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いじめから助けてあげた僕を、なぜ君は愛してくれなかったんだ(小説版)  作者: フーラー
第1章 大学生になった日南田と、フリーターの陽花里

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1-1 お兄ちゃんのために、陽花里は暖かいコーヒーを淹れてくれる

「ただいま」


男子大学生の日南田は、ワンルームのマンションのドアを開けて帰宅を伝えると、一人のかわいらしい少女がニコニコと笑って答える。



「おかえり、お兄ちゃん」


彼女は日南田にとって何より大切な家族であり、その屈託なく笑う顔を見るのが日南田にとっては、毎日の生活の中での何よりの楽しみでもある。

日南田は、笑顔で迎えてくれた陽花里に思わず笑顔を返す。


「あれ、コーヒー淹れてくれたの?」

「うん! ……あ、ちょっと待ってね?」



そういうと陽花里は、何かを『ポチャン』とコーヒーに入れた。

だが日南田はそれを見ても『砂糖か何かを入れたのだろう』と気に留めなかった。

そして陽花里は少し暗い笑顔を見せて尋ねる。



「はい、お兄ちゃん! 『絶対に』残さないでね?」

「え? あ、うん」


そして日南田は陽花里の淹れてくれたコーヒーをのどに流し込む。

寒さで冷えていた体に、コーヒーが染みわたる。


「ふう……身体が温まるな……ありがとう、陽花里」

「ふふ、喜んでくれて嬉しいよ、お兄ちゃん?」



陽花里は現在フリーターで、近所のカフェで働いている。

そのため、コーヒーはそこらの店員よりもよほど上手に淹れることが出来る。


(本当に……。陽花里が立ち直ってくれて良かった……)


その姿を見て、思わず日南田はそう思った。



……陽花里は、数年前にいじめに遭い、引きこもっていた時期があったからだ。

そんな陽花里が、今こうやって自分と『普通に』接してくれることがたまらなく日南田にとっては嬉しかった。



「あ、そうだ、見てよお兄ちゃん!」



そう日南田が思っていると、陽花里は日南田の隣に座ってきた。

……なぜか、右足を自分の左足に擦りつけるようにしてくるのが少し気になったが、日南田は『自意識過剰だな』と思い、彼女のスマホを覗き込んだ。



「じゃーん!」



そういって陽花里が見せた画面には『影李』という名前の歌い手が映っていた。

再生数は20万前後と、かなりのスコアを叩きだしている。


レビューを見ても、一部には『嘘くさい』『自己愛しか感じない』というレビューはあるものの『彼女の優しさを感じる』など、肯定的なものが中心だ。



(……僕が昔受けた評価とは、正反対だな……)



日南田は昔、自分が誹謗中傷を受けた時のことを思い出した。

……因みに日南田は、その時の誹謗中傷が原因で漫画を描くのを辞めてしまっている。


だがこれは、やむを得ないことだろう。

誹謗中傷は『する側』の気軽さに対して、『される側』に与えるダメージはまるで比べ物にならない。……クリエイターは、読み手の100倍以上自分の作品に関心を持っているのだから。


だが、そのことは口にせずに日南田はその画面を見ながら陽花里に尋ねる。


「これは、影李の新しいアルバムだよね?」

「そう! やっとお給料入ったから買ったんだ! 後で一緒に見よう、ね?」


そう、陽花里は待ち遠しそうに言いながらスマホを置き、日南田の肩にもたれかかりながら幸せそうな表情でつぶやく。



「きっとさ……。凄い良い曲だから気持ちよく『眠れる』からね?」

「あはは、最近寝不足だったからありがたいな」

「でしょ? ……お兄ちゃん、家事も頑張ってくれてるし、大変でしょ? だからさ。疲れてるんじゃないかと思っていたから」


そう陽花里は言いながら、日南田の右手にぎゅっとしがみつく。



(そういえば……もう、この部屋を借りて2年か……)


その姿を見ながら、日南田は染み一つない天井を見ながら思った。


元々日南田は、高校を卒業したら一人暮らしをするつもりだった。

だが、陽花里が『もう、自分の部屋に引きこもりたくないから、日南田とどうせ……同居したい!』と叫んだため、一緒に住むことになったのである。


二人で住むには少々手狭なワンルームにしたのも『そうすれば、引きこもらないで済むから』という理由だ。

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