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維新の剣  作者: 才谷草太
旅立ち
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出会い

 その日の天気予報は晴れだった。降水確率は0%。

 そんなごく普通の日に、僕は死ぬことになるのだ。いや、死んでいるのかも分からない。あの朝の事を思い出してみよう。

 3月のとある朝8時少し前。いつものようにテレビが天気を伝え、占いが流れている。血液型占いなんて信じない僕は、O型の占いを鼻で笑いつつも、玄関を出た。今となってはその占いの内容を覚えていない事に、若干の後悔を覚える。

 大学までの道を、電車代節約の為に自転車で向かう。たった3駅。普通に走れば三十分とかからない。いつもの見慣れた風景が後ろへと流れて行く中で、突然目の前に大空が開けた。いや、空と道路の位置が逆転している。

 「降水確率は0%だったけど、空から道が降ってきたのか…」

 もちろんそんな事はありえない。

 僕は何故か冷静だった。

 次の瞬間、空に舞い上がった道が、僕の頭上に降って来た。

 「今日のO型は、こんな運勢なのか」

 占いをまともに見ていない事を少しばかり後悔しながら、目で見える全ての風景を必死で焼き付ける。その風景に色は無く、無声映画のように、静かに色を失い、全ての動きが遅く見えている。

 「あぁ…僕は死ぬのか…。大学の単位、落としちゃったな…。下着、もうちょっと地味な物にしとけば良かった…」

 死ぬ間際にしては、呑気だったと思う。いや、本当に死んでいたならこんな感想は残せないだろう。

 そう、僕は死んではいない。薄暗い部屋で手当を受け、目覚めている。

 「どこだ…ここは?」

 体を起こそうとして、鈍い痛みが走る。

 「うわぁ…痛ぇ!」

 アスファルトに叩き付けられたと思われる体が、小さな悲鳴を上げる。正確には、僕自身の悲鳴ではあるのだが…。

 すると、すっと一本の光が壁を裂き、大柄の男が出て来た。

 「おぉ、気付いたがか。おまん大丈夫か…」

 大柄の男は、随分と訛っている。

 「佐那さん、気付いたがよ」

 大柄の男は、ひょいひょいと身軽に廊下に出て行きながら「佐那」という、恐らく女性であろうと思われる人物を呼びに行った。どうやら僕は、今の人に助けられたようだ。

 「病院じゃないのか?」

 僕は大きく頭の中を掻きまわし、状況の整理をしようとしている。何よりも不可解なのは、大柄な男の服装だった。

 枕元には僕のリュックがある。

「そうだ、携帯で友達に迎えに来て貰おう…」

 そう思い付き、リュックを漁って携帯を取り出した。

「圏外…か」

 溜息を吐きながら、携帯を握ったまま、天井を見つめた。

 暫くして、先ほどの大柄な男と小柄な女性、そしてもう一人男性がドカドカと部屋に入って来た。

 「やあ、気が付いたね。あんな奇妙な服装で倒れてるなんて、君は異人さんかい?」

 こちらの男性に訛りは無い。しかし、そんな事よりも「奇妙な格好」をしているのは、そこに居る三人だった。少なくとも僕の中では。

 「言葉…分かりますか?」

 顔立ちが良く、育ちの良さを伺う事ができる女性が僕に問いかける。

 「はい…日本人ですから…」

 「あんな格好で日本人ち言うても、誰も信じんぜよ」

 大男は大声で笑い出した。

 「へ…変な格好は貴方達でしょ。そんな江戸時代みたいな格好して…」

 そう言いながら、僕は握っていた携帯を開いて、日付を確認した。

 「何だ、何をする気だ!」

 一人の男が後退りする。携帯に怯えたようだ。女性は不思議そうに大男の背後から眺めている。

 「江戸時代?」

 大男は少し携帯に興味を持ちながらも、僕に問いかける。

 「なぁおまん、今何年か知っちゅうがか」

 大男は小声で僕に問いかけて来た。

 「西暦ですか?和暦ですか?」

 携帯を見ながらしたその問い返しに、大男は目を輝かせた。

 「この時勢に西暦を知っちゅうがか!」

 「龍さん、『せいれき』って何だ?」

 「重太郎さん、知らんがか?亜米利加で使う暦の事ぜよ」

 「何でこいつがそんな暦を知ってるんだ…開国論者じゃあるまいな!」

 「重太郎さん、西暦を知っちゅうがはワシもぜよ。知っちゅうだけで開国論者ちゅうがは乱暴な発想ぜよ」

 「しかし、あの妙な服に手に持つ妙なカラクリ、全てこの江戸には無い物だよ!」

 「兄様、落ち着いて下さい。この人、何か言いたそうよ?」

 僕の顔色を察してくれた「佐那」という女性は、

 「貴方、お名前は?」

 「木下…健一です」

 「剣一かや、強そうな名前ぜよ!」

 恐らくこの人は、字を間違って聞いたのだろうと、即座に分かったが、今この時、僕の身に起こっている事態の解明が急務だった。

 どうも映画とは無関係。なら、僕は時間を超えた事になる。三流大学ではあるが、歴史は多少分かる。

 開国論者という言葉、そして大柄な男の風貌からしてこの三人は、僕らの時代で幕末と呼ばれる頃に存在した筈の人物、坂本龍馬、千葉重太郎、千葉佐那の三人。

 「貴方…土佐の坂本龍馬さんですね」

 「おまん、ワシの事知っちゅうがか?」

 「そして、千葉重太郎さん」

 「私の事まで…貴様何者だ!」

 重太郎は自らの右横に置いた刀に手をかけた。

 「重太郎さん、ちぃと待ってくれんかの」

 龍馬は重太郎の右腕を畳に押さえつけ、僕に話し出す。

 「おまんに三つだけ聞く。正直に答えないかんぜよ」

 言葉は静かに、眼光は鋭く、僕を包むように威嚇をしていた。

 「おまんは、わし等の敵か?」

 「いえ…違います」

 「ほいじゃ、どこから、何の為に来たがか?」

 「今、僕が説明しても、貴方達に理解して貰えないと思います。僕自身、信じられない事なので…」

 「そうか…ほいたら最後の質問じゃ。おまんは、名前の通り強いんか?」

 「居合を少し習っていましたが…」

 「十分じゃ。重太郎さん」

 龍馬は重太郎に目を移し、

 「道場を借りるぜよ」

 そう言って、その場を立った。

 「待って下さい。僕、背中が痛くて…」

 事故の後。生きて、時代が飛んだにしても僕は怪我人だ。

 「分かっちゅう。手加減はするがよ。立てん怪我でもないがやろ?」

 勿論、手当をしてくれたこの人達の言う通り、怪我自体はたいしたことは無い。が、坂本龍馬と言えば、生涯剣で人を斬ったという記録さえ無いが、免許皆伝とも言われる実力者。本物であれば、とても敵うはずが無い。

 「龍さん、斬るなら私が…」

 「違うがや。身なりからして、この国の服とは違う人間が、どんな剣を使うか見てみたいがぜよ」

 僕は、また死ぬのか…いや、ここで死ねば元の時代に戻れるんじゃ無いか…そんな事を考えながら、気が付くとその場を立ち上がっていた。

 「時間は5時位かな…」

 道場には夕日が差し込んでいる。

 「僕は居合術です。竹刀では戦えません」

 「刀も持たずに倒れちょったおまんが、居合っちゅうのも納得できんが…ほいたら、そこの木刀を使えばエエちゃ」

 龍馬は壁に掛けてある、鞘付きの木刀を指さした。

 「おまんに有利になるがよ」

 ニヤッと笑い、竹刀を手にとって構える。

 「…本当に…?」

 「竹刀じゃ死んじゃしまわん」

 その言葉で我に返った。竹刀では死なない。元の時代に戻れない…。それよりも、斬られたり叩かれたりしたら、痛いんじゃないか。平成の時代に生まれ、育った僕に、斬激なんて経験は無く、竹刀の衝撃も防具が防いでくれていた。しかし、今目の前に居る相手は歴

史上の人物であり、剣の達人と言われる人。

 『何を考えていたんだ、僕は』

 そう思いながら木刀を手に取り、龍馬と向き合う。

 「それが構えかや?」

 「あ…」

 棒立ちだった僕は、慌てて腰を少し落とし、足を少し開く。いわゆる居合腰という構えだ。

 「ほぅ…格好だけは様になちゅうが…」

 龍馬は静かに竹刀の剣先を僕に向ける。

 「その気構えで、ワシを斬る言うがか」

 その言葉と同時に、龍馬の剣先がピクピクと細かく震えだした。

 …緊張?いや…違う…剣筋が読めない…

 龍馬の威圧感に圧され、相手の動きに呑まれている。そんな僕の頭の中に、勝手な言葉が流れ込む。

 『どうせこの時代の人間じゃ無い。一度死んだ体だし、何かのショックで元の時代に戻れる可能性が無い訳でも無い』

 僕は、体の力が抜けた。諦め・開き直り、その瞬間、龍馬の目の色が変わった。

 「おまん…」

 その一言を発し、暫く僕達は対峙した。道場の隅で見学をしていた重太郎と佐那も、二人の空気の間に入って来られない様子で、見つめている。

 『何だろう…周りの風景が見える…一度死んだからなのか?』

 そんな奇妙な感覚を背中に背負いながら、左手を鯉口に、右手を柄に掛けた。

 「正体からの抜き打ちか…」

 重太郎は小声で呟いたが、僕にははっきりと聞こえた。そして、その言葉を合図にしたかの様に、龍馬の右足が微かに前に向かって動き、剣は上段に向かって振りかぶる。

 『来る…』

 その瞬間、抜刀せずに腰から鞘ごと引き抜き、柄頭を龍馬の水月に当てに行く。

 身長180センチ程の大柄な体は、ひょいと後ろに下がり、柄頭を躱して小手を打ちに来る。僕は木刀を一気に引き戻し、半身になりつつ攻撃を躱し、龍馬の竹刀が空を斬った事を確認した直後に、再び正体に戻し対峙。

 「演舞のようだ」

 重太郎が呟き、佐那が頷く。背後でこのような風景が広がっている事も、手に取るように分かる。

 「死んだ者の特殊能力か…」

 不思議と落ち着きが出ている。

 「後の先を取りに来るがか…これじゃ動けんぜよ」

 そう言いながらも龍馬の口元には笑みが見える。

 「おまん、笑っちゅうがぜよ」

 「貴方こそ…」

 「龍さんでエエがよ。仲間は皆、そう呼んでくれちゅう」

 「じゃあ龍さん、まだやるの?」

 僕も不思議と笑っていたようだ。

 「龍さん、もう良いだろ?」

 重太郎が止めに入る。

 「ああ…十分ぜよ。剣一に殺意は無い事は分かったちゃ」

 目が覚め、浮遊感にも似た感覚で居たが、何故かこの時代に『飛んで来た』事を納得できて来た。

 剣を交えてお互いを知る。そんな言葉がかつてあった事は知っているが、龍馬との出会いが必然のように、僕は思えて来た。

 あんな動きをしていながら、背中の痛みは取れていない。いや、あんな動きをしたからだろう。僕は歩くのがやっとという状態に陥ってしまった。

 自分が時代を超えた事、そして、あの坂本龍馬と渡り合えた事、何もかもが不思議な体験ではあるが、今は素直に受け止めるしかない事を、不思議と理解できていた。


 「剣一殿、夕飯を置いておきます」

 ここ、恐らく江戸にある千葉道場の娘、佐那が膳を持ってきてくれた。

 「か…かたじけない」

 知っている限りの時代劇の言葉を使ってみたが、後ろから来た龍馬が笑いながら

 「何ぜよ、柄にも無い言葉使っちゅうがや。おまんの故郷じゃ使わん言葉じゃろ」

 「龍さん…」

 「ワシもここで食うぜよ」

 ニヤッと笑いながら、膳を布団の横に置き、酒を注ぎだした。

 「龍さん!剣一殿は怪我人ですよ!龍さんのせいで、怪我が酷くなったんですからね!」

 佐那は強い口調で言い放った。

 「佐那さんは怖いのぉ、剣一」

 「もぅ!お膳はご自分でお下げ下さいよ!」

 そう言うと、佐那は部屋を後にした。

 「腕も立つし器量もエエ、でも、性格がきついオナゴじゃ」

 「龍さん、僕に聞きたい事があるんじゃないですか?」

 「おぉ、そうじゃった。二つ目の質問。おんし、どっから来たがか?」

 いきなり核心を突く質問だ。どうやらこの男には、前置きという会話は無いようだ。

 「僕は…この時代から150年程後の世界から来ました」

 信じられないもの承知で、こう答えた。僕自身、受け入れたとは言え、俄には信じられない事実(恐らく)だからだ。しかし龍馬はすんなり答えた。

 「その世界じゃ、この国はどうなっちゅうがか?」

 この男…信じたのか?という疑問も大きく残るが、話を進める事にした。

 「日本は…侍が居なくなりました」

 「何じゃと? 幕府はどうなったがぜよ!」

 「幕府は…」

 そう言った瞬間、僕はある事に気が付いた。

『ここで歴史を話せば、何らかの影響が出てしまうんじゃないか…。仮に、知っている歴史(幕末なんて興味が無かったから、そんなに詳しくないが)を話し、果たしてこの人がその通りに動くのか。いや、恐らく動かないだろう。決まった事を素直にする人じゃ無いし、例えその行動の方が後々良い方向だったとしても、それは僕が居た時代の歴史から変化してしまう』

 「何じゃ、幕府はどうなったがか!」

 「何でそんな事を聞くんです?」

 「時を超えて来た割に、物を知らんがや…浦賀沖に黒船が来ちゅう事を知っちゅうがか?」

 「あぁ、確か土佐でも浦戸湾の守備が…」

 「何じゃ、土佐の事には詳しいがか」

 「あ、いや…」

 言い過ぎた言葉を止め、俯く僕に

 「まぁエエ。たった4隻の黒船で、各藩が大慌てになっちゅうがよ。こんな幕府の力が試されるっちゅう時に、京では佐幕・倒幕言うて、暴れる連中も出てきちゅう。幕府は、この後百年後、どうなっちゅうか知りたいがぜよ」

 「龍さん」

 龍馬の言葉を堰き止めるように言葉を発する。

 「僕は歴史を知っています。でも、それをこの時代の人に話す訳にはいかないんです」

 「ワシが知っても、歴史は変わらんじゃろ」

 …当然と言えば当然だ。当の本人はこの時点で日本史上最大の英雄なんて言われる事になるとは、想像すらしていない、ただの田舎剣士の武者修行者でしか無いのだから。

 「それでも、言えません」

 「佐久間先生でも知らん事を、おんしから聞ける好機じゃ思うたのに…つまらんのぉ」

 お猪口の酒をくいっと飲み干し、

 「ワシは土佐に帰る」

 「…そうですか…」

 「一月あれば、おんしの傷も回復するじゃろう。どうじゃ、土佐にワシと」

 冗談じゃ無い。新幹線はおろか、車すら無い時代に東京から高知までなんて嫌だ!

 「僕は…まだ江戸でやる事が残ってます」

 自分の正体が不明なのを良い事に、格好良く断ってみせた。

 「まぁエエ…それより…」

 そう言うと、隅にあったリュックにザザっと摺り寄って、

 「こん中にゃ、未来の道具が入っちゅうがやろ?」

 そう言いながらリュックを漁った。

 「あ、ダメですよ!」

 未来の道具なんかを使われたら、歴史が変わるのは決定的じゃないか!

 「さっきのはコレじゃの…」

 そう言って龍馬は携帯電話を手に取った。

 「不思議な素材じゃの…木でも鉄でも…」

 その瞬間、携帯が開いた。

 「うわ!何ぜよ、噛み付くがか!」

 携帯を放り投げた龍馬は、座ったまま跳び上がった。あまりの大袈裟な驚きっぷりに、僕は思わず大笑いをしてしまった。

 「な…何が可笑しいがか」

 被害が無いと分かると、龍馬は恐る恐る携帯を手に取る。

 「絵が動いちょる…何じゃこりゃ」

 待ち受けにしている時計の事だろう。僕はちょっと悪戯をしてみたくなった。

 「龍さん、ちょっと貸して」

 そう言って携帯を取り上げ、カメラを向けて撮影をした。…フラッシュがオート設定になっていて、光った…

 「うわ、何ぜよ! それは武器かいな!」

 また大袈裟に驚く龍馬に、僕は画像を見せた。

 「ほら、これ見て下さい」

 「何じゃ…こりゃワシかや…」

 携帯を覗き込む龍馬、顔は何故か半笑いだ。

 「まっこと驚いたぜよ…。ワシがこん中に入っちゅう…」

 しかし、これ以上文明に触れさせる訳にはいかない。ここらで悪戯もやめておかなければ…。そう思った矢先、次々にリュックから荷物を引っ張り出す。シャープペンにボールペン、あらゆる物が引っ張り出されるが、どうも龍馬のお気に入りは携帯のようだった。

 暫く彼は僕の手元を見つめ、ふと視線を部屋の奥へ移す。僕もそちらを見ると、龍馬は素早く手に持つ携帯を奪った。

 「ちょっと借りるき!」

 そう言うと、さっさと部屋を出て行った。

 暫くして、佐那さんと重太郎さんの悲鳴が聞こえた。

 龍馬はそれから、様々な物を撮影するが、バッテリーが持つ訳も無く、その当日に使い物にならなくなった。撮影した物を後から見せるつもりにしていた龍馬は、誰にも自慢できずに文明の欠片を手放す事になった。


 翌日から、龍馬と僕は未来に戻る方法を考えた。事故のせいでこの時代に来た事を龍馬に説明すると、同じ衝撃を喰らえば元に戻れる、という結論に達したが、そもそも自分から事故に突っ込むなんて考えた事も無い。

 試行錯誤している中では、千葉道場の屋根から落とされたり、隙を突かれて背後から蹴飛ばされたりと、散々な毎日が続いた。

 そのお陰か…龍馬の殺気を感じられる程の成果は出た。が、その他は日に日に怪我が増えるだけだった。

 「やっぱり死ぬ程の力を込めないかんがかの」

 空恐ろしい事を言い出した。

 「死ねば戻れるかも知れませんけど、死んで終わったら…」

 「そらいかん。ワシは人を殺すのは嫌いじゃき」

 あそこまで無茶をやらせておいて、良く言う…そう感じながらも、諦めつつ日々龍馬に怯えて暮らしていた。

 そんな日々を過ごし、龍馬は土佐へと帰って行き、僕はこの千葉道場の剣客として住み込む事となった。そう、これから時代は幕末の動乱期へと突入し、不安定で危険な国へと変貌していく。僕は、そんな時代の中に取り残され、唯一歴史を知りながらその歴史を体感

するという存在になるのだ。

 もし、生きて元の時代に戻る事ができたなら、高校時代にさも見て来たように歴史を語った歴史の先生に、一泡吹かせてやろう。

 そんな事を考えていた僕の横で、一つ、歴史が変わってしまった事に気付かなかった。

 そう、あの朝に平成の僕は死に、江戸の…安政の僕として生まれ変わったんだ。

 いつか戻れる時が来るまで、何とか生き残ろう。

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