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妖話舞闘会  作者: 風紙文
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ようこそ

そこは暗いようで明るく、狭いようで広い場所。

上を見上げても太陽のような光源が見当たらないにも関わらず周りがよく見え。遮蔽物の無い平坦な地面が続くことで距離感がいまいち掴めない。

そんな場所に、1人の少女の姿があった。

「ここ……どこだ?」

辺りを見回すも周りは何も無い。先程までいた場所との変化に普通なら驚きを隠せない筈だが。

「とりあえず、この格好は暑いな」

少女は冷静に、雪の積もる町で着ていた防寒具を脱いだ。

防寒具の下は白と赤を基調とした、スカートの裾が広がった長袖ワンピース。所々つぎはぎされた部分があり、大事な服なのかと思う。

実際は、つぎはぎすれば着れるという、商人故の貧乏性の証だ。

更に防寒具の下に被っていたニット製の帽子も外すと、ショートボブカットの金髪が流れた。

帽子と防寒具をトランクの中に詰めながら再び周りを見回すも、特に新しい発見は無い。

「何でこんな所に……って、アレが原因か」

先程までを思い出す。

雪の積もる町での商売を終え、路地裏に入っていく妙な子供を追いかけ、そのまま穴に落ちた。

そして気が付いたら、ここにいた。

「参ったな、まだあの町では売れそうだったのに」

それでも、少女は至って冷静だった。

「まぁ仕方ない、このまま次の町でも目指して……あるか? ここに?」

切り替えは早かったが、まだ整理は出来ていないようだ。

「まぁ、探せば多分あるか……」

問題は先送りにすると、トランクを左手に一歩、見たことの無い場所を歩き出した。


『ヨウコソ、ブトウカイノブタイヘ』


その瞬間に声が聞こえてきて、少女は足を止めることになった。

「ブトウカイ? 何だよそれ」

『モジドオリ、ブトウノカイデス』

疑問に答えは返ってきたが、産まれたのは新たな疑問だ。

文字通りと言われても、ブトウカイがどういう文字なのか知らないのだから分かる訳がない。

舞踏会かもしれないし、もしかしたら武闘会かもしれない、実はこの声が間違えていて武道会(ブドウカイ)という可能性もある。周りの雰囲気的に、前者より後者の方があり得ると思えるし。

『マズハ、アナタノナマエヲオシエテクダサイ』

そんな事我関せずに謎の声は話を進めていった。

(……まぁ、いいか。ここを知るチャンスだし)

少女は声が聞こえてくる上の方を向いて、自己紹介を始めた。

「アタシの名前はマネッチア・フラウリー。町から町へ辺り歩く、しがない旅商人ってやつだ」

マッチを主に、様々な場所で仕入れた物を売り歩く旅商人。それが彼女、マネッチア・フラウリーである。

『マネッチアサン、アナタヲコノブトウカイヘゴショウタイイタシマス』

「それはどうも」

招待するならあの案内の仕方はどうなんだ、という言葉をマネッチアは出さなかった。

『ツイテハ、ブトウカイノルールヲセツメイイタシマス』

そのまま謎の声は説明を始めた。

簡潔にまとめると、


・ここはブトウカイに出場する人達が集められた舞台

・最初はこの殺風景な場所だが、他にも色々な舞台が用意してある

・ここで他の参加者と勝負を行い、優勝者を決める

・優勝者は、願いを一つ叶えられる


(何か、どこかで聞いたことあるような気がするな……どこかで何時だったかのお客さんに、確かこんな、優勝者の願いを叶える的なのの、元参加者って人から聞いたんだったか)

等とマネッチアが考えていることを謎の声は知ることなく、説明は続く。


・勝負の方法は様々で、開始前に発表されるまで分からない

・この場所では一切怪我をすることは無く、痛みも少ない

・連続して勝利し続ける等の条件を満たすと、特別な勝負が発生する場合もある

・そして最後に…


『ブトウカイニサンカスルヒトタチニハ、ヒトツダケトクシュナチカラヲカシダシマス』

「特殊な力?」

『キホンハソレゾレノモチモノヤノウリョクデイドンデモラウケド、ソレゾレヒトツダケオカシスルコトニナッテイマス』

「って言われてもな……例えばどんなのがあるんだ?」

『タトエバ、トビドウグノムゲンカ、アタラシイブキ、カセトナッテイルシンタイテキトクチョウノカバーナドデス』

飛び道具の無限化や新しい武器とか、中々に物騒な言葉が出て来たなと思ったが、そういえばさっきも怪我はしないけど痛みはあるとか、直接戦う可能性を示唆していたのを思い出し、やはりブトウカイは武闘会ではないかと考えた。

それと同時に、

「じゃあその、持ち物の無限化で頼む。ここで使い切ったりしたら後々商売出来なくなるからな」

マネッチアはあっさりと決定する。

「でも良いのか? まぁ旅商人として自衛程度の戦闘は出来るつもりだけど、そんなに戦いが得意って訳じゃないこんなアタシを参加者にして」

ブトウカイが武闘会と想定した上で聞いてみると、

『ケンソンハイケマセン。コチラハシッタウエデスカラ』

「……あぁ、そう」

どうやら選ばれたのは偶然だけではないと理解することになった。

『ソレデハ、トクシュナノウリョクトシテトビドウグノムゲンカヲオカシシマス』

すると、マネッチアのトランクが一瞬光った。これで特殊能力が付いたらしい。

『デハ、ブトウカイヲオタノシミクダサイ』

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