運がついている日
空には鷹が悠々と舞っていた。俺は完全に右も左も分からないから、この場はシルフィーに任せて道案内をしてもらっている。
人気はまったくない…訳ではなかった。俺は 敵の位置を知るために超音波探知を使った。結果,進行方向の150m先に大人数の反応があった。
「シルフィー、この先に大人数の反応があるけど、どうする?」
「そんな気は薄々してたよ。けど、まっすぐが出口に行くためのルートなの」
迷いの森と言うだけのことはあって、どこからでも前に進めば必ず森を抜けれるってことじゃないのだろう。正解のルートがこの道なら、もし目の前に敵が出てきたら倒すだけだ。
「もう暗くなってきたね。この森の夜道を進むのは、とっても危険だから今日は野宿でもいい?」
そうシルフィーが提案してきた。俺は言われるまで気付かなかったが確かに辺りは暗く、不気味に感じるであろう。吸血鬼や悪魔以外は_。
という事で、ちょっとした開けた空間に俺らは野宿することにした。シルフィーは寝る前に動物たちと会話しているようだった。いや、絶対に会話している。俺には動物の言葉は理解できないからアレだけど、とても楽しそうだった。
◆ ◇ ◆ ◇
__翌日
俺は目を覚ますと、不意にシルフィーの方を見た。しかし、そこにはシルフィーの姿は無かった。
やべぇ…!俺らが寝ている間に襲われることをまったく考えていなかった。
俺は飛び起きたところへ、後ろから声がした。この声はシルフィーだ。
「おはよ~、ちょうど今起きたって感じね」
良かった~、これで一安心だ。シルフィーは手に食料を持っていた。朝御飯を採ってきてくれたのか。助かるぜ。
ん?翌日になったってことは唯との約束の期間が終わったんだな!やっと“空想”を使える。この魔法があるだけでどれだけ助かることか。今日は最高の1日になりそうだ。
俺らは朝御飯を食べてから再び森を抜けるために歩き始めた。
しかし、順調だった冒険は突然終わった。黒服の男らが現れたからだ。しかも、かなりの大人数で。
「ようやく見つけたぞ、ガキ共が」「誰か風間博士に伝えに行け!」「了解」
え?ガキ?いったい誰のことを言っているのやら。ここには俺とシルフィーと黒服の男らしかいないのに。もしかして もしかしなくても、俺に言ったんだろうな。
分かってないな~。仮に俺がエルフだとしても見た目で判断出来る相応の歳な訳ないじゃん。人間とは歳の取り方がまったく違うのだから。ちなみに俺は110歳な。けど見た目は16歳くらいなんだけど。シルフィーは何歳だろうか。見た目は14~15歳くらいに見えるけど…。女子に歳を聞くのは失礼だな。
「ねぇ!誰がガキですって?少なくとも君たち人間よりかは、はるかに年上よ!…135歳なんだから…」
え?最後の方 小声で聞きにくかったけど135歳って言ったよね?俺よりも25歳年上だったのか…!そして、年齢を自分から言っちゃうんだ。
「それは良いことを聞きました。人間とは違う歳の取り方も新たに研究テーマに入れましょう」
そう言って木の影から出てきたのは白衣を着ていて、背中には大きくもなく、小さくもない機械を背負った男性だった。恐らく、“風間博士”と呼ばれている人間だろう。
「貴女も親と同じように研究材料にしてあげましょう。…ついでに隣にいる白髪の貴方も」
「言っておくけど、俺はエルフじゃないからな」
「は?じゃあ何だ、悪魔か?」
「ざんね~ん。正解は吸血鬼でした!」
「まだ生きている奴がいたとは…、運がついてる。吸血鬼について研究している科学者がほとんどいないから、発表したら俺は賞される…!」
科学者の頭の中では吸血鬼を雑魚が何かだと思っているのか?考え直してほしいものだ。
次回…人外VS人間




