冒険者になった
「......ブラン様、着きましたよ」
「......すー.....ん、着いた?」
伸びをして周りを見渡す
......んーここが国境の町。ヘンリラッテか。
「それでは、ここで貴方は降りていただきます。これは最後の選別です」
そう言って渡されたのはわずかばかりの賃金と、着替え。剣。
うん、これだけもらえれば十分だ。
「一応忠告ですが、もうあなたは追補された存在です。アインシュタル王国には入れませんので」
「うん!もちろん。あっ、ここまで送ってくれてありがとー」
僕は騎士さんにここまで送ってもらえたお礼を言うと彼は呆気にとられた顔をした。
「ん?どうしたんですか?」
「.......は、いえ。今まで他の王族の方をおくってもお礼を言われることなんてなかったもので......」
「へーそうなんだ。育ての親の違いかな?」
ここでいう育ての親とはもちろん精霊さんたちとシルフのことだ。
僕がクスッと笑うと彼は顔を真っ赤にして「それでは」と馬車を走らせていく。
「また会おうねー」
僕は馬車に手を振ると荷物を手に持って歩きだす。
さーてこれからどうしようかなー。
精霊さんたちやシルフから外の世界については聞かされてきたけど、実際街を歩くのは今回が初めてだ。
物珍しいものがあって心が躍る。
なるほど!これがシルフがよく言ってた道への探究心か!
「どうしよーか......あ」
僕があたりを見渡していると、目の前を重武装の戦士たちが通りかかった。
がっちゃがっちゃと金属音を鳴らし、歩いていく戦士たち。
「冒険者......とかいいかも」
僕は口に手を当てると、にやりと口を歪ませ彼らの後を追いかけたのだった。
「おーここがぼうけんしゃぎるどかー」
でっかー。王城と比べると見劣りするがそれでもほかの建物と比べて大きい。
僕はニヤニヤしながら冒険者ギルドの扉を開いた。
冒険者ギルドの中は昼間だというのに酒の匂いがして、嫌いな人は嫌いだろうっていう匂いがした。
具体的にはお酒と、汗のにおい。
.......これは、これはこれでいいかな?
僕は空気を胸いっぱいに吸い込むとそんな感想を零す。
確かに独特な匂いだけど......なんというか、ものすごくワクワクする。そんな匂いだ。
あ、でも。たぶん僕以外の王族だったら泡吹いて倒れるんじゃないかな?
そんなことを考えながら僕は一人の受付嬢の前へと進み出る。
理由は一つ。冒険者になるためだ。
......外の世界は確かに自由だけど、お金を稼がないといけないからね。
その中でも、一番シルフから自由かつ、ブランにお勧めと言われていたのが冒険者なのだ!
「あのーすみませーん」
「どうしたんですか?」
受付嬢さんはそう言って僕に笑顔を向けてくる。
受付嬢の女性はきれいで思わずドキッとしてしまう。
「あ、あの......冒険者登録がしたいんですけど」
「あ、登録ですね。えっと......文字は書けますか?」
「え?ああ、かけますよ」
「え、その年齢で.......凄い」
ん?僕受付嬢さんと年齢そんな変わらないはずなんだけどな?
僕がそう思っていると受付嬢さんは一つの神を手渡してきた。
「えっと、こちらの書類に名前の記載と......」
「ふむふむ」
僕は受付嬢さんに言われた通りに書きこむ。
名前は......危ない危ない。苗字も書きそうになった。これからはただのブラン。ブランだ......っとよしこんなところかな?
「はいどうぞ」
「ありがとうございま......すごい、きれいな字」
受付嬢さんはそう言って書類を手に取り下がっていくと、しばらくして1枚のカードをもって戻ってきた。
「はい、こちらが冒険者カードになります」
そう言って手渡されたカードには『ブラン』という名前と大きく描かれたFランクの文字が書かれてあった。
おお!これが自由の象徴!冒険者カード!
僕が目をキラキラ輝かせてくるくる回っていると、受付嬢の女性が「こほん」と咳払いをした。
「はしゃぐのは分かりますが。とりあえず、簡単な説明をさせてください」
「あ、ごめんなさい」
「別にいいですよ。さて、まず冒険者ランク。これはクエストを受ける際に重要になってくる項目です。FランクだったらF。DランクだったらD以下。基本的にランク無いもしくはランク以下のクエストしか受注できません。そしてランクですが、こちらはクエストをクリアしていくごとに冒険者ギルドの評価が溜まり、ランクが更新されます。この評価はクエストの難易度によって評価値が上がりますので上になったらどんどん上のクエストをクリアしてください.......つぎに」
と電光石火のごとく説明が開始される。
すごいなぁ......とりあえずこの話はシルフから聞いていた通りだ。......そう言えばシルフってなんでこんなに人間社会に詳しいんだろ?ま、気にするだけ無駄かな?
「とまあこんな感じです。質問はありますか?」
そう聞いてくる受付嬢。
うーんそうだな。特にないなあ~。
「うん、大丈夫です。ありがとうございました!」
こうして僕は冒険者になったのだった。
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