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黒のピグメント
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ああ、確かにこの時までは海野とは親友だった。
若い頃の思い出を糧にキャンバスに色を塗っていく
師匠が死んだというのに、海野との思い出ばかり出てくる。
それほどまでに自分と海野は深く繋がっていたのだなと思った。
だがもうあの頃の関係には戻れないだろう。
あの日のことはまだ許せない。それほどまでに衝撃的なことだった。
プルルルとスマホがもう一度震える。
そこに書かれていたのはやはり『海野 健司』の文字。あいつもしつこい男だ。
私はスマホの電源を切って、再びキャンバスの前に座る。
そして、筆先に黒の絵の具を浸けたのだった。
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