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いじめから助けてあげた僕を、なぜ君は愛してくれなかったんだ(小説版)  作者: フーラー
第5章 日南田、おめでとう

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5-1 君はただ、夢を見ていただけだったんだよ

「あれ、ここは……」

「なんだ、起きちゃったか」



眼を覚ますと、そこには陽花里が少し残念そうな表情でこちらを覗き込んでいた。

……それは、自分が陽花里に勧められたコーヒーを飲む前に見た、その時と変わらない姿だった。


一つ違いがあるとしたら、彼女が上着を脱いで、Yシャツ姿になっていることくらいか。



(そうか、そういえば僕はさっきコーヒーを飲んで……急に睡魔に襲われていたのか……)


まだ眠気で意識が朦朧とする中、日南田は尋ねる。


「ところでさっき、『なんだ、起きちゃったか』って言わなかった?」

「え? ……いやだな、気のせいだよ。ところで、どんな夢見てたの?」


陽花里はそういいながら顔と話題をそらす。

それに対して日南田は、頭を抑えながら答える。




「ああ……。『昔のこと』を思い出したんだよ」

「昔のこと?」

「ああ。……陽花里がまだひきこもっていた頃のことだよ」

「あはは、あの時は迷惑かけたよね、日南田には……。そうだ、折角だし影李の新曲、聞かない?」


そういうと、陽花里は日南田の隣に座り、スマホを見せた。



「何の曲?」

「うん。『君を守るよ』って曲だよ!」

「へえ……『前』にはなかった曲だな……」

「前?」

「あ、ううん、なんでもない!」


そういいながら、彼女の歌っている曲を聴きながら日南田はうっとりとした表情でつぶやく。



「きっとさ、彼女は自分の友達のことを歌ったんだよね」

「あ、う、うん。そうだね……」



確かに歌詞は慈愛と思いやりに溢れており、聴いたものを愛に包むような音色が響いてくる。

だが、日南田はこの曲を聴きながら思った。



(この曲……本当に『友達』のことを歌ったのかな……『前の世界線』にはなかった曲だから、ひょっとして……いや、これ以上考えるのはよそう)



因みに影李が中絶した過去を知っているのは、関係者を除けば日南田ととっくんだけだ。

日南田は彼女の曲に関するレビュー欄を見た。



「彼女の優しさが伝わってくる」

「マジ最高」

「彼女との同じクラスだった奴、羨ましすぎ」


といった高評価のほかにも、


「嘘くさい」

「自己愛しか感じない」


という低評価も含まれていた。

どうやら、日南田と同じ感想を視聴者も持っていたようである。




……そう、本編冒頭から現在にかけて日南田は『タイムリープをして歴史を改変していた』のではない。


実際には、


『数年前、タイムリープしたときに行った歴史改変を夢の中で追体験していただけ』


である。


……即ち『今、日南田が陽花里と二人暮らしをしているこの世界』のほうが、『タイムリープして、歴史を改変した後の世界』ということになる。

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