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妖話舞闘会  作者: 風紙文
3/9

初舞台

謎の声が聞こえなくなってから暫く。マネッチアは変わり映えのしない舞台を歩き続けていた。

どこまでも続いていそうな平坦な場所、足に感じる地面だけはあるが、壁や天井というものがあるのかも分からない程に広い。

そうして思うことは、一つ。

(こんだけ開けた場所なのに、何でさっきから誰にも会わないんだ?)

ブトウカイのルールを聞くに、他にも参加者がいるのは当たり前な筈。

それなのに、見渡す限り誰も見つけられていなかった。

(まぁ、歩いてればいずれ会うか)

顔が向いていたからという理由で歩いていた方向へと更に進むこと、約5分。

ついにマネッチアは対面することとなる。

この場所に来て初めて出会った人は、狩人のような姿をしていた。

鳥の羽がついた帽子、動きやすさを意識した布製の服、左肩から斜め掛けされた筒には何本もの矢が収まっており、手にはそれを放つ為の弓を持っている。

その時、


『舞台が整いました。これより開始となります』


どこからか声が聞こえてきた。前に立つ狩人にも聞こえていたらしく驚いている。

声は続く。


『今回のルールは的当てとなります』


すると2人の後ろに的が現れる。木の棒の先に30センチ程の丸い的がついたシンプルな物だ。

「えぇ……不公平だ……」

思わずマネッチアは声に出していた。それもそうだろう、相手は狩人、弓の使い手なのだから。


『先に相手の的を全て落とした方の勝ちとなります』


的の数は十個、2人の後ろに五個一列で二列並んでいる。


『それでは、初めて下さい』


それだけの説明で開始となった。

先に動いたのは、やはりというか狩人。

「悪いな、運が無かったと思ってくれ」

矢を構えて弓を引き、狩人から見て右端の的に狙いを付け、放つ。

放たれた矢は狙い通りの的を撃ち抜いた。

「おぉ、流石」

「この程度容易い、動かない的なんてまさにただの的だ」

煽てられて当たり前な事を言ってるなとマネッチアが思う中、狩人は次の矢を弓にかけ、

「このまま10本で終わらせてくれる」

放った。狙いは撃ち抜いた的の隣の的。遮るものも無く矢は的へと向かって真っ直ぐと進み……

「それは、ムリですね」

的に当たる寸前、何かがぶつかり矢は的の上を掠めていった。

「今、何をした?」

「ちょっとした投擲ですよ」

マネッチアが持っているのは10センチ程のマッチとしては大きさな物。それを3本程持つと、

「こんな風、に!」

正面へと投げ付ける。真っ直ぐと飛び狩人の上を通り抜けた投擲マッチは3本とも的へ命中、的を粉々にした。

「ほぉ、対した腕前だ。しかしこちらも負ける気はない!」

狩人は矢を放つ、今度は的を射抜いた。

「まだまだ!」

対してマネッチアもマッチを投擲。見事命中し、的を破壊する。

それからもお互いに3枚ずつの的を破壊し、共に残り5枚となった。

両者互角に近いこの状態、しかしここで、転機が訪れる。

(流石に手投げじゃ、この先はキビシいか)

一つ奥の列になるとマネッチアの投擲では威力が足りないようで、命中はするも的の破壊にまでは至らず、地面には沢山のマッチが散らばっている。

「どうやらここまでのようだな」

狩人の矢は少し奥の列でも構わず的を破壊する。これで残りは5対4。

「……えぇ、ここまで、ですね」

マネッチアが鞄から新たに取り出したのは、1メートル程のマッチ。

今までの物とは大きさから異なるのだが、その用途も少し違っていた。

「準備は整ったんで、終わりにさせてもらいますよ」

先端を地面に向けると、勢いよく地面に擦り付ける。

するとやはり、マッチのように火が灯り―――


地面に散らばっていたマッチにも火が付き一斉に燃え盛った。


「な!? どうしてマッチが!」

「考えてる場合じゃないと思うけど?」

最も火が強いのが、マッチが沢山ばらまかれていた狩人側の的の下。

細かなマッチの火は炎となり、更に燃やすものを求め集ったのは的を支える棒であった。

「マズい、このままでは!」

慌てる狩人を余所に炎は棒を伝っていき。

そして……


バキバキバキ!!


大きな音を立てて全ての棒が、地面に広がる炎の中へと落ちていった。

今回のルールは、先に相手の的を全て落とした方の勝ち。つまりは、


『そこまで、勝者マネッチア』


マネッチアの勝ちとなった。

「まさか、そんな方法があったなんて……」

狩人はその場に膝を付き、敗北のショックに陥ろうとしていた。

1メートルマッチの火を消し、鞄に閉まったマネッチアは狩人に近付いていき、去り際に一言。

「悪いな、運が無かったということで、一つ」

マネッチアはその場を後にした。

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