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この作品には 〔ガールズラブ要素〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

幸福論

作者: 由稀


誰かと幸せになる未来より

不幸せでも


あの子の傍にいたいと願った


幸福論


 

幼い頃から目で追っていたことを覚えている。



あの子の笑う顔が好きで、あの子が泣いていると自分も泣いていた。

あの子の笑顔が見たくて、ずっと笑っていたし、あの子が求めるからいつも手を繋いでいた。

 

「ねぇー聞いてよぉ!彼ったらまたさぁ!」

手を繋ぐことは無くなったが、まだ距離は近いままあなたの声を聞く。


「何?今度はどうしたの?」

聞きたくもない彼氏との話を聞く。あなたが聞いてほしいと願うから。


彼の愚痴を言う唇を見つめる。

私ならその口から幸せなことしか出ないように出来るのに。

今すぐにキスをして、その小さな唇が愛でいっぱいに出来るのに。

 

自分が他人と違うことに気付いたのは中学生の時。

 

「ねぇ、この中で誰がいい?」

見せられたのは男性アイドルの写真。

真ん中で決めポーズをしている人がリーダーなのだろう。


各々皆好きなメンバーを指差していたが、私は指を差せずにこのアイドルには興味がないふりをした。

皆が騒いでいる中心の1人しか見ていなかったから。

 

それから異性に告白をされても何とも思わずにずっと1人だけを思い続けている。


 

「ねぇ!聞いてる?」

「聞いてるよ。」

あなたの言葉は一つも漏らさず。

手を伸ばして髪の毛を撫でる。柔らかい髪の毛。

子供の頃から変わらない。


「大丈夫。大丈夫だよ。」

おまじないのように言葉を言い聞かせた。


それは自分にも言い聞かせる言葉。

 

 

「え?まだノンケに恋してんの?」

お互い下着を脱ぎながら会話を続ける。

「いやいや、ノンケなんて好きになった方が負けじゃん。」

手を振りながら先にお風呂に入っていく。その後を追って湯船に浸かる。

温かいお湯と迎えてくれる相手に体を預ける。


「アタシらは結婚も一般的に認められないんだし、ノンケ好きになるとかそんな無駄な恋煩いやめたらいいのに。」

やめれたらやめている。

やめれないからここまで拗らせて、ここまで苦しくなっている。


会えば苦しくなるから距離を置いた時期もあった。

他の何かで埋めようとした必死にもがいた。


それでも

会えば全て埋まってしまう

固く蓋をしていた

気持ちが溢れてしまう


何度も夢に見る。あなたが美しい純白のドレスに身を包み私の言葉を泣きながら受け取る未来。

 


夜中に起きて、ホテル代を置いて出た。スマホを開いて通知を見る。

あの子からの通知がないことにホッとして、悲しくなった。


きっと彼からの連絡があったのだろう。

あの子が一番に望んでいる連絡が。

 


あの子が幸せになればいいと願う私と

あの子が泣いて私に縋ればいいと祈る私

 

どちらも不幸で

どちらも幸せ



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