風の街シルフ......に行く前に
「なんだ、お前知らなかったのか?」
「う、うん」
僕がそう答えるとカローラさんはあきれたというような顔をする。
う、まあ仕方ないだろう。行き先も知らないで飛び乗る馬鹿がどこに......まあ、僕は置いておいて。古今東西いないだろう。
やっぱいるかもしれない。
「ははは。ブランちゃん面白い―」
そう言って腹を抱えて笑うフローラさん。
いや、まあ笑われても仕方ないとは思うけども。
「ま、そのままシルフに直で行くわけじゃない。確か何個か村を経由して......だったよな?」
そう言ってカローラさんは御者さんに声をかける。
「そうですね、二つほど村を経由して......山を越えることになりますね」
「なるほど。ありがとう......ってことだ」
なるほど、直で行くわけじゃないんだ。
ま、村行ったことないし。ちょうどいいか。
うん、運がよかったな~。
僕はうんうんと二度頷いた後、フローラさんに声をかけた。
「ところでフローラさん.......フローラさんって好きな人っているの?」
僕はそうやってニヤリと口角を釣り上げる。
「にゃにゃにゃ、なによー急に」
「僕は好きな人言ったからねー。ねーねーおしえてよー」
僕がそう言うとカローラさんも乗ってくる
「そうだな、私にも教えてほしいな」
「ちょっとブランちゃん!お姉ちゃんも!」
そう言って赤くなるフローラさん。
勿論この後、みっちり聞きました。ついでに巻添えでカローラさんも。
......一人だけ無傷なのはそうは問屋が卸さないんですよ。
「みなさーん、もうそろそろ付きますよ~」
そう、御者さんから声を掛けられ、僕はちらっと馬車から顔を出します。
......おお、あれが村か。
家は20個ほど。村の周りにはたくさんの畑があり、その周りを機の柵で囲んでいる。
のどかな農村。そんな雰囲気の村だ。
「とりあえず、この村で一泊していきますので。一度降りる準備をしておいてください」
「了解です」
僕はそう言って馬車の中に戻り降りる準備をする。
「あのーフローラさん。カローラさんも。もうそろそろ付くので一度降りる準備をした方がいいかと......」
そう声をかけるが二人とも顔を真っ赤にして俯いてる。
ちなみにさっきの恋バナの結果だが、フローラさんは地元に住む幼馴染のことが。カローラさんは、最後まで口を割らなかったが、僕とフローラさんのコンビネーションによって聞き出すことができた。
......何でも、領主様。その娘さんのことが好きらしい。うん、まあ。人間いろいろ恋愛の形はあるからねぇ......
そんなことを考えながら僕は準備を終える。
二人は......まあ大丈夫だろう。一応声かけたし。うん。
僕はそう思うと、村へと心を向けたのだった。
「よし、着いたー!」
僕は馬車から降りると真っ先に伸びをする。
馬車の中は広いけど、やっぱ外に出たら伸びしたくなっちゃうよね。
「くんくん......ふむふむ、何というか。すごい独特な匂いが......」
僕が「くんくん」とそんな風に匂いを嗅いでいると、一人の村びとが近づいてきた。
「おー皆さんようきなさった。ここはココの村っていう村だべさ。なんもないところだけんどゆっくりしてってくんろー」
そう言って村人さんはにこやかに歓迎してくれる。
そんなことをしていると、カローラさんとフローラさんがバタバタしながら馬車から降りてくる。
......まったく、まったく。だからさっき降りる準備しておくようにって言ったのに。
僕はやれやれと首を横に振る。
御者さんは、二人が下りたのを確認すると、馬車を止めてくるといって、村の中へと向かった。
「おーこりゃ。エルフとは。これまた別嬪さんがきおったのぉ。あ、もちろんおまえさんも別嬪さんだけんろー」
「......はは。ありがとうございます」
僕はそう言って村人さんに対して苦笑いを浮かべる。
「あ、そうじゃ。なあおまえさん。うちの息子がちょうどお前さんくらいなんよ。どうだ、うちの息子の嫁さんにこんか?」
「.....えっと、謹んでお断りします」
僕はシルフっていう好きな人がいるし.......それに何より。
そもそも僕男だし。
そう思って僕は再度苦笑いを浮かべたのだった。
それから僕たちはこの村にある宿屋に一泊した。
......こんな小さな村にも宿屋ってあるんだなってちょっと正直驚いた。
話を聞くと、今は冒険者業が盛んで、大体の村や町には宿屋があることがほとんどなんだそうだ。それは初耳だったなぁ.......
あ、そうそう。宿屋の品質はなかなか良くって、ご飯もおいしかった。なんていうか、田舎独特の味っていうのかな?そんな感じ。
そして次の日、準備を整えた僕たちはシルフに向けて村を出たのだった
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