到着と、始まりの聖女の伝説、そして大精霊
「はい、着きましたよ」
御車さんにそう言われて僕たちは馬車から降りる。
「御車さん。ありがとうございました」
「いやいや、こちらこそブラン様のおかげで助かりましたよ」
「様付けはやめてくださいよ。ブランでいいです」
「ははは、そうですかい?でもやっぱ『聖女』なので......」
僕はそう言う御車さんに向かって「しー-!」っと口に指を当てます。
「ダメですよー。そんなこと言ったら。僕は城で信じてもらえなくて、尚且つ追放されてここにいるんですから―『聖女』って知られたら面倒なことになってしまいます」
「ああ、確かに......すみませんな」
「忘れないでくださいよー」
そう言って僕は「はぁ」とため息をつきます。
一応、同席した冒険者の方たちにも事情は話して黙っててもらえるよう約束しました。
ちなみに約束を破ったら「めっ!」されるような魔法をかけておいたので安心でしょう。
「あばばばばばば!」
そう、丁度こんな風に......ってだれかに話そうとしたのですか?
全く、あれだけ念を押したのに......どうして人間っていうのは他人の言うことを信じないんですかね。
僕はそう思うとやれやれと首を振りました。
「......あの、ブラン様。ちょっと聞きたいことがあるのですが......」
「......だから様付けは......まあいっか。それで、聞きたいことって何でしょうか?」
「はい、あの......フェンリルの事なのですが」
フェンリル?
「......逃がしてもよかったのでしょうか?」
ああ、そのことか。
確かに、普通の人ならば人に危害を加える恐れがあるから討伐!って考えるだろう。だけど
「フェンリルは聖獣の一体なのですよ」
「......聖獣?あ、セイン教の伝説にある聖獣の事ですか?」
「はい」
僕はそう言って頷く。
聖獣というのは、全部で七種族いて、その七種族の獣の王は遠い昔人間と共に魔の神を退けた兄弟......だからみなその獣たちを害してはいけない。そんな伝説があるのだ。
「ですが、あれは伝説ですよね?」
「さあ、どうでしょうね?」
「ん?それは......」
「......まあ、そこは神様のみぞ知る......ってことで」
踏み込んで質問した御車さんに対して、僕はそう言って「ニッ」っと笑います。
結論から言うと.......伝説は本当だ。
始まりの聖女の伝説。シルフはその戦いを見ていたらしい。
「あ、それじゃあ僕もそろそろ行きますね。それでは御車さん。また会いましょう」
僕はそう言って御車さんに手を振って、町へと繰り出したのだった。
「さーて、町に来たわけですがー......んーいい風!そして相変わらずワクワクする匂い!」
僕はそう言ってくるくる回りながらあたりの空気を吸い込みます。
風が僕の髪をなで、通り過ぎていく。
.......と、っと。
気がつくと周りの視線は僕へと集まっています。
しかしそれは不審なものを見る目ではなく、温かい保護者の様な視線です。
「はわわ......見られてましたか?ちょっと恥ずかしいですね」
僕はそうつぶやくとにやにやしながら走りぬけていったのだった。
「......それじゃ、203号室の鍵をお渡ししますね」
あれから町を回って少しだけ買い食いした僕は宿屋へとやってきていた。
「はい。ありがとうございます」
僕はそうお礼を言って二階への階段を上がっていく。
.......えっと、201、202......ここだ。
僕は鍵穴に鍵を差し込んで中へと入る。
中はベッドと机、いすが一つあり、机の上には一つの花瓶が中には赤い色の花が入っている。
「へー......うん、いいへやだね!」
下層は治安が悪くて安いけどいい宿は無くて、上層は豪華だけど高くって......。やっぱ中層の宿屋が一番いいね。
下手したら王城にいた時より豪華なんじゃないだろうか?......そんなわけないかなさすがに。
僕は苦笑いをしながら窓に近づいて、窓を開ける。
「うん、やっぱ風が入ってきた方がいいよね」
僕はそう思って全身で風を感じる。
僕は風を体で感じるのが大好きだ......もしかしたらシルフの影響かもね。シルフは風の大精霊だし。
そうそう、ここで少し精霊についての話をしよう。
この世界には錬金学という学問が存在する。その学問の中では世界は四台元素。火、水、土、風の四つの元素で構成されているのだが、その元素。それを形作り、世界のバランスを保っているのが精霊。
そしてその精霊たちのを束ねるのが大精霊と呼ばれる存在。火の大精霊 サラマンダー。水の大精霊 ウィンディーネ。土の大精霊 ノーム。そして......僕の友達 風の大精霊 シルフ、だ。
この四人は大精霊と呼ばれることもあり、この世界を陰から支えている。
そう、シルフは実は結構すごい奴だったりするのだ。
そんなことを考えて、ふと頭の髪飾りを撫でた。
そう言えばこれはシルフからもらったものだけど......もしかして何か特別な能力とかあったりするのかな?
僕はそんなことを考えて「ふふ」っと笑った。
まさかね......と。
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