ミルクティー、ソー・スイート
「…あ、ごめん…」
嘘でした
あの頃の僕はただただ怖くて仕方なかったのです
君に嫌われるのが怖くてそうするしかできなかったのです
「うん…わかった」
君はそう言って、笑ってお辞儀して、僕の前から去って行きました
少しして、この会社からも居なくなってしまって、僕は毎晩泣いていました
顔をぐしゃぐしゃにして、鼻水垂らして、ただ悲しくて、ひたすら毎晩
あのゆっくり話す優しい声とか、朗らかな笑顔とか、一緒に笑いたくなるような大笑いとか、ゆるやかなパーマのかかった長い髪とか、綺麗な形の目とか、それを縁取る長い睫毛とか、ふわふわのマシュマロのような腕、色々思い出して、胸が捻り潰されそうに苦しくて
君が住んでいたという駅に行ってみたり、改札を出たり出なかったり
君は、今どこにいますか?
何をしてますか?
新しく好きな人はできましたか?
僕のことまだ好きですか?
僕がもし君を見つけて声をかけたらなんて言いますか?
ホームタウンの小さな駅なのに、それでも君を見つけることができません
もうこの街からもいなくなってしまったのでしょうか?
君を、君を、君を忘れることができません
初めて出会った日を忘れることができません
君にまた会いたくて、触れたことなんかないのに触れたくて、たまりません、たまらないのです
捻れて張り裂けた胸に優しく触れて欲しい
ミルクティーのようなまろやかな君に
コンビニで手に入るミルクティーではなく、君に
そう、君に
「お次の方どうぞー……あれ?」
「…………………あっ………けけけけ結婚してください!」
「……は…?」
「………………カミキッタンデスネー……」