひどく赤い。

 泣き腫らした、という言葉ではまだ足りないほど、まぶたには涙の通った跡が刻まれていた。


「……ミラさま」


 呼びかけは、夜の終わりにも一度、落とした名前だ。


 今度もやはり、返事はない。


 けれど、水面は一拍だけふるりと揺れ、映ったノアの顔の隣に――ほんの一瞬、誰かの笑みの輪郭が重なったようにも見えた。


 ノアは息を飲み、目をぎゅっと閉じる。


(……ほんとうは、こんなふうに叶えたくなかった)


 あの夜、自分で言った言葉。

 「ぼくの最初の涙は、セレンのために流したい」。


 それは嬉し涙や、胸が温かくなる涙のつもりだった。

 自分を見つけてくれた人に、ありがとうと伝えながら流す涙。


 なのに現実は、

 喪失人になりゆくセレンを抱きしめながら、喉を裂いて絞り出す泣き声になってしまった。


「ミラさま……セレン、まだ目を覚まさないよ」


 声に出すと、胸の奥の痛みが現実の形を持つ。


「ぼく、ひどいことをした。

 エレボスの声に、器として応えた。

 セレンの名も、ミラさまの悲しみも、喰おうとした」


 小さな拳が、震えながら膝の上で握り締められる。


「でも……それでも、ぼく、泣いてもいいって言ってくれたのは、セレンで。

 悲しんでもいいって教えてくれたのは、ミラさまで。

 だから――もう、何も喰わないでいたかった」


 水面の中の自分は、情けないほど幼く、弱く見えた。


 けれど、その瞳の奥には、昨夜までにはなかった色がひとつ宿っている。


 他人の悲哀を喰う器ではなく、

 自分の悲しみを背負って立つための、ささやかな光。


「……ぼく、決めたよ」


 ノアは水面から目を離し、拍所の奥――寝台の並ぶ方向へ視線を向けた。


「これから泣く時は、セレンのためにも泣く。

 誰かの悲しみを“喰う”んじゃなくて、“一緒に泣く”ほうを選ぶ。

 ……それが、ぼくに残った“器”の使い方だと思うから」


 言葉は小さく、震えていた。

 それでも、その震えは、昨夜のような崩壊ではない。


 立ち上がるための震えだ。


     *


 拍所の一角。


 薄布で仕切られた小部屋で、セレンは静かに横たわっていた。


 瞳は開いていない。

 その奥の“名”は、悲哀に喰われ、音を失っている。


 けれど、完全な喪失人たちとは違って、セレンの顔にはまだ「涙のための形」が残っていた。

 頬にはひと晩前に触れたノアの涙の跡が、かすかに残っている。


 イリスが椅子に腰かけ、その寝顔を見下ろしていた。


 紫銀の瞳は、今は淡蒼を深く含んでいる。

 悲哀の色。しかし、それは世界全体の悲しみではなく、ひとりの少女のための色だった。


「……あの子、強いよね」


 背後から、かすかな声がした。


 振り向かずとも分かる。

 薄布の向こうで、ルーファが柱に背を預けている気配。


「ノアのこと?」


「うん。

 自分のせいで世界が傷ついた、って思い込んでる子が、

 それでもまだ誰かのために泣こうとしてる」


 ルーファは苦笑した。


「風律から見たら、ああいう子は“真ん中”だよ。

 守りたくなるし、同時に、使われてしまう危うさも持ってる」


「使われる……たとえば、エレボスに?」


「それだけじゃない」


 薄布越しに、風がそっとイリスの肩に触れる。


「世界のため、国のため、“正しさ”のため――

 悲しい子ほど、誰かの旗の下に立てられやすい。

 ……イリスも、そうでしょ?」


 イリスは一瞬、返事に迷った。


 人間だった頃の自分。

 感情を封じ、ゼロへと変じる前――世界の、感情の、何を見ていたのか。


 完全には思い出せない。

 けれど、“何かを守るために泣くのをやめた”という感覚だけが、骨の根元に刺さっている。


「……そうかもしれない」


 イリスはセレンの枕元に片手を置いた。


 眠る少女の額には、ミラが与えた名の痕跡――セレン=愛しい涙――がまだ薄く残っている。


「あの子は、悲しみを“記録する側”に立った。

 ノアは、悲しみを“喰われないよう抱える側”に立とうとしている」


 イリスは静かに言う。


「世界は、二人を何度も傷つけるでしょう。

 それでも、あの子たちはきっと――世界を嫌いになりきれない」


「あなたも、ね」


 ルーファの言葉に、イリスは答えなかった。

 答えられないとも言えた。


 世界が自分を何度も悲しませる。

 それでも――完全に見捨てきれない何かがあるから、今もこうして刃を握っている。


 ミラ・アルメリアが最後にくれた言葉が、喉の奥で燻る。


『いつかきっと、あなたが泣いてもいい世界が来るわ』


 それは、まだ遠い未来の話だ。


 イリスは瞳を閉じて、淡蒼と金光の揺らぎを内側へ沈めた。


     *


 数日後。


 エレリアの上層水脈〈すいみゃく〉。

 王城のさらに上、かつてミラが水面を踏んで降りてきた高さ。


 そこに、新たな湖が生まれていた。


 深くはない。

 静哭湖のように世界の底と繋がっているわけでもない。


 ただ、街のあちこちから集められた涙の河が、

 ひととき高さを揃えて滞留するための、浅い水盤。


 涙議会〈レメンティア・コンクラーヴ〉は、そこを「ミラ湖」と呼ぶことに決めた。


 王喉を失った国は、いま、皆で高さを探っている。


 泣き続けていないと不安になる者。

 もう泣きたくないのに、周りの悲しみに引きずられる者。

 喪失人となった家族の前で、どう呼吸をすればいいのか分からないまま立ち尽くす者。


 悲哀律国エレリアは、まだ病んでいる。

 だが、その病を「王一人」に背負わせる構造は――もう、ない。


 涙議会の席のひとつに、空席がある。

 そこには、ミラの名ではなく、「愛しい涙」を意味する古い符が置かれていた。


 セレンの椅子だ。

 筆頭官としての彼女は失われても、

 国は「悲哀を記録する席」を空けたまま残している。


 いつか、誰かがそこに座るために。


     *


 拍所の前庭。


 石段に腰かけて、ノアが空を見上げていた。


 セレンの寝台のそばにいる時間が長すぎて、

 「外の光」が少しだけ眩しい。


 雲越しの淡い日差しが、胸鈴〈むねすず〉の欠け目に反射して微かに光った。


 隣に、風の気配が腰を下ろす。


「……眩しい?」


 ルーファが問いかける。


「うん。でも、きらいじゃない」


 ノアは素直に答えた。


「ミラさまの湖、見た?」


「……ううん。まだ」


「そのうち、一緒に行こう。

 あそこは、“泣いていい水面”だから」


 ルーファは空を見上げたまま続けた。


「エレリアは、これからしばらく“泣き方を学び直す国”になる。

 悲しみを抱えたまま立つ方法を、みんなで探すことになる」


「……怖くない?」


「怖いよ。

 でも、誰かが泣いてくれるから、怖さを分け合える」


 ルーファの声は柔らかい。

 風律の巫女としてではなく、ひとりの女としての声。


「ノア。あんたは“悲しみを喰う子”じゃなくて、“悲しみと一緒にいてくれる子”になっていけばいい。

 それだけで、救われる人がきっといるから」


 ノアは胸鈴に触れ、そっと握りしめた。


「……ぼく、セレンとミラさまのために、泣く。

 それからいつか、誰かのために笑えるようにもなりたい」


「いいね、それ」


 ルーファが笑った。


「それに――セレンを元に戻す手がかり、エレリアの中だけにあるとは限らないしね」


 ノアが、横顔を見る。


「……外にも、あるかな」


「世界は広いよ。

 悲しみの形も、“名を取り戻す方法”も、きっとひとつじゃない。

 イリスと一緒に回れば、何か見つかるかもしれない」


 ノアの喉が、小さく鳴った。


「……ぼくも、行っていいのかな」


「それは、イリスにちゃんと聞きな。

 あの人、危ないところにはちゃんと“注意書き”付けるから」


 風がふわりと吹き、ノアの淡蒼の髪を揺らす。

 拍所の鈴がひとつ鳴り、遠くで水面が小さく跳ねた。


     *


 イリスとアッシュは、塔の陰の細い通路で空を見上げていた。


 イリスの紫銀の瞳には、淡蒼の名残がまだ沈んでいる。

 アッシュの《ノルディア》の面には、レクイエムの無理出力で刻まれた亀裂が薄く残っていた。


「観測:エレリア滞在フェーズ、終了へ移行」


 アッシュが静かに言う。


「うん。エレリアに、私がこれ以上できることは、もう多くない」


 イリスは、指先でノルディアの欠けをなぞった。


「国の悲哀は、国の人たちが持つべきもの。

 世界の均し過ぎは、また別の歪みを呼ぶ」


「観測結果:悲哀律再配置後のエレリア――

 涙の滞留率、八割から五割へ低下。

 代わりに、“悲しみを抱えながらも動こうとする層”が増加」


「……ありがとう、アッシュ」


 イリスは口元だけで笑う。


「あとは彼らの“揺らぎ”の問題。

 私の刃は、そこにはもう届かない」


 アッシュは少しだけ首を傾げた。


「調律者の役割、終了?」


「一時停止。

 次は別の場所で、別の感情の歪みが待っている」


 イリスは空を見た。


「……それに、エレボスも終わってはいない」


 口に出した途端、喉の奥に昨夜の“声”の残響が滲む。


「観測。」アッシュが応じる。

「エレボス系統の揺らぎ――悲哀律域からは後退。

 しかし、ゼロと感情律の境界層に“喉構造”の残滓を検出。

 今後、他律域での再顕現リスク、高」


 イリスは、小さく息を吐いた。


(世界の過剰な感情を均すこと。

 その陰で、“喉”を育てるエレボスを追い続けること。

 これからは、どちらか一方だけを選ぶことはできない)


 世界は、今日もどこかで泣いている。

 どこかで怒り、どこかで怯え、どこかで赦されたいと願っている。


 世界が自分を何度も悲しませるかぎり、自分は世界のために刃を振るう。

 たとえ、そのたびに自分自身の“泣き場所”が削れていくとしても。


「……行こう、アッシュ。

 世界は、待ってくれない」


「了解。

 ゼロの器として、次の歪みへ同行する」


 アッシュの声は変わらない。

 その観測は、どこまでも理に忠実だ。


 だが、その理の奥で――ほんのわずかに、

 “悲哀を抱えたまま立つ人々”への、理解に似た揺らぎが生まれつつあることを、

 イリスはまだ知らない。


 そこへ、小さな足音が近づいてきた。


「……イリス」


 背後から呼ぶ声に、イリスは振り返る。


 ノアが、胸鈴をぎゅっと握りしめたまま立っていた。

 背後には、少し離れた位置でルーファが腕を組んで見守っている。


「ノア?」


「ぼく……お願いがあるの」


 ノアは一度喉を鳴らし、言葉を選ぶように息を吸った。


「ぼくも、一緒に行かせてほしい。

 ミラさまが守った世界を、この目で見たい。

 それから――セレンを元に戻す手がかりを、探したい」


 胸鈴が、かすかに震える。


「ぼくの中には、まだ“悲哀を喰う”力が残ってる。

 それがいつか、誰かをまた傷つけるかもしれない。

 でも、イリスとアッシュと一緒なら……ちゃんと、使い方を間違えないで済むかもしれない」


 イリスはしばらく黙って、ノアを見つめた。


 その瞳には、昨夜までにはなかった芯が通っている。

 悲しんだまま立ち上がることを選んだ子どもの目だ。


「危険な場所へ行くかもしれない」


「うん」


「世界の醜さも、見せることになる」


「……それでも、見たい。

 セレンが守ろうとした世界だから」


 短い沈黙のあと、イリスはルーファへ視線を移した。


 風律の巫女は、肩をすくめて笑う。


「ノアの“後見人”なら、わたしがやるよ。

 危なくなったら風でぶん投げてでも守る。

 それに……外の風も、そろそろこの子に知ってほしいしね」


 イリスは小さく息を吐いた。


「……分かった。

 一緒に来て、ノア」


 ノアの目が、大きく見開かれる。


「その代わり――約束して。

 自分を“道具”だとは思わないこと。

 悲しみを喰う時は、誰かのため“だけ”じゃなく、自分のためにも泣くこと」


「……うん。約束する」


 ノアはそう言って、深く頭を下げた。


     *


  夕刻。

 エレリアの境界線から、ずっと離れた場所。


 砂混じりの風が吹き荒ぶ、赤土の高原。

 空は夕焼けの色を通り越して、ほとんど血のような赤に染まっていた。


 怒律国――怒りの感情を律とする国は、その高原の向こうにある。


 粗く積まれた黒鉄の城壁。

 兵の足音で常に震える地面。

 遠くからでも分かる、熱と殺気の混じった空気。


 その国の、とある見張り台で。


 潮見石を預かる兵――潮見番しおみばんが、両手のひらで血紅〈けっこう〉の結晶を支えていた。

 怒りの国はこれを「戦いの潮見石」と呼ぶ。世界の感情がうねるたび、石は“先に”色を変える。


 今、その石が――

 悲哀の色を帯びていた部分だけ、するりと抜け落ちるように褪せていく。


 潮見番は息を呑んだ。

 褪せたのは、ただの色ではない。――“支え”が一つ減った証だ。


 だが次の瞬間。

 結晶の芯が、別の脈で打ち始めた。


 光でも熱でもない。もっと深いところから返ってくる、封の軋み。

 潮見番の指先が冷える。汗ではない。怒りの国に不似合いな“怖さ”だった。


 見張り台の床石――黒鉄の継ぎ目に刻まれた古い封印紋が、うっすらと赤く滲む。

 誰も触れていないのに、鎖が一本、内側で引き摺られたような音がした。


(……封印が、鳴いた)


 潮見石の表面に、深紅の“影”が一瞬だけ映る。

 人の形ではない。

 ただ、王座に座る輪郭だけが、こちらを“見返した”。


「……見たか?」


 低い声が背後から落ちる。

 振り返れば、肩幅の広い男がひとり。黒鉄の胸甲には怒律国の紋章――裂けた眼と燃え上がる刃――が刻まれている。

 この辺境の見張り台に立つには、重すぎる格の男だ。


 怒律軍のしょう。前線統べる者。


「悲哀律の王が、沈んだな」


 将はそう言って、唇の端をわずかに吊り上げた。


 潮見番は頷く。

 だが、喉が乾く。言葉が出る前に、床の封印紋がもう一度、微かに熱を持った。


「……好機、ということですか?」


「好機以外の何に見える」


 将の瞳に、炎のような光が灯る。


「悲しみは、弱さを生む。

 弱さは、他人の痛みに縋る。

 他人の痛みに縋る国は、怒りひとつで崩れる」


 彼は遠く、エレリアの方角――見えもしない涙の国を睨む。


「今まで、あの国の王喉が邪魔だった。

 悲哀の王ミラ・アルメリア。

 世界の痛みを自分の喉一つで受け持つ、愚かで厄介な女だ」


 声音には、嘲りと、わずかな敬意が混ざっている。


「だが、その柱は折れた。

 残るのは、喪失と、混乱と、泣き場所を失った民の群れ。

 ……怒りを焚きつけるには、これ以上なく都合がいい」


 将が潮見石に指を伸ばした、その瞬間。


 結晶が“息を吸った”。

 深紅が膨らみ、そして――遠い地下から重い鼓動が返ってくる。


 軍の太鼓ではない。

 太鼓のほうが軽い。合わせてしまえる。

 これは、合わせた途端に喉を持っていかれる種類の律動だ。


 将の胸甲の紋章が、わずかに熱を持つ。

 まるで封の内側から触れられたみたいに。


 将は一瞬だけ、笑みを消した。


「……封印監察を呼べ」


 潮見番が目を見開く。

 封印監察――怒律国が“王の封”だけを見張らせている、最奥の係。


 将は続ける。声音が、さっきより低い。


「悲哀が沈んだ“隙”で、王影が動く。

 俺たちは“戦”を欲しているが、王は“戦”で止まらない。

 王が目を開けば――怒りは国を守る剣じゃなく、国を焼く火そのものになる」


 その言葉の最中にも、床の封印紋が淡く灯り続けている。

 消えない。

 ――緩んでいる。


 潮見番は硬い喉で叫んだ。


「封印監察へ! 潮見石、深紅脈! 床紋、持続点灯!」


 伝令が走る。

 見張り台の階段が、鎧の音で揺れる。


 将は潮見石を掲げ、赤い空へかざした。


「まだ進軍命令は出さない。だが――準備は始める」


 将の目が細くなる。


「世界が悲しみに沈んだ直後ほど、焚きつけやすい時期はない。

 『なぜ、自分だけがこんな目に』――その問いは、怒りの火種だ」


 砂を含んだ風が唸り、城壁の向こうで軍の太鼓が低く鳴り始める。

 まだ命令はない。

 だが、兵の足音はすでにひとつのリズムを刻み始めていた。


 世界のどこかで、涙が静まった。

 その静けさのすぐ隣で――新たな怒りの律動が、胎動を始めている。


 ただひとり、ゼロの巫女を除いて。


 拍所から少し離れた回廊で、イリスは足を止め、振り返りもせずに空を見た。

 紫銀の瞳に、わずかに深紅の予感が滲む。


(……世界は、また私を悲しませる)


 喉の奥で、彼女はひとつだけ短く息を吐いた。


(ならば――私は、また世界を均しに行く)


 その時。

 遠い遠い場所で、怒りの国の“封”が、もう一度だけ鳴った。


 ――王はまだ眠っている。

 けれど、王の影は、起き始めている。


 悲哀律国エレリアの物語は、ここでひとまず幕を閉じる。

 次に刃が向かう先には、燃え上がる世界と、封から滲む怒りの王座が待っている。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ