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サバイバル  作者: 清 涼
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第二十章(一)

第二十章(一)


 道なき道は果てしなく続いている。

垂れ下がる草木を避けながら歩いていた。途中、立ち止まっては死んだようにぐったりした司がずり落ちないように背負い直したが、休む事なく歩き続けた。

どれ程歩いただろうか。紀伊也の踏み出す足の力も衰え、息も途切れて来た頃、自分を止めるようにジャガーが体を入れて来ると、思わずぶつかってしまい、立ち止まらざるを得なくなってしまった。

グルル・・・ と少し歯をくジャガーに紀伊也は仕方なく司を降ろすと、自分も倒れるように座り込んでしまった。

 ふぅ と大きな息を吐くと空を見上げた。

高い木々の向方に青空が見える。

『オレ達は何処どこに向かって歩いてるんだろう』

以前司が口にした言葉を思い出す。

実際紀伊也自身、どこに向かっているのかも分からない。『聖なる森』とは伝説の中に存在する森なのだ。今、自分がそこに向かっているとしても本当にそれが存在しるのかも分からない。

しかし、紀伊也は何を信じているのか分からないが、今は何かを信じてそこに向かっていた。

「本当にあるのだろうか?」

思わず呟くと、隣で意識なく目を閉じて眠っている司を見下ろした。

 余り休んでもいられない。しかしそれでも一時間くらいはここに居ただろうか。

紀伊也は立ち上がると、再び司を背負って歩き出した。

高い木々が立ち並ぶ広場とは違い、木々の隙間を埋めるように濃い緑の植物が覆っている。まるで幾重いくえにも重なったカーテンのように行く手をふさいでいた。

 ザザザ・・・

紀伊也が片手でそれらを避ける度に植物の重なる音が響き渡る。

時折聴こえる獣や鳥の声が、それに反応しているようでもあった。

 はぁ はぁ はぁ ・・・

紀伊也の吐く息も次第に荒くなって行く。

「あとどれ位だ?」

空を見上げて、それが昼間の太陽の明るさでない事に気付いた。ここで日が暮れてしまえば、今夜はここで過ごさなければならない。せめて、どこか広けた所で休みたいものだ。

次第に紀伊也の歩く速度も増した。

だが、目の前に立ちふさがる大きな群れをき分けながらでは、それに掛ける力も倍になる。ましてや司を背負っているのだ。

何度か立ち止まっては司を背負い直した。

突然、前を歩いていたジャガーが立ち止まった。

「どうした?」

見れば、目の前には見た事のないようなシダの群れが垂れ下がっている。

「まさか道を間違えたのか・・・!?」

一瞬息を呑んだ紀伊也だったが、今更引き返す訳にも行かず、ジャガーの前に出ると、思い切ってそれをまくり上げた。


 !!


オレンジ色の空が目の前に広がった。

思わず目を細めた紀伊也に安堵あんどの色が広がる。

その視線の先には、雄大な草原が広がり、その向方にまるで湖のようなアマゾン川が見えた。

「司、着いたぞ」

ゆっくり司を下ろすと、そっと寝かせた。

青白く生気のないその顔を見つめると胸が痛む。そっと手を取ってみると氷のように冷たい。

 本当に生きているのだろうか

普通の人間ならば当に命は絶っているかもしれない。

紀伊也は自分の指先にかすかに感じる脈の音に、今は祈るような気持ちでいっぱいだった。



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