表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/11

Ⅲ.「厄災の魔王」は旅に出る

前回のあらすじぃ!(キング)として勇者一行に宣戦布告した時針!その意図やいかに!?そして、彼に仕える僧正(ビショップ)歩兵(ポーン)とは誰なのか!?第3話、スタート!

「ハァァァァァ…」

【厄災の魔王】・(キング)こと俺、時針零司は特大の溜息を吐いていた。

{「貴方を絶対に殺す!!」だと。残念だったな、優しくしてもらっていただろうに。}

「マジで黙れお前…」

と、禁忌(エクスマキナ)は明らかにふざけた口調で語りかけてきた。

「はぁ、厨二病すぎたか…お疲れ、僧正(ビショップ)歩兵(ポーン)…いや、『()』。」

影から、白いローブと、黒のボロ布が音もなく出現する。

「あぁ、構わないさ、『俺』。俺たちはあくまでも「過去」なんだから。」

ローブのフードから、自分と全く同じ顔が現れる。この『俺達』について、説明しておこう。

こいつらは、《狂刻時塔(レンツベクトル)》の能力の産物だ。


狂刻時塔(レンツベクトル)》第五の剣・《(ペンタ)》。大剣(グレートソード)の見た目をしていて、能力は「過去の自身を不完全に召喚する」。特定の時間から、その時点の姿で《狂刻時塔(レンツベクトル)》が使えない俺の複製(コピー)を召喚する。僧正(ビショップ)は、召喚した《俺》に、事前に用意した白ローブを着せた。しかし、歩兵(ポーン)全員分の装備は少々金がかさむ。ということで…

{しかし、「歩兵(ポーン)」作り出すためにあの格好で魔獣を狩り始めるとは。たまげたな。}

「笑うなオメェ!仕方ないだろうが!」

そう、歩兵(ポーン)の格好を一定時間していれば、その格好の『俺』を召喚できるのだ。しかし、人に見られてる中であの格好をするのは、なかなかに精神が削られた。

「はぁ…『俺達』、もう消えていいぞ。お疲れ様。あ、僧正(ビショップ)はローブ返せ。」

「全く、『俺』使いが荒いな。」

そうして、僧正(おれ)はローブを投げ渡し、溶けるように消え去った。

{それにしても、貴様があそこまで堂々と宣戦布告するとはな。あの娘、理璃だったか。気に入っているのだろう?}

「そうだな。そもそも、今回勇者達までわざわざ出向いたのは、宣戦布告以外にもう1つの目的がある。ま、俺の我儘みたいなものだが。」

そう、今回の登場には宣戦布告以外に意味がある。

1つ目。俺の美学に合わせて復讐するため。何もしていない状態のクラスメイト(あいつら)には何もしない。今回で、理璃さんの殺人未遂を貼り付けられた。

2つ目。『俺達』の自由度の確認。それぞれ自我は存在するが、自分が複製(コピー)であると理解しているため、どんな指示でも基本聞いてくれる。自身で思考し判断することができるため、非常に優秀。しかし、かなりの量の魔力を食う。

「…以上が、今回俺がやりたかったことだ。」

{ふむ、なるほどな。それならば収穫も合ったと言えるだろう…ただ。」

と、禁忌(エクスマキナ)は溜めて、

{出来る限り、魔力は使うなといっただろう???何故そんな馬鹿みたいに使いまくるのだ??}

{いやっでも!人型牛(ミノタウロス)とか吸収しまくって魔力回復したから!少し!!」

{あと何人分空いてる?}

「…サンビャクニン…」

{馬鹿者が!!}

と、散々叱られるが、今回の収穫はそれ以上に大きかった。

「とはいえ、そろそろ人手がほしいな…」

{奴隷はどうだ?現在も続いている様子だったぞ。}

それはそうなのだが、問題がある。神聖シュバルツ王国(このバカ国)は、奴隷制度を禁止しているのだ。そんな偽善に何故付き合わねばならんのか。

「…何しろ、この国でできることは今は無い。とにかく他の国へ行くぞ。」

{そうだな。しかしどの国に行くのだ?我には分からんぞ?」

「近場で奴隷OKな国か。なら…」


「よし、見えてきたぞ。」

遠方に、城が見えてくる。

{ふむ、あそこが。}

冒険者の国、デンタリア帝国。神聖シュバルツ王国に並ぶ国力を持つ、冒険者の中心地。各職業(ジョブ)毎にクランがあり、入会出来ると依頼(クエスト)の報酬が弾んだりする。

「…さぁ、早く行こうか。」

と、俺は国境門に向かって歩き出した。さぁ新たな世界に踏み出そう!と思っていた矢先…

「…オイオイオイオイ、マジかよ。」

{これは…参ったな…}

見てみると、国境門に向かって訪問者の列がズラーっとできてしまっている。どうやら現在、先頭の人物が門番と揉めているらしいのだ。

「面倒くせぇな…ちゃちゃっとまとめてくるか。」

そして俺は、国境門に向かって走り始めた。


「だ・か・ら!なんで入っちゃだめなのよ!許可証もあるでしょ!?」

私、アル・ラサルハグはデンタリア帝国に入れずにいた。

「貴様のような真っ赤な()()()を高貴な帝国に入れるわけにはいかんのだぁ!」

「…ちょっと。私の髪、馬鹿にしないで!」

そう言って、私は腰の剣の柄を握る。

「お?剣を抜くのかぁ?帝国憲法に違反するぞぉ?」

「…クッ!」

そして、私はその男を睨み付ける。そいつの首に剣を叩きつける…!

「確かに、ここで剣を抜くのは、帝国憲法第21条第1項、『正当な理由の無い国内での抜剣の禁止』に該当する。手を離せ。」

ぞわり、と、背中に悪寒が走った。全く気配を感じなかった。この距離まで近づいているのに。

「しかし、門番。貴様も帝国憲法第13条『不当な理由による権利の侵害』に抵触しているのではないか?」

「あぁ?何だてめぇ?」

苛立ちながら門番が聞く。

「エンプティ。シュバルツの方から来た、冒険者だ。」

「え、エンプティ!?エンプティって、あの!?」

「あぁ?どのエンプティだ?」

そう聞かれると、彼は少し躊躇ってから、

「…一応巷の方じゃ、《白黒の悪魔(グレイスケル)》って呼ばれてるみたいだな…」

「グ、グ、グ、《白黒の悪魔(グレイスケル)》〜!?」

お手本のような驚き方をして、門番は尻餅をつく。

「ここでこれ以上問題を起こすようなら、貴様の職が危うくなるが?どうする?」

「…ッチ…通れ。」

「あぁ、それで良い。行くぞ。」

「へぁっ!?」

彼はそう言うと、私の手を引き、街の中に連れて行った。


{随分と格好をつけるのだな。}

「うっせ、男子はみんなこうなるんだよ。」

そう返答しながら、俺は真っ赤なポニーテールの彼女にあえてフランクに語りかけた。

「…お前、名前は何て言うんだ?」

「私はアル。アル・ラサルハグ。その…ありがとう、助けてくれて。お礼になにかさせて!」

すると、アルと名乗った少女は急にそんなことを言ってきた。

「…別にいいんだが…そうだな、デンタリア帝国は久しぶりだから、道を殆ど覚えてないんだ。もし良かったら、案内してくれるか?」

「わかった!まっかせて!」

そう言って、アルは走り出した。

{やれやれ、随分若い娘だな。}

「全く、本当に。」

「エンプティって剣士だよね!クランは入ってるの?」

「いや、まだ入れていない。」

「そっか!エンプティならすぐ入れるよ!いこいこ!」

そう言いながら、アルは走っていく。

「あの…禁忌(エクスマキナ)さん…」

{…まぁ、いいだろう。目立つが、今後必要な権利がついてくる。}

「ありがとうございます…」

そう言い、俺はアルヘついて行った。


「あ!ここの料理すっごい美味しいんだよ!食べていこ!」

「あ、あぁ…」

私は、クランに案内すると言う名目で、街のあちこちを歩き回っていた。だって、仕方がないのだ。自分に何の憐れみも蔑みも無く接してくれる人は、彼が初めてだったのだ。バレない範囲で遊ぼ…

「…なぁ、本当に剣士クランに向かってるのか、これ?」

「ギクッ」

バレてた。全然バレてた。迷惑だっただろうか?彼にはあまり嫌われたくない…

「…まぁ良いが、俺はずっと暇な訳ではないんだ。程々にしろよ?」

「はーい…あ、あれあれ、あれが剣士クランだよ!」


{ふむ、なかなかに立派だな。}

目の前にそびえ立つのは、ギルドと似た作りの建物。しかし、ギルドと異なり剣を取り入れたロゴがでかでかとつけられている。

「流石は冒険者の国。規模が違うな。」

「でしょでしょ!さ、試験は一瞬で終わるから!行こう!」

アルがそう言ってドアを開ける。

「何だとゴルァ!!もういっぺん言ってみろ!!」

「何回だって言ってやんよ!オメェみてぇな雑魚じゃ、組合決戦(クラントーナメント)で勝ち上がれるわけねぇからリタイアしろっつってんだ!!」

「「あぁん!?やんのか!?」」

と、二人が剣を抜く。

…ホント、マンガの主人公くらい巻き込まれ体質だな…

「あわわわわ…!かなりまずいよ…!エンプティ、なんとかして!」

「え?俺?まぁわかったけど…」

そう言いつつ、俺は両手剣(ロングソード)を抜く。

「あれ?なんか『正当な理由の無いなんたら…』で剣を抜いちゃダメじゃないの?」

「『冒険者同士の揉め事の解決』とでも言っときゃ許されるだろ。多分。」

「多分!?」

そう言うアルを尻目に、俺は揉めている二人の間に入り、剣を弾き飛ばす。

「なんだてm」セリフを言い終わるより前にカカト落としで一人を倒す。

「さて、続けるか?」

もう一人の首筋に剣をあてがう。周りから、「おぉー」と歓声が上がる。

{おい。}

「ウッ」

無言の圧が俺を襲う。

「…あ、そういえば。さっきこいつが言ってた…組合決戦(クラントーナメント)?って何だ?」

そうアルに尋ねる。

「各クランで行われるトーナメント式の大会。優勝者は王城に招かれるらしいよ〜。まぁ、私達には遠い世界だけど。」

「へぇ…王城に…」

{招かれる、な…}

「エンプティ、今まで見たことない邪悪な顔してるよ…」

「…早く登録したい。どうすれば良い?」

「ん?急に乗り気になったね。…まさか。」

「あぁ、組合決戦(クラントーナメント)に出る。」

{…そして、}

「この国に…」



厄災(破滅)を与えてやる。



どうもどうも!杉野凪でございます。読んでいただきありがとうございます。今まで大きな行動を起こしていなかった(キング)達に不穏な動きが見え始めました。明るめの雰囲気だった時針と禁忌(エクスマキナ)が、これから変化していきます。お楽しみに!次回は戦闘シーンモリモリでございます。少々時間がかかりますので、暫くお待ちください。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ