蝶のように舞い 蜂のように刺す
俺も今日は運がついてる。昨日ではなくて今日、敵と遭遇するなんて。空想を早速使える!
そういえばシルフィーは、戦えるのだろうか。武器を持ってないように見えるけど。魔法か?
「シルフィー、戦えるか?」
「勿論じゃないっ!弓を持って…る…はずなのに……ない!」
「何処かで置いてきたのか?」
「あっ!黒服の男たちに壊されたんだった」
おいおい、今まで忘れていたのか?勘弁してくれよな。どうするだよ。まだ魔法が使えるなら 良いんだけど。
「魔法は?」
「…まだ使えない」
そんな口を尖らせながら言ったって、まさか 拗ねたのか!?
「もうコントは良いからさ。Good bye」
風間博士がそう言いながら右腕を挙げると、黒服の男らが一斉に自動小銃を構えた。そして、風間博士が挙がっていた腕を降り下ろす合図で、一斉に銃の引き金を引き、撃ってきた。
俺らは四方囲まれている状況だから逃げることが出来なかった。シルフィーは 手で頭を隠して俺の背後で屈んでいる。
「空想,クリエイト!」
大量の銃弾が飛んできて、銃声で耳が痛くなる。なんとか俺の魔法は間に合ったようだ。何をしたのかと言うと、空想で障壁を創り出したのだ。その障壁は俺を中心に半球体になっている。敵が物理攻撃… つまり、殴ってこなければ この防御は最強だ。
俺が防御していることに気が付いた1人の男が撃つのを止めるよう指示を出した。
風間博士は確認のために、小石を木を盾にして投げてきたが、透明な障壁に当たり、半球体であるため、流れ落ちていく。
銃撃が止んだことに気付いてシルフィーが俺の影から出てきた。
「もう帰りなさいっ!」
「黙れー!!…ふっ、俺はさっき見たぞ。蟻が障壁の中に入っていくのを。つまり、生物は透過する!」
チッ
見破られるのが早すぎる。流石は科学者、着眼点が鋭すぎるな。その通り、生き物はすり抜ける。だから物理攻撃は防げないんだよ。
風間博士が見破るから、黒服の男らが銃を構えたまま、1歩また1歩と近づいてくる。
仕方がない、戦うしかないな。
「クリエイト」
俺は左手に銃を、右手に日本刀をそれぞれ出した。これが俺の戦闘スタイルだ。近距離でも中距離でもどちらでも戦える。これは、空想が使えなかった昨日までの1年間 ずっと考えていた戦略だ。やっと出来たことが嬉しい。
俺はシルフィーを気にしながら、戦わないといけないのか。
まずは、近づいてくる敵を剣で薙ぎ払った。けど払いきれなかった左後ろの敵は銃で撃った。見よ、この完璧な1人連携。その後も巧みに日本刀と銃を交互に使い分けながら、次々と黒服の男らを倒した。その姿は“蝶のように舞い 蜂のように刺す”が相応しいと俺は思った。でも翼は出してないけどな。
粗方俺の周りにいた黒服の男は倒し終わった。まだ狙撃者がいるかもしれないから安心できない。けど、頭である科学者を倒してしまえば、俺らの勝ちだ。
「動くな!動いたらこのエルフの命はないぞ!」
俺の後ろから科学者の男の脅迫が聞こえた。ゆっくりと振り返ると科学者は黒服の男が持っていた自動小銃の銃口をシルフィーの向けていた。
しまった、ちゃんと守りながら戦っていたつもりなのに、守りきれなかった。俺もまだまだだな。
次回…シルフィーの2度目の救出