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サバイバル  作者: 清 涼
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第二十三章(二)

第二十三章(二)


 もう少しあの場所で休んでいてもよかったか、そう思ったが仕方がない。司は短く吐かれる息を呑み込むと、額ににじむ汗をぬぐった。

「また狭いぞ、気を付けろ」

そう言うと、紀伊也の後ろを歩くジャガーに目をやった。

壁に両手をついて、腰を背後の壁に押し当てると両足が下に落ちないようにぐっと力を込めた。ゆっくり壁を伝って横向きに進むしかなかった。

足を川の中に入れても良かったのだろうが、その深さが分からない。推測するに、決して浅くはなかった。

まるでそこから先は誰も通させはしない、そう言っているかのように壁の幅が狭くなっていく。

「司、大丈夫か?」

「な、んとか・・・。 けど、アイツは大丈夫なのか?」

「うん、何とかついて来てる」

頭を動かすのも困難になって来ると、そろそろ限界で滑り落ちそうになる。

「キツイなぁ ・・・ うわっ 」

「司っ!?」

「はぁ、危ねぇ・・・ あれ? 行き止まりか?」

暗くて見えないが、右肩がそれ以上進まない。少し肘を動かすと何かに突き当たった。

「どうした?」

紀伊也の右肩も司に当たってしまった。

「マジかよ・・・ 行き止まりかも・・・・・。 ここまで来て・・・、っきしょっ、このっ 」

さすがにここまで来て引き返すにはしゃくにさわる。

司は右肘で壁を突付いた。まるでこけかたまりで出来ているように壁が柔らかい。

このまま力で押せば突き破れるのではないかと思い、右肘と右肩でガンガン押しまくった。徐々に手応えが出て来るのが分かる。

「司?」

「ん・・・、何とかやってみる。 あ、そうだ紀伊也、そのままオレを押してくれないか」

「わかった」

「いくぞ、せーのっ」


 ドンっ


かすかに壁が動いたような気がした。

「もう一回、せーのっ」

 ドンっ

ぐぐっと、司の右肘が壁の中に入る。再び肩で押すとやはり動く。

「紀伊也、もうちょっと押して」

紀伊也は言われるまま全身に力を込めて司を押した。


 ぐぐ・・・


二人は歯を食いしばり、今ある力の限り押した。

「うわっっ」

司の悲鳴と共に、パッと明るい光が目に飛び込んだ瞬間壁が抜け落ちた。

ホッとするのと同時に急いで進むと半ば落ちるように足を付ける。

そこは、柔らかく深い緑色をした苔に一面埋め尽くされた地面だった。

司は、はぁはぁと息を整えながら辺りを見渡して目を見張ってしまった。

まるで、幻想の中にいるような光景だ。

果たしてここは現実の世界なのだろうか。自分達はまた違う世界に導かれてしまったのではないだろうか。

驚きと疑いを隠し切れない。

それは後から続いて出て来た紀伊也にも同じ事が言えた。

二人は何の言葉も発することなく、驚愕きょうがくした面持ちで辺りに見入ってしまった。

 不意にキュンキュンという可愛らしい鳴き声が聴こえ、ハッと我に返ると、ジャガーが困ったように顔を覗かせていた。

思わず吹き出してしまった二人は、自分達の右手首から伸びるチェーンを使ってジャガーを引っ張り出した。

ジャガーはブルルっと体を振るうと、何事もなかったように川辺に行き、水を飲み始めた。

そんなジャガーを目を細めて見ていた二人だったが、再び辺りを見渡して息を呑んだ。

鍾乳洞しょうにゅうどうだ」

天井や奥の壁からは乳白色をした突起物がいくつも連なっている。

ドーム型になった天井には小さな丸い穴がいくつか開いているのだろう。そこから照明のように光が降り注いでいる。

そして、自分達が出て来た苔の壁の上の方からは、シダの葉がカーテンのように垂れ下がっていた。

「何だか、True Lake に似ているな」

思わず司は呟いた。

紀伊也もそう思い頷いたが、川の対岸の壁に何か刻まれているのを見つけると司を突付いた。

「行ってみよう」

この場所だけは浅瀬なのだろう。

川底を見ながら川を渡ると対岸の壁の前に立った。

天井からの光で何がそこにいてあるのかが分かる。

「絵だ」

司と紀伊也は、まるで古代の遺跡でも見ているかのように感嘆の息を漏らしたが、何かに取りかれたように、それらに見入ってしまった。

が、とたんに二人は驚いたように息を呑むと目を合わせた。

二人共、おそれた目をしていた。

冷静さを取りつくろっても、互いに無駄だという事が目に見えて分かってしまう程だ。

「これは・・・っ!?」

「司、これって・・・っ!?」

「伝説だ・・・・ 伝説がいてあるっ!」



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