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社畜男と魔法少女  作者: 阿部ンタドール
3/3

社畜と少女。

 1分くらい経っただろうか

俺と少女は瞬きもせず、お互いを見ていた。


なんだ…誰だ…天使か?それとも死神…?

俺はパニック状態の脳を出来る限り回転させているが、未だ正体がつかめずにいた。

なぜそう思うか。それは少女があまりに美しすぎるからだ。まるで人形を見ているような、本当に人間だろうかと疑問を抱かせる顔立ちであったからだ。



ふと少女が瞬きをし、少し手を動かした。

と同時に、俺の金縛りにも似た硬直が解けた。


「うぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」


成人男性とは思えない叫びをあげてしまい、尻餅(しりもち)をついてしまった。

その叫びを聞いたと同時に少女もビクッと肩を震わせた。

少女は恐怖したような眼をし、その眼に雫が浮かぶ。そして少女は俺と反対側に少し倒れた。



それを目の当たりにした俺は、女の子を泣かせしまった罪悪感ににた感情が芽生え、恐る恐る立ち上がる。

少しづつ歩み寄ると、それに釣られ少女は少しづつ後ろに下がる。

これ以上近づいても少女を怖がらせるだけだと悟り、意を決してその場で話しかけてみる事にした。



「あの…えっと……大丈夫ですか…?」


日本人っぽくない彼女に果たして日本語が通じるか、そもそも本当に人間なのか定かではないにしろ話しかけてみなければ始まらない現状だ。

少女が目を逸らし少し口を開け少し考えているような様子が見て取れたので、返事を待つことにした。


そうして少し待つと、少女はゆっくり深呼吸をしてこちらを見た。

そしてゆっくり再び口を開き———


「えっと…大丈夫……です…?」


何故最後疑問形?と思ったが、それよりも言葉が通じたことに安堵(あんど)した。

もし、言葉が通じなければどうしようもなかった。そう考えていると少女は再び口を開いた。


「ほんとうにごめんなさい…」


最初は謝った理由が失礼な態度をとってという事かと思った。いや、俺の方がすごい失礼でみっともない態度であったが…


「えっと、俺の方こそ(おどろ)かせちゃって申し訳ない」


パニック状態だったとはいえ、俺があんな態度を取られたら正直へこむ。

なんて考えていたが、少女は再び目から雫を流した。


「そうじゃなくて…えっと……」


そういいながら立ち上がった少女。身長は150センチってところであろう。

そしてその姿にふと、見覚えがあった気がした。

数秒考えていたらフラッシュバックのごとく記憶が(よみがえ)る。事故が起こるきっかけになった少女である。

思わず「あ…」と口から声が漏れると少女は更に涙を流してしまった。

このままでは何もわからないので、少女を(なだ)めて話を聞くことにした。





車の後部座席に500ミリリットルのペットボトルのお茶を箱買いしておいてあったので、そこからお茶を

2本出し、一本を少女に渡した。

先ほどより多少落ち着いたであろう少女は受け取るのを躊躇(ためら)ったが、俺が微笑みながら小さく(うなず)きながら渡したら少女も小さく頷きながらお茶を受け取った。

俺もお茶の蓋を開け、お茶を飲む。この景色を見ながらかつ、美少女と飲むお茶…たまらねぇぜ。


などと考えていると少女も少しずつ冷静になってきたのか、口を開くようになった。


「お茶…ありがとうございます。 私の名前は———。」


そういうと少し言葉を詰まらせ、息を少し吐いてから再び話し始めた。


「———ミカです。」

「あぁ、俺の名前は三浦寮だ…です。」


一瞬ため口になりかけたものの、いくら自分より年下に見えたとしてもため口というのは良くないのではと思い、敬語を使った。


()()()()さんですね。」

「いや、申し訳ないです。『()』の部分は要らないです」


苦笑いをしつつ、誤解を解く。


「あー…ごめんなさい。三浦寮さんですね。」

「謝る必要ないですよ。その俺が伝えるの下手だっただけなんで…」

「いや、でも…」


と申し訳なさそうな表情をするミカに対し、俺はとりあえず笑って誤魔化すことにした。

するとミカさんは少しホッとした様子だ。


「よろしくお願いします。寮さん!」

「おう!よろしくミカさん。」


笑顔で名前を呼んだミカに対し、俺はデレてしまった。

…だってしょうがないじゃん!可愛いんだもの!みうら。なんて、みつを風なことを考えていると、彼女の眼は再び悲しそうなものへと変わった。


「———本当にごめんなさい。こんな事になってしまって…」


俺は路上に飛び出してしまった事に対しての謝罪だと思ったが、俺が話すより早く更に言葉を続けた。


「けどもうこうするしか…()()()()()()()寮さんを助ける方法がなかったんです。」


俺は一瞬何を言われたのか理解できなかった。そして声も詰まってしまっていた。

小さく深呼吸をしながら、頭を働かせた。『()()()()()』というとそれは場所を指す。


つまり今現在いるこの草原のことだ。彼女は何者なのだと混乱と少々の恐怖が顔に出ていたのだろう。

ミカはそれ俺の表情を見ると目を(そら)らしながらこう告げた。



「この世界は寮さんがいた世界ではありません。私は寮さんが居た世界でいう『魔法使い』というものです。———私は()()()()()に追われていて、寮さんが居た世界とはまた別の世界から来たんです。」

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