去年の友は今日の敵
「何でって俺が言いたいな。どうせあの科学者に雇われたんだろ。けど、今はお前は敵だから容赦はしない」
「俺もですよ、京夏さん」
「昔 悪魔を倒したからって、俺をそれと一緒だと思うなよ?」
「もちろんですよ。共に戦ってるんですから」
…ん?俺は1年前のこともしっかりと覚えているけど、菊葉と共に戦った覚えはないぞ?まさか、ちょっとノーゼアクト王国の騎士団長と廊下で戦った時のことか?あれを共に戦ったとは思ってなかった。
そんなことはどうでもいい。こいつもどうでいい。俺はシルフィーを早く助けに行かないといけないんだ。
「狙撃者は姿を隠してこそ、本当の力を発揮する」
と菊葉は眼を閉じながら言うと、決意をしたようにゆっくりと眼を開け 一発狙撃してきた。勿論さっきまで喋っていた場所から撃ってきているので、クリエイトで障壁を創って防いだ。
しかし、ただの銃弾ではなく、閃光弾だった。さすがに閃光弾を直で撃ってくるとは思わないわけで、意表を突かれた。至近距離で食らったため、両目ともやられた。また慣れるまでに時間が掛かるな。その間ずっと 両目が見えないまま戦わないといけないとは。ハンデということにしておこう。もっともこんな状況でも俺は勝つがな。
まず障壁をアンインストールで消して、クリエイトで日本刀を出した。
「チェックメイトだ」
「は?眼が見えない状態で何が出来るよ?」
菊葉の声はさっき撃ったところとは違う方向から聞こえた。状態変化ノ魔法ですぐに移動したのだろう。
眼が見えないからって戦えないわけではない。むしろ狙撃者は見えない敵と認識しているから別に苦に思わない。
ならば、どうやって戦うか。超音波探知で感知しながらでもいいのだが、魔力が勿体ない。
五感に頼るのが一番いい。眼の次に頼れるのは耳だ。僅かな音でも聴き逃さなければ反撃できる。俺は集中して音を聞き分けた。
俺の左で草が何で揺れる音がした。これはウサギだろう。その直後に右後ろで土が踏まれるような音がした。これが菊葉だ。
案の定、右後ろから撃ってきた。しかし、そこに意識を集中しているからすぐに振り返り、銃弾を刀で切った。…つもりだったが左胸に直撃した。やっぱり振り替えってすぐは切れなかったか。
「超加速!」
もう菊葉の居場所は知っているから超加速を使って、うつ伏せのなっている菊葉の背中を踏み、「じゃあな」と一言 言ってから刀で刺した。
詳しく言うまでもなく、死んだ。その後、昔のよしみがあるから墓は作っておいた。
昔の仲間でも俺の邪魔をするならば殺す。今シルフィーを一刻も早く助けに行かなければいけないと、何度も言っている。
俺は翼を出して、上空に飛んでから超加速を使い、10km先の洞穴に全速力で向かった。空からショートカットする方が障害物がない分 より早く移動できる。
もう少し待っていろ、シルフィー
◆ ◇ ◆ ◇
全速力の超加速を使って移動すること2分掛かった。あの科学者め…かなり遠くまで逃げたな。
で、洞穴に到着した。洞穴の入り口には大きな岩があった。道を塞ぐかのように傾いていたが、別に気にすることなく中に入った。
中は予想以上に広かった。例えるなら学校の教室の2倍はあるだろう。しかし、教室がどれくらい広かったか覚えていないけどな。何せ、96年前の話だからな。
次回…風間博士との激闘