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従者桜木花子と召喚者、津井儺祥那。4

 怪物を倒しても、賢人が死んでも。

 すっかり拗れて元に戻らない所へ、旧米国からの要請が有った。

 またしても新たな召喚者が来た、と。


『ショナさん、コレって本当に凄い事が起こるんじゃ』

「そう警戒しつつ、見聞を広めましょう。取り敢えずは、武光さんも一緒に挨拶に行きますから、我慢して下さいね」


『はい』


 そうして病院前で合流し、病室へ。

 面会を終えると、土屋が口を開いた。


『あの、ちょっと良いですか。今ココで言う事では無いと思うんですが。俺、桜木さんと交代しようかと』


「有り難い申し出ですが、あの子に任せているので、君が行ってもお邪魔になるだけかと」

『休職してでも辞めても行きたいんですが、どう手続きをすべきでしょうか』


「ぅうん、ちょっと向こうで話しましょうかね」


『タケミツさん、影響を疑ってるからって、まだ何も知らない人に勝手にアレコレ言わないで下さいね。どれだけの能力なのか、どんな思想なのか分からないので』

「あぁ、分かっている」


『言う()()()が無かったとしても絶対ですよ、もし言ったら』

「分かってる、すまない」


 祥那はもう、一切諌める事をしなかった。

 花子のストレス発散と同じ様に、コレを止める弊害の方が大きいと判断したから。

 そして自分の代わりに言ってくれているんだと思えばこそ、溜飲も下げられたから。




《ハナ、君を追い掛けて従者が来るみたいだから、辻褄合わせをしよう》

「クッソ怠い。元首、勝手にそっちで何とかしてよ」

「コレばっかりはどうにも、吸血鬼の被害に合わせない条約を結んだんだ。すまんね、頼むよ」


「まーたそうやってお爺ちゃんぶってさ、逃げ回ろうかなぁ」

「はいはい、今度は何が欲しいんだい」


「竜の涙、何味か気になる」

「またそう絶妙に無茶を言って」


「おうおう、大事な人質様やぞ。大丈夫じゃろ、凶暴じゃ無いんだべ」

「眠ってるからね、涙を上げられないんだよ」


「触るのも無理か」

「起きられたら困るからね」


「じゃあ、アイス、ココのお醤油アイスとか取り寄せて」

「それなら良いけど、味見させてくれるんだろうね」


「そらね、お醤油のは皆で食うから」


 花子は国家元首のブラドについては許していた。

 あの後に謝罪をし、守る為に仕方無いとは言え、卑怯な手を使ったと謝った。

 その守る中に自分も入っているんだと、彼なりに悩んだ結果だったと理解したからだ。


 不審がったのは武光で、それが原因なのだからブラドは悪くない。

 と言うか国連に所属して無い国家元首って大変だな、と。


 こうして1日1回、無茶な事と叶えられそうな事を言いに、気晴らしにちょっかいを出しに来ていた。


《それで、辻褄合わせなんですが》

「えー」


《無事に追い返す為ですよ》

「あぁ、はい」


 ネイハムとの距離はそのまま。

 そして思い人に少し似ている人には、大いにちょっかいを出していた。


『あの』

「うん、眼鏡が似合う」


 このまま、処女のままに、不幸にも厄災で死んでやろうか。

 武光への捨て身の八つ当たり、最後の仕返し、花子が立ち直った方向はそれだった。

 例え記憶に無くとも、悲報で傷付け。


 そして悲報で大して傷付か無かったら、あのエミールなら責めてくれる筈。

 そして例え悲報を知らないで帰還しても、自分はもう死んでいるのだから、もうどうでも良い。


 好きな人と一緒になれないなら、思い出をしゃぶり尽くして、記憶が薄れる前に死んでやる。


 そう思ったら視界が晴れた気がしたし、涙も止まった。

 ネイハムは死のうとしてる事に気付いているのかも知れないけれど、どうせ同情だし。

 もう、どうでも良い、好きにすれば良い。


《それも、自傷行為の扱いにしましょうか》

「嫌なのか、ワシのハグ」

『いえ、僕は嬉しいですが』


《ハナ》

「怒られたので離します、そして去ります、お邪魔しました」

『いえ、またどうぞ』


《ハナ》

「その似合わない名前嫌い、クソ親のセンスは何処までもクソやんな」


《なら、どう呼べば良いんですか》

「鬼の醜草」


《紫苑、良い名前ですね》

「それか(うるみ)(じゅん)か、糞かゲロか」


《魔道具の事ですか》

「性質は性別程度じゃ変わらないんだろ、どれだけ変えれば良いのかなって」


《どうにかして、私や柏木さんの遺伝子でも入れましょうか》


「それ、凄く良いかも」

《特例で出来る様にココで法整備もしてるんです、ですから従者を追い返して下さい》


「なんだ嘘か」

《本当ですよ、君の様に変えたがっている者も多いので。なのでそれを悟られても困りますので、手伝いますから、無難にお願いします》


「分かった。愛してるかも知れない」

《叶えられた後を、期待してますよ》


「期待は薄めでお願いします、家族だし」

《はいはい》


 恋が叶わず共、この穢れた血を抜き出せる。

 吉報のお陰か、久し振りに薄っすらと食事の味がした。




 休暇で行くならばと、エミールや祥那からの助言も有り、土屋はルーマニアへ入国し、花子と会う事が出来た。

 ずっと好きだった花子。

 年の差や遠慮から決して自分から接触する事は無かったけれど、召喚者が来た事で決心が付いた。


 明日死ぬかも知れない、そう思い告白しようとした時に、花子がルーマニアへ居留する事に。

 召喚者同士で揉めたらしいが、詳細は知る事が出来無いまま。


 連絡は偶に取れるが業務連絡のみで、無駄に月日が経ち、賢人も亡くなり。

 もう、時間が無いかも知れないと。


『好きです』

「お、え?お久しぶりとかの前に?え?」


『明日死ぬかも知れないと思うと、どうしても伝えたくて。付き合うとかは無理だと思うので、それを言う為だけに来ました』

「そん、ワシ何かしましたっけ?」


『なにも、ただただ俺が惹かれただけです』

「なん、何に?」


『笑って無い時の顔を見た時、どれだけ配慮してくれてるんだろうかと。そう気になり出して、ずっと見ていたら、好きになっていました』


「あの、こう、真面目な告白は初めてで、ちょっと」

『年の差が有るし、俺は従者オタクだと揶揄される様な人間で、だから気持ちを隠して。それで良いんだと思って過ごしていて、タイミングを見て打ち明け様と思った時に、こう、離れてしまったので。辞める気でいました』


「そんな、そこまで?」

『結果として召喚者様にご助力頂いて、辞めずに来れました』


「あぁ、お元気でらっしゃいますか」

『いえ、武光様は単独で。エミール様と祥那様にご助力頂けました、様子を見て来て欲しいと。それと、新たに召喚者様が来ました』


「それで死を覚悟したのね」

『はい、厄災の規模はかなりだと思います』


「うん、国家元首にもお会いして貰おう」


 そうしてネイハムや国家元首へ、新たに召喚者が来た事が告げられた。

 そして土屋には賢人が生きている事が、伝わった。


『それは』

「隠密行動の為、内緒やで」


『それなら、はい』

「信じてくれるのね」


『桜木さんと召喚者様の間に、何が有ったかは聞けませんか』

「おう、大した事無いし、それとココに居るのは別問題だから」


『あの、可能性が有るかは。聞きたいです』

「マジで?0なら聞かなかった方が良くない?」


『マイナスじゃ無ければ、前と同じ気持ちに収めるだけなので』

「じゃあマイナスなら?」


『直ぐに立ち去り職も辞めます』

「じゃあ0で、周りを良く見ればワシより良い人が必ず居る筈だから大丈夫。貴方は真面目で良い人だから、他に目を向ける事を諦めないで欲しい。つかもっと早く言ってくれたらワンチャン有ったのに」


『男はどうしても早死だし、置いていく事を考えたら、どうしても遠慮が出てしまって』


「クッソ優しいのな。でも良い思い出だけなら残されても幸せだと思うから、年の差を気にせず頑張って欲しい。それにほら、相手が意外と病弱で女の方が先に行くかもだし。つかそんなんで耐えられるか?ワシなら死んでも長生きして欲しいぞ、もし生きてたらと思ってて欲しい方なんだけど」


『やっぱり』

「ワシ実は不妊なの。お元気で、どうか貴方に似た優しい子が生まれますように、お祈り申し上げます」


 深く頭を下げた花子に、土屋は去るしか無かった。




『お元気でした』

『そうですか、良かった』


 少なくとも、そう見せられる状態では有ったのだと。

 ロキ神に返答する事を躊躇ったので、ドリアードからの情報も無いままで。

 ちゃんとした情報を得られたのは久し振りだった。


 そして土屋は、また改めて告白する事にした。

 厄災が終わったらもう1度、振り向かせる為にも、もう1度頑張ろうと決意していた。

 祥那と同じ様に努力する事で願いを叶えた人間で、子供が出来無くとも一緒に居たいと思っていたが、頑なだとも知っていたので、その場では間を置いたに過ぎなかった。




 そうして第2地球が現れた日。

 花子の目の前に黒い仔山羊が現れた、何かを話しているのだが、聞いた事の無い言語。


 翻訳機に反応は無し。

 似た言語を耳を頼りに探したが、文字にしても理解は出来無いまま。


「うん、コレ、幻聴と幻覚かも知れんな」


 そうしてネイハムに相談し、精神鑑定を受ける事に。

 だが幻聴が命令してくるでも、幻聴が襲って来るでも無い。


《本当に存在すると仮定すると、あの地球の使者かも知れませんよ》

「若しくはワシがストレスでヤバいか」


《あの星と戦争になったとしても我々に出来る事は限られるでしょうし、言語の解析をしてみましょう》


 そうして言語の確認の為、花子が聞き取った発音を録音する事に。

 そうして一通り復唱を終えると、指差しで物の呼称を言わせる事に。




 そうしていると、賢人から使節団が来たとの知らせが入った。

 それは花子達の居るルーマニアと、日本、欧州にのみ。


 言語の壁が有るらしく、どうすべきか相談していると、ネイハムから似た言語を見付けたので使ってみてはくれないかと。

 通信機経由で賢人が復唱していた言葉から見付けたらしく、メールが届いた。


『コレ、先ずは賢人さんですよね』

「はい」


 既に解析済みだとは思わず、使節団員は動揺した。

 それをマサコが見抜いたが、尻尾を掴むまではと武光に言われていたので、暫く見守る事にした。


 そうして英語にも反応を示す事に気付き、情報共有へ。

 自分が来る前に何か有ったらしいけれど、教えて貰え無いままに厄災かも知れない地球が来てしまった。


『あの』

「何かを要求されるまで堪えて下さい、僕らの事も出来るだけ伏せて。ですが怪しまれたら」


『ダミーの書類を出す、ですね』

「はい」

『手伝えなくてすみません』


『良いんですよ、任せて下さい』

『はい』

「では、解散で」


『あの、武光さん。本当に何が有ったのかは』

「正直、プライバシーの問題なんだ。しかも俺が悪い」


『あ、そうなんですね』

「すまん、アイツらに厄災が何か分かるまではと口止めされていたんだ」


『そうなんですね。でもきっと』

「いや、誤解だとか分かり合うとかの次元じゃ無いんだ、すまない」


『いえ』


 もう、触れるのは止めておこうとマサコは思った。




 そうして5日が経ち、花子が召喚者のフリをして第2地球へ行く事になった。

 使節団から女性の召喚者をと要求され、カールラと共に向かう事に。


 予測されているのは懐柔、または人質、若しくは人身御供。

 花子は別にどれでも良かった、死ねるので最高のシチュエーションが来たとしか思わなかった。


「処女で良かったわ、少しは価値が有るべや」

《行きて帰って来たらお願いします》


「遺伝子が変えられたら、じゃあね」


 魔道具も完全装備で良いとの事なので、そのまま使節団の使う転移で移動する事に。

 長時間の移動になるので、楕円形のガラスの様な魔法に包まれ、眠りに付いた。




 目覚めるとベッドの上だった。

 服も魔道具もそのまま、だが侍女に内部を移動する時は刺激させない為にも隠れない部分の魔道具は全て外して欲しいと()()()された。


 腐っても友好を結ぼうとしてくる相手に対して、マトモな対応をするなら外すべき。


 仕方無く先ずは着替え、外部から見えそうなのは外した。

 そして付け替えた。


 舌には嘘発見器の魔道具を。

 性別を変えられる魔道具と通信機はそのままに、最低限の装備で移動する事になった。




 ネイハムや祥那達は、花子から語られる歴史からして女系、特に女性がハーレムを形成している世界だと言う事にゾッとした。

 もしかしたら、最初から花子が狙いだったのかも知れない、と。


「ネイハムさん」

《こう、裏をかかれるとは思いませんでした》

『あの、仔山羊さんは?』


《ハナと一緒に行くと、ハナから》

『もしかして、この事を知ってて黙ってたとかは?』

「そんな、どうして」


《武光君への復讐と八つ当たりに、死に場所に選んだのかも知れません》

「でも、それって憶測では」


《はい、ですが何十年一緒に居ると思ってるんですか?》

『じゃあ、何か有ったら』


《何か有れば、です》


「宇宙に浮島を、中間地点にします」

【しょうがないですねぇ、今回だけですよ】

『宜しくお願いします』


 それでもまだ、クーロンの速度でも1日は掛かる。

 

【コレ以上は無理ですよ、どんなにゴネても】

『僕、様子を見に』

「警戒心を煽るのは得策じゃ無いので、最悪が無い様に祈りましょう」


 祥那は願う事はしても、そう祈る事は無かった。

 けれども今回だけは、花子が無事に帰って来る様にとひたすら祈った。




 花子は転生者の鈴木に会い、事態は急転した。

 花嫁衣装に自分で刺繍をする文化は他の地方にも有る、しかも刺繍を勧められた。

 最悪はマジで自分が娶られるかも知れないと、花子は少し焦った。

 処女で死んでやる、その願いが達成出来無いのは困るし、だけど鈴木を守らないといけないし。


「スーちゃん、ワシを守ってくれんかね」

「うん、私を縛って寝ようと思うんだけれど」


「それ、寝れる?」

「多分、寝付きが異常に良いんだ、この体」


 もしかしたら魔素の枯渇に合わせているのかも知れないし、意図的に操作を。

 もし操作したのならかなりの科学技術か、エルヒムは相当な神か。


 若しくは両方か。


 遺伝子治療の分野にも手を出すべきだったと、後悔しながらも花子は鈴木に抱き締められながら、眠った。




 一方の祥那達には公式の、使節団からの連絡は一切無し。

 奉持なのは知っているのだが、確実に通い婚の儀礼が行われている事に全員が苛立っていた。


『ハナさんには、外交問題を無視して刺し殺して欲しいとんですけど』

「一応公務員ですし、他の方法で」

《日頃の自傷行為が役立つ時が来たかも知れませんし、そこで自決するかも知れません》


『どうにか説得出来ませんか?』

《ずっとしてきましたが、私ではダメなんですよ》


 ココでも祥那は迷っていた。

 ハーレムを受け入れる事も、狗神を憑ける事にも躊躇っていた。


 もう、自分を好きでは無いかも知れない、もう諦めて興味を失っているかも知れない。

 同情と思われるかも、性質の影響が切れて無いんだろうと言われたら、それを証明する手段を人間側では準備が出来ていない。


 こんなに早く事態が動くと思っていなかった、武光との訓練等無意味に等しいかった、あんな事をしてる暇があるなら。


『ショナさん、要らないなら僕に下さい』

《残る事に納得頂けるのは、確かにエミール君の方でしょうね》


『ハーレムを受け入れます、僕はまだ未成年ですし、その間にお互いに気が変わるかもなので』




 とうとう、全員が恐れていた事態が起きた。

 全く振り向かない花子に、強硬手段が取られそうになった。


 だが自決はせず、ギリギリ自分で治せる範囲の傷を腿に付ける事で事態を収めた。

 転生者が居る以上、どうしても自分勝手な事は出来なかった。


「ぅう、もう、しないでね」

「襲われたら何度でもするでよ」


 そして自刃の情報は伏せられ、公式からは婚姻の儀礼をするとだけ伝えられた。

 そこへ召喚者達を改めて招待する、と。


《完全に挑発行為ですね》

「でも、助けに行かないワケには」

『僕もう、今から向かいます』


「待って下さい。残る覚悟が有るなら、余計に行くべきじゃ無いです。行くなら、僕です」

《死ねば帰還が叶いませんが》


「帰還より桜木さんなので」


「待ってくれ、少し話を聞いて欲しい」

「本題からどうぞ」


「神々から能力を授かった、もう少しだけ待って欲しい、出来たら儀礼の時間のギリギリ手前まで」

「人身御供にする気ですか、転生者の方も」


「だからだ、俺らが来ないとなれば警備が緩くなるかも知れん」

『そう言って悪役を買って出て、見殺しにする気なんじゃ無いですか』


「そう思われても仕方無」

「どんな能力なんですか、見せて下さいよ」


「いや、コレは1回きりだと。第2地球へ直ぐに行ける」


『良い言い訳ですよね、ショナさんにお願いする方が』

「頼む、信じて欲しい。俺の命を掛けても良い」


「そうやって魔女狩りの方々も言ったのかも知れませんよね、世界の為だから殺すんだって」


 だが、もしコレが本当なら、確実に花子の救出の確率は上がる。

 安全が確保し易くなる。


 ただもし嘘なら、厄災が終わった段階で武光が帰還を選べば、罰も何もお咎め無し。

 残された者だけが苦悩し、最悪は、また負の歴史が闇に消える。


《武光君、君が選択を誤れば後代にまで影響するんですよ、分かっていますか。果ては召喚者は悪人、当人達だけの弾圧や排除では済まないんですよ》

「分かっている、今既に居る召喚者の血族、双子達が絶滅危惧種になる」


《はい》

「そうさせる気は無い、疎まれる事が無い選択だと信じて欲しい」


『でも、嘘を見抜けなくする、若しくはコントロール出来る魔法を得ていたなら、そんな言葉って無意味ですよね。アナタは居なくなるんですし』

「大勢を救い、被害を最小限に抑えるなら桜木さんと鈴木さんを見殺しにすれば簡単ですよね。そしてこの地球の大勢が救えた事に感謝すれば、疎まれる事は無い。僕らがそう仕向けなければ」


「ショナ君」

「この力が有って、奥さんと子供が殺されるとなったら、当然力を振るいますよね。殺されたら復讐しないんですか?その程度の愛情なんですか?」


「だとしても」

「では、どの神様からどんな力を、どんな風に手に入れたんですか?」


「インドの」


 宇宙さえ作れる神。

 確認するしか無いが、神がこの地球を救う為だと嘘を言えば花子は助からない。

 そも確かめる事は時に不敬にも繋がる。


 なら。


「神様を信じていますが、ミスの殆どはヒューマンエラーですし、僕も願い請います。エミール君は地上で待機を、地上が攻撃され無いとも限らないので。お願いします」


『分かりました』

「俺はマサコと待機する、もし」

「絶対に得ますので、では」




 結婚式に興味は無かったけれど、好きな相手としたかった。

 って言うか、コレマジで誓わないと死ぬのかしら、この人達。


『誓う、と』


「ワシ、他に好きな人が居るんじゃけど。って言っても日本語通じないんだよね、君ら」

《良いんですか?この子が死んでも》


「生き返らせるから大丈夫、信じてスーちゃん」


 鈴木が頷くのを見届けると、先ずは胸に手を当てた。

 願えば魔道具を人間でも作り出せる。

 なら、もし祥那が助けに来てくれたら、この剣が世界を救う。

 命をもってして、この剣が世界を救う物になる。


《それは》

「桜花、格好良いでしょう」


 先ずは鈴木を抱えていた巫女を切り付け、鈴木を抱えて砂漠地帯へ。

 そうして男性体へと変身し、鈴木を抱え直すと地球が見える方向を目指した。


 飛ぶ魔法を、飛べる魔道具を持っていたら。

 でもきっと届かない、自分の魔力が持たない。


 ならひたすら逃げるだけ、助けが来るのを待つだけ。


 でも、助けに来てくれ無かったら。

 自分と鈴木が見殺しにされるなら。


 なら鈴木を殺して自分も死のう、きっとココでは蹂躙されるだけ。

 あぁ、脳を破壊するべきだな、向こうの世界にそんな話が有るって聞いたもの。




「桜木さん!」


 夢か幻覚か、クーロンに乗った祥那が来た。


「先ずはスーちゃんを」


 鈴木を竜の背に乗せた瞬間、地震が起こった。

 そうして轟音が迫り、辺りを良く見ると肌色の津波が猛スピードで四方から迫って来ていた。


「兎に角クーロンに」

「少し離れましょう、盾の射出をお願いします」


 花子の目論見は当たった。

 目的は花子、最初から花子だった。


「桜木さん!」

「エリクサー撒いてみて下さい」


 エリクサーへも肌色の触手が伸びた。

 こう手助けしろとは。


「コレは」


「エルヒムだか仔山羊か」

「あっ」


 そして花子はさっきまで居なかった筈の竜種の背に着地した。

 このまま分散し、エリクサーを撒きながら上昇する事に。


「すみませんが宜しくお願い致します」

『おう、任せるが良い』


 だが花子が離れ過ぎれば竜種や祥那達へ手が伸びる、そして近付き過ぎれば捕まりそうになる。


「囮をしますが、お願い出来ますか」

『あぁ、乙女の願いに俺は弱いんだ』


「ありがとうございます。鈴木さんの救出、ありがとうございました。囮を引き受けますので、皆さんは引き上げて下さい。どうかご武運を」


 そうして花子は通信機を投げた。

 そして性別変える魔道具も、嘘を見抜く魔道具も。

 魔石が使われた魔道具へ肌色の触手が引き寄せられ、飲み込むと波打ち巨大化していった。


『その靴も、そうだろう』

「あぁ、ですね」


 先ずは右足から、続いて左足の靴を投げた。


『あら、凄く素敵な剣ね』


「あの、どちら様で」

『アマルティア、手伝ってくれてありがとう。おかげで方舟が飛び立てそうなのだけれど』


「桜花ですか」

『そう、それかアナタ』


 この会話は竜種には聞こえていないのか、無反応。

 そしてコレは多分、本当の事。


「その方舟には」

『アナタ達や地球へ害を及ぼす者は乗って無いわ』


「そうですか」


 だとしても、桜花は渡せない。

 コレで厄災が終わるかどうか、公式な判断がついていないから。


「桜木さん!通信機は」


 油断したからか、竜が尻尾を触手に掴まれ、花子は竜の背から落ちた筈なのに。

 腕を祥那に掴まれていた。


「離してくれないと腕を切り落としますよ」

「なら一緒に落ちます」


「却下、コレは桜花です、世界を救う剣なので、お願いします」


 そうして花子は自分の腕を切りながら、見た事の有る場面だなと思った。

 昔、転生者様の出した本に同じ様な場面が有って、凄く愛を感じて、羨ましかった。

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