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思想も強けりゃ邪教に至る  作者: 北村 陽
異質の章 第二幕――初夏、己が心に邪を宿す
23/23

幕間――救済は誰が為に

 在実の取材を終え、気付けば週明けの月曜日。

 俺はとある目的のため、普段よりも早く学校についていた。

 まだ誰も靴を置いていない昇降口の景色に、違和感と特別感を覚える。

 活気ある声が響く放課後とは違い、静けさ満ちた校舎内では廊下に反響する足音が普段より大きく聞こえる気がした。

 職員室から部室の鍵を取ろうとしたが、すでに誰かが持ち去ったのかなくなっていた。きっと、部室で俺のことを待っているのだろう。

 階段を上がり、もうずいぶんと見慣れた扉の前で一度呼吸を整え、手をかける。

 すると、


「おや、ふふっ。おはようございます、朝夜くん」


「おはよう、浪川」


 部室の扉を開けると、先に到着していた浪川から挨拶される。

 相変わらず、部室内の照明はつけられていないため薄暗い。そして浪川の顔には(よこしま)が乱れなくきれいに張り付けられ、邪教の教祖にふさわしい様相をしていた。


「わざわざ朝早くに来てくれてありがとな」


「いえ。ふふっ、きっと朝夜くんは私に聞きたいことがたくさんあると思いましたので」


 俺は席に着き、浪川をここに呼びだした目的を果たす。


「それじゃあ早速、今回の取材から気になったことを話すとするか。――浪川」


「はい」


「そうだな。まずはお前に、感謝を言いたい。――ありがとな、俺と在実の仲を元通りにしようとしてくれてサ」


「……ふふっ、どういたしまして」


 意外だと言わんばかりに、浪川は一瞬だけ口を開いて微笑んだ。


「まさか、お礼を言うだけで恥ずかしがってしまう朝夜くんから、このような言葉が聞けるとは思ってもいませんでした」


「うるせぇ。俺だって、感謝の気持ちを伝えなきゃいけないときくらいわかってるサ」


「ふふっ、そうですか。私はきっかけを作っただけですが、そう言ってくれてよかったです」


「まぁ、そのきっかけがなけりゃ、今頃俺はここにいないからな」


 もし、浪川に声をかけられなかったら。想像したくもないことだ。今頃俺は一年前と何も変わらず虚無に苛まれていただろう。


「なるほど、感謝の気持ちは十分受け取りました。――では前置きはここまでにして、本題の方に移りましょうか」


「あぁ」


 自身に対して不利なことを聞かれる可能性があるにも関わらず、浪川は自ら本題へと話の流れを移した。

 俺は一度姿勢を正し、浪川の目を真っ直ぐ見た。


「在実を取材して、わかったことがあった。――浪川、お前は在実に思想を植え付けてたんだな」


「……はい」


 少しの沈黙の後、浪川は静かに首を縦に振った。その様子から動揺といったものは一切見られず、むしろ気が昂っているようにも見えた。


「どうしてそのことを俺に隠していたんだ?」


「それにつきましては、私は教典に従ったまで、としか答えることができません」


「はぁ、そっか。どうせそうだろうと思った」


 まさか、教典がここまで厄介な存在だとは思いもしなかった。浪川の行動は全て『教典の内容に従ったまで』という言葉で片付けられてしまうのだから。

教典が存在するせいで、浪川だけでなく、俺の行動までノイズが走って仕方がない。俺も浪川も、教典から吊るされた見えざる糸で操り人形のように動かされている気分だ。


「それじゃあ質問を変えるしかないな。そうだ、お願いがあるんだが、この質問にだけはちゃんと答えてくれ。いいか?」


「えぇ、わかりました」


 これは俺が浪川に最も聞きたかったこと。浪川の目的を知るために必要な、重要な手がかりを聞き出すための質問だった。


「――どうして浪川は、お前自身だけで在実を救済しようとしなかったんだ?どうして在実の救済に、俺を巻き込む必要があったんだ?」


 浪川は在実に思想を植え付けるだけ植え付けて、そのままにしていた。だが、浪川であれば在実から俺に関する悩みを取り除けたはずだ。それなのに、浪川は俺に在実の思想を見つけてこいと指示を出した。言うなれば、まいた種を芽吹かせてこいと言っているのと同義だ。


「ふむ。救済、ですか。……ふふっ、ふふふっ」


 すると浪川は口元を手で覆いながら、震えるように笑った。


「……その、そんなに面白いのか?」


「あぁ、すみません。朝夜くんを嘲笑っていた訳ではないのです。ただ、さすが朝夜くんだなと。救済……、えぇ。非常に私好みの表現です」


「……はあ」


 浪川はいつになくご満悦といった様子だった。しかし、暗所にいる浪川はどこか気味が悪い。普段よりも増して底知れなさを感じる。


「確かに、私一人でもこの部に所属する全員の救済は可能です」


「それじゃあ、どうして浪川は……」


「私が救済したところで、私自身は救われません。救済を必要としているのは、何も彼らだけではないのです。私も一緒です」


「……え?」


 理解ができなかった。

 教祖である浪川が、救済を必要としている。

 ――一体誰が、浪川を救済するというのか?


「朝夜くんに、お願いがあります」


「……なんだ?」


「――どうか私を、救済してくれませんか?」


「……」


「その大きな手で、私を導いてくれますか?」


 その声は切実さが滲み、俺の心を酷く揺さぶった。

 ――俺が、浪川を、救済する?でも、どうして俺が?

 無理解が重なり、俺の思考は一時的に停止を余儀なくされた。

 浪川が救済を必要とする理由がわからない。

 浪川が俺に救済して欲しい理由がわからない。

 浪川をどのように救済すればいいかわからない。

 積み重なった理解不能に、俺は浪川の言葉を待つことしかできなかった。


「これは、朝夜くんにしかできないことなんです」


「俺にしかできないって……。でもそれ以前に、浪川は本当に救われたいと思っているのか?救われたいと思うほどのことが、浪川にあるとでも言うのか?」


 俺には皆目見当がつかないことだった。学年一位の学力があって、クリエイターとしての実力がある浪川に必要な救済が存在するのか。もし存在したとして、俺でなきゃいけない理由は一体何なのか。


「そうですね……。朝夜くんは、億万長者の生活がどのようなものかわかりますか?ドブネズミが日々をどう生き延びているか、わかりますか?」


「えっ、何の話だ?」


「ただの例え話です。きっと、想像することはできないと思います。誰しも、その身で経験したことがなければ、他人の見ている景色や感じたことはわからないので。だからこそ、私を救済できるのは朝夜くんしかいないんです」


 浪川は俺に何かを理解させるために、この例え話をしていることはわかった。だが、理解させる何かが未だ掴めない。


「その、まだ浪川が何を言いたいのかがわからないんだが……」


「前に言いましたよね?私は、変わることのなかった朝夜くんであると」


「あ――」


 丁寧な誘導を経て、ようやく俺は浪川が言いたいことを理解した。

 程度は違えど、俺と浪川は同じ経験をしている。そして俺は、一度見事に堕落した。空虚などん底を一年間這いずり回った。だがそれでも今、こうして俺は少しずつ復活を遂げている。

 ――思想という救済を手に入れて。


「私にとっての救済は……。いえ、やめておきましょう。これ以上は朝夜くんにとって過剰なプレッシャーになりかねませんからね」


「もうすでにかなりのプレッシャーを感じているんだが……」


 誰だって、天才美少女を救えるのは自分だけだと言われたら同じことを言うはずだ。自分だけという特別感を通り越して、重圧となった責任感が心にずしっときてしまう。


「ふふっ、でも安心してください。私は朝夜くんがどのような選択をしようが、失望したり幻滅することは決してありません。ひとまず、皆の取材を続けてください。それが私を救済する唯一の方法ですから」


「そうなのか?いや、そうでないと困るっていうか……」


 あまり難しいことを要求されると、さすがの俺でも無理だと言ってしまいそうだ。そのことを案じたのか、浪川は俺にこれ以上の要求をしてこなかった。


「では、邪教が定める崇拝対象として、勝手に崇め奉られているとでも思ってください」


「はは、それはそれで困るんだが……。はは」


 浪川なりの冗談だとわかるものの、言葉の意味がそのままを示しているようで素直に笑えなかった。

 俺は未だに邪教が何を指しているのかわからない。少しずつ外堀を埋めているつもりであるが、今の時点では確信に手が届くイメージが浮かばない。


「さて、この話はここまでにしましょう。先日の繰り返しになりますが、在実さんの取材、ご苦労様でした」


「あぁ、どうも」


 突然浪川から労いの言葉をかけられた。きっと、話題を逸らしたかったのだろう。


「邪教の教祖として、朝夜くんは十分なはたらきをしたと言えるでしょう」


 そう言われ、ふと、この数日間のことを思い返す。

 新たな環境に身を置き、与えられた指示に頭を悩ませ、時には腹痛が起きるほどの状況に陥って。たった一週間の間だったが、一冊の小説が書けるほど濃密な時間を過ごした。


「つってもサ、在実の取材が終わった時点じゃ、まだ浪川の言う邪教が何なのかがわからなかったけどな」


「そうですね。それは全員の取材を終える頃にようやくわかってくるはずです」


「はぁ。ずいぶんと先の話のような気がするなぁ。でもまぁ、地道に探るしかないか」


 これから翠黛祭の準備に向けて、忙しくなることが予想される。大変な思いをすることになるが、することがなくて暇を持て余すより何倍も精神衛生的にいい気がした。


「ふふっ。在実さんの取材を経てから、朝夜くんは以前よりも精神的にたくましくなったような気がします。もしくは吹っ切れたと言うべきでしょうか」


「はは、最近はハラハラドキドキしっぱなしだったし、訳のわからないことばっかりだからサ。何かご褒美でも欲しいくらいだ」


「ご褒美、ですか……。ふむ、なるほど」


 すると浪川は考え込むような仕草をとると、何かよからぬことを思いついたのか、口角と目じりを歪めた。


「……な、なんだよ?急に気味悪く笑ってサ……」


「確かにそうでした。朝夜くんの言う通り、頑張った人にはご褒美が必要ですよね。では、目を閉じてください。――これからご褒美をしてあげますので」


「………………――えっ?」


 甘美で妖艶な声が、俺の脳をかつてないほど激しく揺さぶる。

 ――えっ、待って。一体何が始まるって言うんですか、浪川さん!?

 その目つきは、完全に獲物を見る捕食者のものだった。そしてまとう雰囲気が怪しさから妖しさへと変化していた。

 立ち上がった浪川は、俺との距離をじりじりと詰めてくる。机の上を指先ですーっとなぞりながら。その様子を見た瞬間、全身に鳥肌が立った。


「ほーら、早く目を閉じてください」


「えっ、あぁっ、はいっ」


 言われた通り、目を閉じる。

 一歩、また一歩と。浪川の気配が確実に近づいてくる。

 そのたびに鼓動は加速する。

 浪川のいい香りが脳を刺激する。

 ――あぁっ、助けて助けて、在実、眩昼、秀樹!このままだと俺、爆発しちゃう。部室丸ごと吹き飛ばしちゃうって!

 鼻血が出ていないのが不思議なくらいだった。

 今更どう取り繕っても仕方がないくらい、俺は震えていた。

 やがて足音は止み、そして浪川は俺の背後で止まった。


「それでは、ささやかながらご褒美を。よく頑張りました」


「――っ!」


 耳元で囁かれた言葉が頭蓋の中で反響したが最後。――浪川の小さな手によって、俺は頭をわしゃわしゃと撫でられていた。


「……あの、これは一体……」


「どうですか、気持ちいいですか?」


 ほどよく立てられた爪が頭皮をなぞると、今度は指圧によって頭の至る所が刺激される。まさに健全なご褒美にふさわしい、最高のマッサージだった。


「あぁ、すげー気持ちいい」


 つい先ほどまであった緊張は嘘のように消え、代わりに極楽が俺を包んでいた。そのせいか、からかわれていたという事実はどうでもよくなり、心地よさに全神経を集中させていた。


「ふふっ。小さい頃、よく姉にしてもらってたんです」


「そっか。そういや俺もよく、眩昼にマッサージしてたなぁ」


 夜中、成長痛で泣きわめいていた眩昼を何度もさすって寝かしつけていたっけ。今はその必要もないくらい立派に成長したものだから、感慨深い。


「以前より、朝夜くんの頭はマッサージのしがいがあるなと思っていました」


「はぁ。それってつまり、俺の頭が犬みたいにモサモサだって言いたいのか?」


「朝夜くんは背が高いので、やっと手が届きました」


「おい、無視するな」


 うまいこと俺の言葉を回避しながら、浪川はマッサージをしていった。

 数十秒後。ある程度マッサージをしたところで、浪川は手を止めた。


「……はぁ、すっきりした。ありがとな」


 想定していたご褒美とは少し違ったが、美少女にマッサージをしてもらえるという最上級の経験を得ることができた。

 やはり俺は群馬で一番運のいい男だ。在実との関係を元通りにできただけでなく、こうして浪川から誰もがうらやむようなご褒美をしてもらえて。


「どういたしまして。満足してくれたようでよかったです。ですが、朝夜くんはもっと別のご褒美を期待してたような気がしましたが……」


「えっ、いや、別に……って、また俺のことをからかおうとしてるだろ。どうするんだ?俺がいきなりとんでもない欲望を露わにしたらサ」


「それは困りますね。ですが、その欲望とは一体どのようなものなのですか?気になるので、是非とも教えてください。――私は朝夜くんのことを物語の題材として、とても気に入っていますので」


「く……、このっ。ここぞとばかりに思想をちらつかせやがって……」


 駄目だ、浪川に勝てるビジョンが見えない。さすがは邪教の教祖、思想の使い方は手慣れたものだった。


「その、いつか痛い目に遭うからな」


「その言葉、よーく覚えておきますね。ふふっ」


「はぁ……」


 いたずら気のある顔が、俺の心を射止めて離さない。

 今更のことだが、俺の心はすっかり浪川に奪われていた。そのせいで、今日の授業の内容はまるで頭に入ってこなかったのだから相当だ。

 あの手の感触や、花のような優しい香りが脳に焼き付いて離れない。これも教典に従っての行動なのだろうか?

 ――まぁ、そんなことどうでもいっか。俺は得してるんだし。

 知れば知るほど、浪川という人間から謎が生まれる。きっと、浪川という存在自体が謎によって構成されているんだろう。

 謎を知ったところで、謎が増えるだけ。だがそのおかげで前よりもずっと、学校生活が面白いものだと思えるようになっていた。学校に行けば、あいつらがいるって。

 邪教や思想、救済や取材といった普通の青春とはかけ離れた要素だらけだが、これはこれで俺らしい青春だと言い切れる。


「……」


 いや、本当に言い切れるか?邪教の教祖として、美少女を救済しなくちゃいけない俺は真っ当な青春を過ごせていると言えるのか?

 ――まぁ、なんだっていいか。所詮、この世界は俺の物語の題材にすぎないのだからサ。

 この素晴らしき思想を手に入れて以来、考えすぎてしまう俺の悪い癖が改善されたように思えた。

 きっと、今の俺を主人公とした小説は、堅苦しさが少しずつ消えていっているだろう。


「ねぇお兄ちゃん。原稿のペン入れって進んでる?」


「え、いやぁ。最近別のことが忙しくって……。あ、そうだ。この前あそこのコンビニで新しいスイーツが……」


「誤魔化さないで、早く進めて。私と進捗が揃ってないよ」


「はい」


「返事だけじゃなくて、今すぐ行動して。お兄ちゃんはのろまなんだから」


「……はい」


 放課後の部室。作業をサボっていた秀樹は在実に詰められていた。在実は秀樹に対する当たりが強いため、たじろぐ秀樹の姿が見れて気分がいい。

 この部活の序列を考えると、男子組は最底辺と考えていいだろう。言うまでもなく、俺は最下位だ。そしてこの部活は、日によって可愛がられる人間が入れ替わる。主に俺が可愛がられるのだが、今日は珍しく秀樹の日だった。

 俺の取材が在実の創作意欲を刺激したのか、在実はいつにも増して秀樹に漫画作りを進めろと催促していた。当然、在実本人は凄まじい集中力で背景を描き込んでいた。


「くそっ、どうして眩昼と朝夜は何もしてないのに俺だけ……」


「え?あたしポスターの下塗りまで終わったよ。ほら」


「……えっ、マジで言ってる?早くね?」


 すると眩昼は手にしていたスマホの画面を秀樹に見せた。そこには線画の描き込みと、ベースとなる色が全体に塗られた制作途中のイラストが表示されていた。


「ほんとだ……。えっ、何でそんなに早いんだ?」


「あたし、天才ですからっ」


「意味わからねぇ……」


 その言葉で納得できないのは、秀樹だけでなく俺も同じだった。今まで何度同じ言葉を聞かされ、何度才能の差を見せつけられてきたことか。底知れなさで言えば、眩昼は浪川に迫るものがあるだろう。


「そうだ、朝夜。お前はなにボーっとしてるんだ」


 俺が頬杖をつきながら思案タイムに耽っていたところ、突然秀樹から横槍を入れられる。しかし俺にはボーっとしていい正当な理由があるため、恐れる必要はまったくなかった。


「俺はちゃんと取材してきたぞ。な?在実」


「うん。怠惰なお兄ちゃんと違って、漫研のために頑張ってくれてたよ」


「なん、だと……」


 俺に飛び火させようとするも、かえって自分がやけどする羽目になった秀樹に、ささやかな冷笑を送った。

 こんなにも形勢不利に陥る秀樹はかなり珍しい。きっと俺が、在実を味方につけることができたからだろう。可愛がりの方向はいつだって、在実が主導権を握っているのだから。

 くだらない会話を繰り返す俺たちを、浪川は微笑ましそうに見ていた。

 その最中、ふと浪川と目が合った。


「……ふふっ」


「っ……」


 ほんの一瞬。邪悪さを帯びた視線が、薄気味悪い笑みと共にさりげなく送られてきた。その視線の意図はわからない。ただ、どこか満足げな様子だった。

 皆の前にいるときの浪川は至って普通だ。だからこそ気味が悪い。本当は自称『邪教の教祖』の底知れない謎人間であるのに、この漫研の部長として違和感なく振舞っている。


「なぁ、秀樹」


「ん、どうした?」


「最近他のことで忙しいって言ってたけど、何をしてるんだ?」


 浪川から放たれる薄気味悪さを回避しようと、俺は秀樹に声をかけた。すると秀樹は待ってましたと言わんばかりに前のめりになり、


「おぉ、よくぞ聞いてくれた!それについてなんだが、実はとある計画を立てていてな……」


「お兄ちゃん、手が止まってる」


「はい」


 とある計画とは一体どのようなものなのか。気になるところで会話が途切れてしまったが、在実がいる今は作業に集中させよう。

 次の取材(救済)対象、――古谷秀樹は、膨大なネームを前にして「終わらねぇ終わらねぇ」と嘆きながら必死に手を動かしていた。

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