第一幕 我が眠り妨げる者、の事情
一話目投稿。
のんびりよろしくお願い致します。
私の朝は、遅いです。
いえ、違いますよ?ちゃんと学校に行ってますから、サボってませんて。
遅いのは、休日の朝。我が家は母と弟意外、みーんなねぼすけなんです。
あと私だけですけど。
まあ、細かいことは置いておいて。とにかく、私は休日の朝は寝て過ごすと決めているんです。
母も弟も、何もいいません。彼らは理解しているのです。
私の眠りへの執念を。
起こされても寝て、布団剥がされても寝て。水かけられても構わず熟睡。
体が育って力持ちになった弟に、無理矢理食卓に運ばれたことも有りますが。食べながら寝るという器用なことをしてみたら、諦めてくれたようですね。
母としては、父親に似た性質を何とか改善させたかったとか。でも弟同様、ガクリと手を突いて諦めてくれました。
わかればいいんですよ、わかれば。
まあ、休日に予定が入っている時はちゃんと起きるんですよ?前日に言っておいてもらえれば、ちゃんと。
予約制です。
まあ、今日は何の予定も入っていませんし。生意気な弟は彼女とデェトだそうですから、因みに母も職場の方々とちょっくらレジャーだそうです。
アクティブですねー。
そんなこんなで、平日の学校生活でくたびれた体を睡眠で休めています。私は元気ハツラツ永久の体育会系の人々とは違い、のんびり文化系ですから。休日は家でゆっくりしたいんです。
インドアです。
ピロピロピロピロ~♪
「んん?」
ピロピロピロピロ~♪
何か鳴ってますねー、でも寝ます。嫌な予感がするので、意地でも寝てやります。
ピロピロピロピロ~♪
「うー・・・」
ピッ
携帯の着信音でしたね、やっぱり。しかもこれだけ飽きずに鳴らすのは、正直思いつく人が二人しか居ません。片方は出ないとまずい人で、もう片方は気の長いお方です。
「・・・んー、あいもしもし」
「出掛けるぞ」
出ないとまずい方でした・・・。
「予約はいってなかったよー、から寝る」
「予約が居るって、有名店気取りか。三十分以内に行くから」
「小林様ー、だから疲れてるんだってば」
午後からでもいいではないですか、と主張しますが。しかし相手は小林様、ぶっちゃけ勝てた試しがありませんです。
というわけで今回も。
「じゃあ三十分後に」
と言って切られてしまいました。
いやはや、最後のお声は何ともドスの聞いたデンジャーなものでした。流石です小林様、私が認める危険人物のダントツトップは伊達じゃありませんね!
「うがー・・・」
切れた携帯電話を恨めしく見つめていても意味はないので、私は大人しく起きることにしました。
うふふ、こうやって起こされるのは何度目でしょうか。三度なんてとっくに超えてますね。
でも残念、私はクリスチャンなんです。だから、七十七回まで我慢しますよ。
小林様、ネズミだって猫を噛むんですからね?
「おはようごぜーます」
「きっかり三十分、偉い偉い」
小林様からの|ラブコール(脅迫電話)の後、顔を洗って服を着て、菓子パンをお口に放り込んで自宅はマンションの一室を出た私。
マンションの前の道路には、国産車が一台。結構お高いやつですね、羨ましいですコンチクショウ。
そしてお車の前まで行くと、助手席のロックが開く音がしたのでそのまま乗り込みました。
運転席にはもちろん件の小林様。あと4回同じことをしたら、私に愛想をつかされる横暴人間です。
意外と後がありませんねー。
私もびっくりしました。十年日記にメモをしておいて良かったです。
「今日は何をするの」
「機嫌悪いな・・・」
ええ悪いですよ。眠いですから。
わかってんならアポくらい取ってくださいね。
ついでに朝からお綺麗な顔で無駄に爽やかでいないでくださいよ、心底殴りたいです。
「伊藤が入院したからその見舞い、あと食事と買物」
「伊藤さん、今度はどんなポカしたのさ」
「さあ?遠藤が自業自得だって言ってたか」
伊藤さんとは、私の友人である遠藤さんの部下の方です。いやはや暑苦し――いえ、体格のよろしい方で、中々にお茶目な面もございます。
どうやら今回もその延長のようですね。
まあ、伊藤さんは怪我がしょっちゅうなので驚くことでもありません。遠藤さんも意外と面倒見が良いものです。
「食事、はいいけど買い物は嫌だなぁ」
「何で?」
何故と言いますか。ではお答えしましょう。
「遠藤さんと、小林様のタッグが恐ろしいから」
・・・ええ、彼らのタッグは非常に恐ろしいです。買い物に連れていかれ、連れ回され、着せ替え人形ばりにひどい目にあいます確実です。そして大量の荷物が家に届く!
確実です!
こいつらは金有り余ってるせいで金銭感覚おかしいんですよ。対して私は小市民、小鳥のようなハートでは開き直ることすらできません。
故に
アンタらの買い物なんて誰が付き合うかーーー!!
ってなわけですよ。
いや、自分の買い物しとけって話で。
そんな気分の私に対する、親友こと小林様のお答え。
「諦めたら?」
・・・わあー、素晴らしいお言葉ですね。私、感服して握りしめた拳から血が滴りそうです。
「本人が言わないで欲しいなー」
青筋ビキビキってやつですね。
あ、表現古かったですか?すいません。
そしてニヤリと笑う小林様。無駄に麗しいので雰囲気ありますね。
ああ・・・、どうせろくな事言いませんよこいつ。
「じゃあ俺はやめる。遠藤を止めてみな」
「無理でっす!」
瞬時に判断出来る私、すっばらしい!
無理だろっ、あの人異常に意志が強いし!嫌だと言ったら「じゃあ後日二倍返しで」とか言っちゃう人ですよ!?
そして実行しちゃう人ですよ?
ってか二倍返しって何だよ!
「諦めな」
「・・・適当なところで救出よろしく」
「わかってる」
わかってますよ、遠藤さんより常識を持っている?らしい小林様が、いつも適当なところで止めてくれているのは。
でもですよ?
そもそも買い物なんてしなければ、と思う私って間違ってるんでしょうかね?
間違ってるんですか?
因みに、友人のキャラは実在です。少しオーバーにしていますが、まあこんな感じだと思うものを書いています。
誤字脱字訂正、苦言甘言ご感想。随時受付中ですので、どうぞ宜しくお願い致します。