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従者桜木花子と召喚者、津井儺祥那。1

 平凡で平和だが良い家庭で育った祥那君は、ひょんな事から異世界へ。

 将来の夢は自衛隊員、そしてそれを叶えて寮で寝ていた筈が、何故か宮崎の病院で目覚める事に。


 意識が戻った後、自衛隊員でも有る事から早々にココが異世界であると告知を受け、説明を受ける前に従者が紹介された。

 桜木花子と境川(さかいがわ)賢人、祥那は従者に身長制限が無いのだなと思った。

 賢人は似た年齢でラッキーだなと思い、花子はこの人だけで召喚が終われば良いのになと思った。


 そして祥那は世界の事を知りつつ、適切な場所への移動を要請。

 魔力容量の問題も無いのでと、省庁へ案内される事になった。


 輸送用のヘリに暫し感動し、搭乗。

 暫くしてけたたましく警報音が鳴り響いた。


 窓の外を見ると片方には巨大な竜が、もう片方には大きな鳥。

 激しく機体が揺さぶられ、そこで初めて異世界なのだと実感した。


 ヘリが急いで緊急着陸をすると、竜と大鳥は上空で旋回を始め、近くの広場へ何かを落とした。


「あぁ、神獣の卵かと」

「いつもは友好的っつうか、不干渉なんですよ、マジで」


 2人の従者が捜査班へ捜索を依頼、神獣の卵と確認が取れたので近くへ行く事になった。


 2mは確実に超えている巨大な卵。

 ほのかに暖かく、ゆっくりとした心音が聞こえた。


「本来は近くで過ごして頂きたいんですが、大きいですし、テント泊になるかと」

「孵るまでなんすけど、大丈夫ですか?」

「はい」


「再確認しますが、純潔の誓いや女性嫌悪等は無いでしょうか」

「はい」

「あ、桜木さん一応女の子なんすよ、それで念の為っす」


「あ、なら別々の方が」

「警護の為なので、強い要望が有れば可能ですが」

「何もしないしさせないんで大丈夫っすよ」


「お前、逆に誤解を招くだろうよ」

「さーせん、安心させた方が良いかなって」


「あの」

「ココは同性同士でも婚姻可能なので」

「男同士の妊娠は流石に無理っすけど、女性同士は可能っす。後、俺は異性愛者なのでご安心を」


「自分は別に何でも、あ、健康な男子なんですし別にしましょう」

「テント2つしか無いっすよ?」


「予備を借ります、どうせ小さいんで」

「あの、そう気を使って頂かなくても大丈夫ですよ」

「したくなったら言ってくれて大丈夫っすよ、俺も普通に言うんで」


「あ、ネタとか道具を揃えておけば良かったか」

「いや、それはマジで個人差が凄いんで。それも言ってくれたら探してきますよ」


「はい、道具も」


 こう、大っぴらな世界なのか、進んだ世界なのか祥那は少し悩みましたが。

 花子と賢人を見て、性差の埋められた世界なんだなと思いました。


「あ、空腹感を感じたら直ぐに言って下さいよマジで」

「生死に、生き死に直結しますから」


 体内の魔素が枯渇すれば意識を失い、何度も繰り返せば内臓に負担が掛り、果ては死んでしまう。


「桜木さんは容量多いし、大食いなんすよ」

「食べれる才能が有って助かってますが、食事の途中だったので、ぶっちゃけ空腹です」


 そして警備の増援も有ったので、食事をする事に。

 地元の自衛隊により炊き出しが行われたので、先ずは花子が毒見をし、祥那へ。


「心配性っすよねぇ」

「我々の想像を超える事が起こる可能性も有るからこそ、呼ばれるのだと考えてるので。念には念をです」

「あの、災害も含むと書いて有ったんですが」


「俺も、地震とかデカいのが来るのかなーって感じなんすけど」

「最悪は第2の地球が出現すると、自分は思ってます」


悲観主義者(ペシミスト)っすもんね」

楽観主義者(オプティミスト)は字の通り楽そうで良いですね、羨ましいわマジで」


 ココで自身の知らない言葉なのにも関わらず、言葉を理解出来た事に驚いた。


「あの、悲観主義者と楽観主義者って言ったんですよね」

「はい、翻訳機能が付随するそうで。訛りとかどう聞こえるか気になるんですけど」

「それは後で、飯先っすよ桜木さん」


「あぁ、失礼しました。お魚、大丈夫ですか」

「クエ鍋っすけど、携帯食料も有るっすよ」

「大丈夫です、はい」


 言語の確認や、世界について知りたかったのにも関わらず、祥那は眠気に負けテントで寝る事に。




 こうして寝ては起きてを繰り返し、夕方に。

 そうして卵が孵ると、竜と大鳥が現れた。

 それからは名付けに耐えうる魔素の確保にと、近くの魔素の濃い温泉へ向かう事に。

 広島の自衛隊基地までヘリで移動し、そこからは車で。


 1時間程で付いた先は、川沿いに有る湯治場だった。


「桜木さんの好みで選んだんじゃないかって位に、良い場所っすね」

「まぁ、好みでも有るけどもだ。マジで近場はココなんだって」


「飯、どうしますかね」

「さっき食堂が有った、アレは絶対に美味い、筈」


 先ずは濃厚な炭酸泉へサッと入り、食堂へ。

 花子の言う通り、美味しそうな食堂は実に美味しかった。


 ラーメンにおでんに鍋焼きうどん、焼き飯にオムライスにと、花子が毒見をしたモノから順に分け合って食べた。


「ヤバいっすね、超当たりっすよ」

「おでん、買い占めるべ」


 そうしてポカポカになりお腹もいっぱいになると、祥那はまた、眠くなってしまいました。


「お、眠そうっすね」

「もう少し我慢を、逆流性食道炎防止です」


 前なら耐えられていたけれど、どうしても耐えられない。

 コレもまた、異世界なのだなと実感する出来事だった。




「あ、布団に、すみません」

「大丈夫っすよ」


 爆睡する花子はほっといても良いとの事で、朝風呂へササっと入り、朝食へ。

 朝食も出す居酒屋へ向かい、川魚の刺身に警戒したが、安全だと聞いて完食。


 それからはもう寝たり起きたり、そうしてお昼頃になると、花子が起きた。


「腹減った」

「でしょうよ」


 そうして道の駅へ向かい、(ワニ)料理を出すレストランで食事をする事に。

 ワニフライにお刺身にしゃぶしゃぶ、ワニステーキ。

 加工が少ない程魔素は残る事を教えて貰いながら、舞茸の天ぷらそばやハンバーグ、そしてエビフライと出揃った。


「エビフライはワシの好みです」

「ワニはそんな食わないんすね、水銀気を付けてるんすか?」


「まぁ、一応。折角だし、心得も伝えますか」

「えー」


「誤解すると思いますか」

「いやぁ、そうは思わないんすけどぉ」


「で、従者心得と言うのが存在するんですが」


 こう付き従うのだか、半ば当然だとは思ったけれども。

 自分の立場を鑑みると、そう、子種を残す事も求められるのかも知れないとの考えに辿り着いた。


 ただ、そんなにモテるでもない自分が、そうなるのがどうしても考えられ無かった。


「その、子種を残すのは義務なんでしょうか」

「国や世界としてはそうかも知れませんけど、残したければどうぞと、性行為に嫌悪が有れば体外受精も可能ですし。あ、全くダメでも注射器で吸い出すそうですからご安心を」

「それが俺は逆にヤバい情報だと思うんすけどね」


「知りたがって下さってるので、コレ位は良いかと」

「痛いのは暈かせって言ってくれて良いんすよ?」

「いや、はい」


 そしてまだまだ食べ足りない花子は、隣のお店へ。

 雪の降る季節だと言うのにアイスが売っていた。


「紫蘇シャーベット、アーモンドナッツ、リッチミルクとベリーヨーグルト」

「おしょうゆ味、俺いくっすよ」


 それから今度は隣の直売所へ、これから先自炊しても良い様にと野菜やお米を買っていた。

 こう言った場所も、売られた物も向こうの世界と同じ様だなと思っていると、また。


「戻りましょう、買い出しは後ででも出来ますから」

「そうっすね」


 また、寝たり起きたり。

 こんな状態で自分は何か役に立つ事が出来るのか、凄く不安になりました。




「あの、この状態でお役に立てるのか不安なんですが」

「お夕飯を食べながらお聞きします」


 近くのお蕎麦屋さんへ。

 割子蕎麦のセット期間限定の牡蠣ソバと猪ソバ、舞茸ご飯とお稲荷さん、アナゴ天に天ぷらの盛り合わせ。


 それから日本酒も。


「あの」

「飲めませんか」


「いえ」

「まぁ、先ずは飲んで感想を下さい」


 一通り飲んで食べ、見事に煙に巻かれた。


 そうして朝になると次は移動する事に。

 玉造温泉の高級旅館へ。


「あの」

「先程までの場所は緊急用です、普段はこう言った場所に泊って貰います。人が多いので」

「そうっすね」


 露天風呂と次の間付きの和室、お茶を淹れて貰い、ついうっかり流されそうになってしまったが。

 気を取り直し、自分の不安を告げる事に。


「僕が役に立てるか不安なんですが」

「生まれたての赤ちゃんと同じだと、先ずは思い込んで下さい」

「まぁ、そうっすね。俺らにもショナさんに何が出来るのかは分からないんで、この時間はそれを理解する期間でも有るんすよ」


「我々は補佐ですが、誘導は禁じられています。そう導いた先が間違いなら、被害が拡大してしまうので」

「だから、知りたかったら知りたいで良いんすよ、後は何を知りたいとか。意見を聞かれれば言いますよ」


「じゃあ、何が起こるかは」

「俺は願望を含んでるんで、災害が良いっす」

「異世界が地球毎転移してくる、転生者様の創作物で、それが1番最悪だなと思ったので」


 そこで転生者も居るんだと知り、回復次第会う事に。

 そして先ずは実際に世界を見るべきだとも思ったので、近くの有名な神社へと向かう事に。




「桜木さん、どストライクじゃないっすか」

「イケメンな禰宜さんですな、それとも神主さんだろうか」


 その人物に由来やお話なんかを聞こうと思っていたのに、神様だった。

 そしてとてもフランクな方で、土下座しようとする花子を止め。


《褒めてくれる事は嬉しいから、さ、向こうで話そう》


 そうして神社の裏手へ向かい、話をする事になった。


「自分に何が出来るか分かっていないので、先ずは先達についてお伺いしたいのですが」

《其々なんだよね、本当》


 災害を未然に防ぐ事も有れば、災害後の復興へ貢献したり。

 時には魔王へ挑んだり、大罪化してしまったり。


「大罪?」

「憤怒さんですね、コチラへ転移後に大罪の憤怒として生まれ変わりました」

《そうだ、折角だし知恵神に聞いてご覧よ、クエビコに》




 そうして省庁へ許可を取りに車へと向かう為、境内を出ると目の前にはお団子頭をした奇抜な男性が。


「あの、魔王と申しますが」


「マジですか」

「イケメンっすねぇ」


 魔王と名乗る何者かに車外で待ってて貰い、従者達が社内で身分証を確認すると、本当に魔王だそうで。


「あの、どう言ったご要件で?」

「私、子持ちでして。子供の為にも、世界を守って頂く補佐が出来たらなと。困ってらっしゃるかなと」

「残念」

「マジでメンクイっすね」


「おう。何で困ってると思ったんですかね」

「名付けを中々されないなと」


「あぁ、魔素が安定しないので出来無いんですよ」

「あ、そうなんですね、こんなに小さいと大変でしょうに」


「ワシちゃう、この方が召喚者様です」

「え、あ、失礼しました」

「大丈夫っすよ、容量が全てじゃ無いっすから」

「そう、思いたい、ですね」


 そして魔王の空間移動で省庁へ、そうしてクエビコ神に会う手筈を整え、更に移動する事に。


「ココなら大きくなっても大丈夫でしょう、行ってらっしゃい」

『《あい》』

「喋ったっすよ桜木さん」

「名付け前なのに」


 そうして空に浮かぶ聖域へ向かい、クエビコ神と対面する事に。


「祥那です、宜しくお願いします」


 そうして様々な情報をやり取りし、スクナ様を呼ぶ事に。

 仙薬を飲み、泉で眠り、名付ける事になった。


 竜にはクーロン、大鳥にはカールラの名が付いた。


「賢人君、予備の服出して」

「あ、はい」


 それからまた仙薬を飲んでいると、スクナが花子へ声を掛けた。


『君も飲んで入った方が良い、この神獣達が吸い上げてしまっていたらしいから』

「あらま、はい、お邪魔します」


 賢人も居ると言うのに、御簾の向こうでポンポンと服を脱ぎ捨てザブザブと川へ。

 そうして仙薬を飲むと、眠り始めてしまった。


「あの」

「爆睡っすね。ずっと足りなかったんすかね?」

『うん、膜の相性が良くて吸い上げてしまってたらしい』

『ごめんなさい』

《気付かなかったの、ごめんなさい》

『幼い頃に膜が薄く破れたせいか』


『うん』


 この世界には魔法の膜が有り、魔素が漏れない様にする壁の役割を果たしているのだが。

 花子は幼い頃に薄く破れ易い、珍しい状態だった為に北海道の病院で長く過ごしていたんだと。


「ぶっちゃけ、親に捨てられたんすよ。他の子供も居るし、手間が掛かるからって。それで協会の司祭さんと省庁のさっきの柏木さんに育てられたんすよね」

「それは、良く有る、有名な話なんですか?」


「捨て子はぶっちゃけいます、捨てるのは罪じゃ無いんで。あ、ネグレクトとか暴力はダメっすけど、施設に預けるのは違法じゃ無いんで。下手に自分で育てるより良いって、それっきりらしいっす」


 賢人と宮崎へ行くとなった段階で、初めて聞いた事なんだそう。

 日頃は一匹狼で、柏木としか出掛けないらしい。


「何も寝てる間に」

「良く寝るし良く食うし、タイミングが有ったら言ってくれって言われてたんで。大丈夫っすよ、本人は幸せだって言ってるんで」


「どう、思いますか」

「まぁ、ヤバいのって一定数生まれるし、自分も逸脱した存在には違い無いから仕方無いって言ってて。強いなって感じっすよね、俺も母親が居なくて、ちょっと家庭が複雑だからこそ、身内の一切居ない召喚者様の役に立てるかなって思ってたのに、完敗っすよね」


「それでも、ココで何か不自由は?」


「結婚っすかね。やっぱり、血縁者を見たら遺伝具合とか育ちとか環境とかって見れるじゃないっすか。でも桜木さんは何も無いから、諦めてるって言ってて。あ、一応整形でも遺伝子治療とか可能っすから、あんまりコンプレックスが有るなら変えるのも手っすよ」


 そうして遺伝子治療や科学の進み具合を知り、本気で何故自分が呼ばれたのか分からなくなった祥那。

 花子が目覚めるまで、ひたすら悩み続けた。




 オヤツの時間になり目覚めた花子。


「大変、申し訳御座いませんでした。トイレに行きたいです」

『構わん構わん』

『ちゃんと食べるんだよ、神獣も従者もだ』


『《あい》』

「はい」


 適当に服を着て先ずは魔王の元へ。

 空間移動で何とか助かったが、すっかり冷えてしまったらしい。


「桜木さんも冷えちゃいましたし、立ち寄り湯に行きましょ」

「すみません」

「大丈夫ですよ、行きましょう」


 全員で温泉へ。

 カールラは花子と、祥那は魔王や賢人やクーロンと。


 そうして買い食いや買い物をしながら旅館の部屋へと戻った。


「その魔法、僕も使えるでしょうか」

『ヨグ=ソトースか、アクトゥリアンだろうな』

「あぁ、片方は宇宙人さんですけど」

「その名前、どっかで聞いた様な」


「アクトゥリアン、ですか?」

【はーい!呼びました?呼びましたよね!アクトゥリアンですよー!】

「テンション高いの、動画のままやん」

「外見、チェンジした方が良いっすよ」


【あ、お好みは御座いますかね?爆乳でもガリガリでも何でも変身出来ますよ!】


「大丈夫っすよ、俺は豊乳が好きなんで」


「全て平均で、普通でお願いします」

【はい!】


 花子よりは背も有り、0で見かけるより少し可愛らしいかどうか、平均的な普通の女性の姿にアクトゥリアンがなった。

 祥那は普通や平均はこの位なのだなと感心していた。


「津井儺さん、魔法の事は」

「あ、その、空間移動とストレージを」

【はい!コチラに触れて下されば結構ですよー】


 差し出された人差し指に、人差し指で触れる。

 そうして次は手元のタブレットへ、暫くすると再起動を始めた。


「おぉ」

「動画通りっすね」


 そうして無事に魔法を得ると、魔王がしょんぼりとし始めた。


「もう、お役御免ですかね」

「いや、だとしてもワシらに付けよ、個別に動くかもだし。移動魔法は勿論、ストレージバッグにも限界は有るもの」

「そうっすね、ショナさんが寝てる時に移動魔法が使えるのも便利っすよ」

「普通の、ココの人には使えない理由が?」


「そら便利過ぎるからです、便利が悪い事だってクソみたいな集団も居るので」

「まぁ、そうっすね。科学の進歩が有ったから、そっちだと核が落ちた派が居る感じっすね」


「僕がお願いして、一時的に力を貸して貰うのは」

【無理なんですよー、神々の協定が有るので】


 ただ、世界中が願えば可能性は有る、と。

 それに対して祥那は、一般人の底上げが重要なのかも知れないから、実行してみたいと。


「あぁ、でも法整備や討論が先かと」

「それと他の神様の意見とかも大事っすよね」


 そうして相談するウチにお夕飯の時間になり、豪華な部屋食を頂く事に。

 魔王の分は花子が、そしてカールラとクーロンには仙薬が宛てがわれた。


「罰半分、コチラの都合半分」

「ココ4人までなんすよ、今急に増えるってなると都合がアレなんで」

「あぁ、だそうなので我慢して下さい」

「ご褒美にガトーショコラを差し上げますから、頑張って下さいね」

『《あい》』


 お夕飯が終わると、腹ごなしと買い物へ花子が行くと言い出した。

 神様にお世話になったので、お礼探しだ、と。

 そうして全員でお酒やお菓子を買い漁り、旅館に帰って温泉へ。

 あっと言う間に眠くなり、就寝。


 そして夜中にふと目を覚ました祥那は、次の間で楽しそうにしている花子と魔王に目が行った。

 自分には笑ってくれないのに、魔王には笑うんだなと、メンクイだから仕方無いのかと少し残念に思った。




 そして少し早めに起きた賢人は、花子と交代。

 祥那を起こし朝風呂に入った後、タマノオヤ神の所へ向かい、お礼と共に空間移動やストレージのご相談。


 無制限で無ければ賛成だ、と。


 次にクエビコ神の元へ。


『賛成だ。が、毎回ココへ来るのは不便だろう、コレを持って行くと良い』


 榊の小枝を頂き、朝食へと戻る事に。


「どうでしたか」

「賛成頂けました」

「後は小枝もっすね」

「それは良かった。じゃあ、私は部屋でお待ちしてますが」

『待ってる』

《仙薬頑張る》


 そうしてバイキングへ。

 賢人や祥那が協力し、何とか満腹感を感じられるまでに食べる事が出来た。


「お世話されました、申し訳無い」

「今回は仕方無いっすよ」

「そうですよ、僕の連帯責任でも有るので、気にしないで下さい」


 それから車を返し、省庁へ。




 次の行く先を相談していると、魔王が虚栄心を紹介する事に。

 そうして直ぐにも寸法が図られると、次は祥那が、続いて花子まで。


 そうして今度は出来上がるまでどうするか、花子が大罪巡りを提案し。

 祥那も賢人も同意、先ずは強欲の美術館を回る事に。


「ほぁあああ」

「桜木さん、テンション」

「お好きなんですね美術品」


「と言うか綺麗だの可愛いモノなら何でも、エログロもよし」

『珍しい子だねぇ』


「所詮は内臓じゃないですか、花も人間のも」

『そう振り切るタイプかぁ』


「思春期には男は皆、脳味噌がアレで出来てると拗れてたので」

『ほう、具体的にどう』


「こう、断面図で、綺麗な花に囲まれてる感じ」

『あぁ、実にエログロだ。うん、描かせようかね』


「そんなお金は無いんですが」

『画家の卵の見極めに描かせるだけだから大丈夫だよ、君も何か欲しい絵は無いかい』

「いえ、僕は」

「俺はもう純粋に理想の女の裸婦画っすかねぇ」


『それは危ないねぇ』

「黄金の花嫁、ピグマリオンを知らんのか」

「なん、従者だからって桜木さんみたいに神話ヲタじゃないんすよ?」


「脳筋ダッサ」

「そう言い張れないの知ってるクセになぁ」


「ワシより走るのは早いじゃん、浪速のシューマッハ」

「歩幅差っすよねぇ」


「お前の様に小さいから仕方無い」

「密かに下ネタ混ぜんの止めて下さいって、ショナさんがマジに受け取っちゃう」


「あぁ、イッツ異世界ジョーク、ハハ」

『オー、ベリーナイスボート』

「強欲さん、マジで異世界ジョークに昇華しちゃうんすね」


 ココで祥那は、自分だけが花子に笑って貰えない事に気付いた。

 それからはもう上の空で、それに気付いたのは賢人だった。


「ツマンナイっすよね?」

「あ、いや、違うんです」


「何か気掛かりが?」


「どうして僕には笑って貰えないんでしょうか」

「あぁ、人見知りなんすよ、多分素で人見知り発動してんだと。すんません、言っておけば良かったっすね」


「だけですか?神様達には」

「神話や御伽噺好きで、神様に親近感を感じてさん付けしちゃう方なんっすけど。不愉快なら注意しておくっすよ?」


「いえ、だけなら良いんです」

「あー、一緒に居て気になっちゃいました?」


「いえ、別にそう言うワケでは」

「大丈夫っすよ、マジで人見知りなのと。多分」


「何か有ったんですか?」

「直接聞いたら良いっすよ、何でだって」


「そう、踏み込むのは」

「大丈夫ですって、桜木さーん」


「へい、飽きましたか」

「いえ、大丈夫です」

「まぁ、他にも居ますし、移動しましょうか」

『おうおう、中途半端なんだし、フリーパスを渡しておこう』


 次は憤怒と怠惰へ会いに行く事に。

 そして怪しい組織が無いかとの話で、花子が無色国家の名を口にした。


「偏見を存分に盛り込んで何かするだろうと思える場所は、自分にはそこ位です」

『まぁ、ぶっちゃけ、何かが有れば俺も疑うが』

「怠惰。話しておくべきだろう、ココの状態も」


 魔王が召喚者の元へ来た根拠の1つ、七福神の神が現れなくなった事をこの旧米国が伏せたままにしている事が引っ掛かる、と。


『混乱を避ける為って理由も分かるが、だ』

「何かしらの策略が有っての事かも知れんが、証拠は皆無だ」

「でもそれって、この自治区だけの情報ですよね」


 花子が言う様に、国内だけなら不穏な影は無い。

 そうして祥那には無色国家の情報が開示され、不穏な影が有るとするなら、無色国家の存在している理想郷(オセアニア)では、と。


「ただ、僕が行って、どう確認出来るのか。ですよね」

「それに、俺らだけで守れる自信はぶっちゃけ無いっす」

「うん、無理ぽ」


 一先ずは他の大罪や神様に有ってからと言う事に。

 そうして昼ご飯にと、美食の経営するレストランへ行き、次は色欲のお店へ。




《あらあら、来て下さってありがとうございます、色欲よ》

「おぉ、抱かれたいかも」

「マジで何でも良いんすか桜木さん」


「愛してくれるなら」

《私、好きになったら一途よ?》

「おぉ」

「あの、差別は無いとは勉強はしましたけど」


《でも、男同士はやハードは珍しい方かも知れないわね。そしてもっと言うとノンセクシャルにアセクシャル、昔は生産性が無いって言われて差別を受けてたのよね》

「生めないと生産性が無いって古代思考ですな」

「そうっすよね、そも自分に害が無いならほっとけば良いのに」


 ココでも花子は祥那だけに。

 いや、確かに人見知りらしい。


 トイレに行くついでに見回りをしていると花子がナンパされ、笑顔は皆無。


《あら、気になってるのかしら?》

「いえ」

「いやいや、自分だけには笑ってくれないって気にしてたじゃないっすか」


「メンクイだから、では」

《だけ、なのかしらね?》

「どうなんすかねぇ」


「お疲れ様です、何か」

「ナンパ、見てたっすよぉ」


「羨ましいか、見回り行ってこい」

「やったー」

《ふふ、優しいのね》


「チャンスは万人に有るべきなので。あの、コチラも少し離れますので」

「いえ、僕は別に」


「市井を知るチャンスにもなりますし、何かに気付くチャンスかもですし、どうか遠慮なさらず」

「その、僕はモテ無い方ですし」


「モテたらどうなさるんですか?」


「別に、どうも。それに、お付き合いとかは結婚を前提にするものだと」

「ヤれとは諭してませんよ、一般人として、ココで知見を広めて貰えればと。他では安全の確保が難しくなりますので、機会はそう、与えたくても無理なので」

《大丈夫、私も補佐するから、ね?》


 渋々了承すると、本当に女性が寄って来た。

 そして色欲のサポートも有り、生の恋愛観や結婚観を知る事が出来た。


「あの、もう充分と言うか、ありがとうございました」


「向こうで順調でらっしゃるなら、きっと残っては頂けないでしょうし、子種を残す事も無いだろうと思っています。でもそれで構わないと個人的には思っています、残らなくとも、少しだけこの世界を好きになって貰えたらと思っているんです。そして無事に帰って頂ければと、責任感から残ると悲惨な結果になるそうなので、常に半々のお気持ちで過ごして頂ければと、思っています」


「そう配慮してくれてるんですね、ありがとうございます」


「いえ。なので遠慮せずに要望を仰って下さい、深部に行きたいとか、体験してみたいとか」

「桜木さんが行きたいだけでは?」


「バレましたか」


 冗談なのか半々なのか、笑いながら言ってくれた。

 真面目に考えながら、緊張しながらも冗談を言ってくれていて、自分が応えなかったから笑ってくれなかったんだと気付いた。


 自分も笑わなかったのだから、笑って貰えなくて当然だと、色欲に言われた通りで、笑えばニコニコと笑顔を返してくれた。

 少し捻くれていた部分を反省し、更に本題へ。


「人見知りの他に、何か有ったのなら聞きたいんですが」


「家族が欲しかったんですが、フラれました。あ、処女ですし性病も無いのでご心配無く、それと召喚者様には利用されても良いと思ってますから、お好きにどうぞ」

「僕、そんな風に見えますか?」


「いいえ、全く見えません、心配になる位に見えない。善人に見え過ぎて、逆にそこが心配です、真面目過ぎると潰れ易いって聞くので」

「桜木さんも意外と真面目ですよね」


「良く言われるんですよねぇ、表面上巫山戯てるだけなのになぁ」

「そうやって、もっと素でも大丈夫ですよ?」


「丁寧語もなっとらんとは、と、叱られたく無いのでありますよ。父上様に」


「優しそうな方ですけど、そう厳しい面も」

「冗談、親身に真摯に寄り添うべきだとだけ、ですって」


「何処までが冗談か分からなくなるんですけど」


「津井儺さんの丁寧語が外れたら素を出します」

「家族にも何年もコレで、逆にどう崩せば良いのか」


「見本は周りに沢山居ますよ、ほら、ワシの相手より好みのタイプでも探してて下さい」


「無いんですよ、タイプ」

「ノンセクやアセクかもですか。資料どうぞ」


 自分は本当にそうなのかも知れない。

 想像上、性行為は子作りの為で、キスに至っては何でするのかと。


「した事が無いので、意味が無いと思ってしまうんでしょうかね」

「気持ち良いからですが」


「経験、有るんですね」

「幼馴染の女の子と、幼い時にですけど、キュンキュンして嬉しかったですよ。後はもう、その子は異性愛者なのでそれっきりですけどね」


「僕、失恋も、好きになった事も無いんですよ」

「好きになった相手が好みのタイプだって名言が存在しますし、まだ開花する準備が整ってないだけでは」


「開花ですか」

「マジで良い意味でなんですが、真面目で慎重だからこそ、結婚したい、結婚出来るって確実に思える人じゃないと、好きって自覚出来無いのかもですよ。デミセクシャルってそのジャンルかなって思うんですよ、だから津井儺さんは切っ掛け次第でと思うと、デミかなって。って言うか専門家が身近に」


 そうして色欲の質問に回答した祥那は、デミセクシャルの可能性が。


「分かったかもですけど」

「いや、個人情報ですし、聞かなくても大丈夫です、凄い気になるけど」


「気になりますか?」

「そらもう、興味本位とか色々ですけど。大丈夫なら、もう少しココを回ってみては?」


「それだと、回ったら答えたも同然になっちゃいますよね」

「あぁ、確かめたいなら、ですはい」


「出来たら少女漫画のオススメを知りたいんですけど、確認の為にも」

「あぁ、話のタネになら、コレとかオススメです。それとコレと、コレも、好きじゃないけどメジャーなのはコレですかね」


「好きですか?」

「見るのは何でも、少年漫画も映画も」


「あ、賢人君から家庭の事情を聞きました、言うのが遅くなってすみません」

「いえいえ、まぁ、フラれた理由がそれなのでね。自分でどうしようも無い部分でフラれて、もう良いやって拗ねて、諦めた感じですね」


「今もですか?」

「ですね。だって、好きだって言ったら無条件で子種くれます?無理でしょう、そう言う事ですよ、相手のバックグラウンドが分からないと結婚って無理じゃないですか。その理屈が分かるので諦めました、こう見えて意外と繊細なので、思考を放棄しました」


「でも、いつか誰かが」

「その時になったら考えるので大丈夫ですよ、傷付かないワシなりの対処法なんです」


「そう、カウンセリングとかって」

「勿論、子供の頃から受けてますし、従者用も受けてますけど。会ってみます?ウチのネムちゃんとママに、ネムちゃんエルフなんですよ」


「エルフって」

「はい、長寿のエルフですから、先達の情報が聞けるかもですが。分析もされるかもなので、お任せします」


「お願いします」

「じゃあ、ココで誰かに声を掛けたらご紹介しますよ」


「それなら、柏木さん経由で紹介して貰いますね」

「あぁ、ママの事黙っとけば良かった」




 でも今は日本は夜、翌日に北海道へ向かう事にし、ホテル探しへ。

 そして魔王が評判が良いと聞いたと言われるホテルへ、祥那も安心価格だからとファミリータイプへ泊まる事になった。


「ショナさん、結構話し込んでたっすけど」

「家庭の事情と、結婚観等で。この少女漫画って読んだ事ありますか?」


「あー、それ実写化もして、キュンキュンっすよね」

「この、女性同士のってどう思いますか?」


「あぁ、俺のって穿った見方っすけど、良いっすか?」

「はい、どうぞ」


「人工授精なんすよね、どんなに愛し合っても。でも異性愛って、妊娠するかもとか、それを我慢するとかってスリル満点でスパイスまみれじゃないっすか。だから何か逆に、俺は純粋に楽しめないんすよね、異性愛の恋愛モノって」


「あぁ、ココって未成年の場合は」

「特別に婚約したら可能っすけど、結構厳しいっすよ、先ずは両家が納得して。将来のプランも出して、それも納得して貰えないとダメなんで」


「僕は興味無いんですが、向こうだとそう言う本が有ったなと」

「あぁ、ココだと実話か悲恋なんすよ。未成年に悪影響だし、未成年が利用されない様にって、転生者様が規制したんす。性的な描写が無くても成人指定っすよ」


「そう言うのも、スパイスだと思いますか?」

「そうっすねぇ。余計な事を考えたく無いっつうか、立場とか地位とか、金持ちだからとかって邪魔じゃないっすか。純粋に愛されてるって分かる方が、すんなり楽しめるし、自分に置き換えても楽じゃないっすか?」


「僕だと、向こうでは普通でも、ココだと特別なんですよね」

「そうっすね、だから残りたいって言っても良いんすよ、特別って中々に稀ですし。誰かの特別になるのも、良いんじゃないっすかね」


「正直、小さいのに従者だって事には興味は湧きましたけど」

「でも、残らないなら無理かもなんで、様子見次第っすよねぇ」


 何処かで、好きにしても良いと言われた事が頭に有ったんだと、祥那は思った。

 あの家庭の事情を知るなら、普通は両親が揃っている方が良いだろうと分かるのに、と。




 そうして翌朝になり、ディナータイムのバイキングを食べ、北海道の病院へ。


《どうも、ネイハムと申しますが。何かお悩みでも?》

「いえ」

「ショナさん、取り敢えず話してみたら良いんじゃないっすかね、色々」

「分析させるなら反対、覗かれない自由も有るんだし」


「個人的にとかって、可能じゃないんすか?」

《ご要望が有れば、ですが》

「えー、じゃあ他のエルフでも良いじゃんか、ヤバかったら報告されるかもだよ?」


《そんなにヤバそうなんですか?》

「ううん、そんな気配も何も無いけど」

「まぁでも、お医者さんに個人的に相談が有るかもっすよねぇ」


「ぐぬぬ」

《分かりました、分析をしない努力をします》

「どうっすか?」

「はい、お願いします」


 そうして中庭で話をする事に。

 花子は少し先の野原で神獣と共に爆睡、賢人は筋トレ。


《それでは、何をお聞きしたいんでしょう》

「先達の情報が欲しいんです、どうするべきなのかを判断する為に」


《明確にコレだ、と言えれば良いんですが、過去の事例を見てもバラバラなんですよ。酷いのは子を成して帰還、等も有るので》

「そん、それだけ、なんですか?」


《はい、ただ、コレは人間側からの観測で。実は見えない場所で何かをしたのかも知れませんし、本当にそれだけなのかは。悪魔の証明になるので、難しいんですよ》

「神獣が居ても、ですか」


《はい。それに、国連はありますが、所属していない国も当然ありますから、そこでの事を知る事は不可能で。しかも公式の記録は100年も前ですから、現代に当て嵌めて考えるにしても、無難な答えにしか辿り着けないかと》

「災害か、地球か、ですか」


《流石に第2地球は考え過ぎと言うか、究極の極論ですよ》

「ただ、最悪を想定するなら最適だと思うんです。僕は、ある程度の目標が無いと動けないので、災害と地球の中間って、何だと思いますか?」


《国を揺るがすテロ、ですかね。災害って意外と人が死なないんですよ、特にココでは。ですがそれ以上の人的被害となると、テロかと》

「戦争では無いんですね」


《戦争は公式の国同士のケンカ、それを未然に防ぐのが外交。外交問題は今の所は確認されて無いそうですし、ならばこそテロかと。戦争の前にテロが起きれば、準備もしてませんから大量殺戮が可能。そもそも戦争となれば抑止に各国が動きますから、直ぐに収まるかと》


「上手く抑止が効けば、ですよね」


《私、一応精神科医でしか無いので、もう少し適格者をご紹介したいんですが》

「あ、はい、お願いします」


 そうして磯山五十六と出会い、従者も呼び寄せ相談。

 先ずはテロ対策をとの話になったが。


《ですけど、こう、魔道具等の準備をされた方が良いのでは》

「アレだよ君、アヴァロンを紹介したりマーリン導師をご紹介したらどうにかなるんじゃ無いのかい?」

「ティターニアさんとか居るのかな」

「本当に妖精って居るんすかね?」

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