狂気の吸血鬼
立ち上がろうとした瞬間また、さっきのボロ男が目の前に立っていた。その目は赤く歯は吸血鬼のような小さな八重歯が生えていた。
「さっきからうぜぇんだよ!」
1発ボロ男の顔面にパンチをお見舞いしてやろと思い殴ったのだが、逆に殴られ地を叩きつけられたように倒れた。ボロボロのくせに腹立つな。
俺には興味がないかのようにすぐにシルフィーの方に顔を向けた。
「ひっ…!」
「…血ヲヨコセ」
「そうはさせねぇ」
俺はボロ男の足首を強く掴んだ。死角だから反応に遅れただろ!そのまま立ち上がると同時に掴んだ足を上に持ち上げ転倒させると、思いっきり腹を蹴り飛ばすと、その勢いで吹っ飛んでいった。
「何なんだよ、アイツ」
「京夏大丈夫なの?」
「俺のことは別に気にするなって」
「また来るかもしれないな」
念のため刀を空想で出しておく。どっからでもかかって来い!いつでも相手してやるぜ!
…とは言ったもののなかなか戻ってこない。思いっきり蹴り飛ばしたせいで死んじゃったのか?いや、だけどボロボロだったとはいえ明らかに吸血鬼だ。それにあの速さだから一瞬も油断できない。
「くっ」
「こ、来ないね。今のうちに逃げた方がいいんじゃない?」
「いやー、参ったな〜」
「誰だ!」
突然正面の木の陰から現れたのは、さっきのボロ男と同じ服装をした男だった。
しかし、先程とは比べ物にならないくらい生まれ変わった気がする。同一人物だよな?
「僕はグラファスというものだ。君たちさっきは失礼したな。お腹が空いて狂っていたみたいなんだよ」
「狂ってたの?」
「そう、お嬢ちゃんにはちょいと怖い思いをさせてしまったかな」
「今は?」
「は?男と話す気は無いから黙っててくれ」
なんだアイツ。心底腹立つな。もう1発ぶっ飛ばしてやろうか。
「今はもう大丈夫なのですか?」
「あぁ、もう平気さ。さっきそこで血を飲んできたからな」
「だ、誰の?」
シルフィーもうそれ以上は聞かない方がいいと思うぞ。血腥い話になると思うから。
「これ」
そう言ってグラファス(ボロ男)が手を前に突き出した。その手にはまだ血がダラダラと流れている真っ白だったはずのウサギが握られていた。
シルフィーの顔を見なくても何となく察することが出来た。きっと、両手を口に当ててボロボロと涙を流している。
「あー、ごめんごめん。エルフにとって動物は友達同然だったね」
「それが分かってるなら――」
「だから男と喋るつもりはないってゆーの。でもまぁー、このままじゃあばつが悪い気もするからいい事を教えてやるよ」
「?」
「と言っても俺も風の噂というか伝承みたいなものなんだけどな。たしか『最古の木に眠る、地,水,火,風,空が示す5つの世界に光輝く星を隠さん』ってやつ。じゃあな」
「それってどうゆー……」
聞こうとした時には既に目の前から消えていた。何だったんだ?
それよりも今はシルフィーだったな。
「大丈夫か?」
「あいつめ……!」
違う違う!え、シルフィーって怒るとこんなに人が変わったようになるのかよ。恐ろしい…
「シルフィー 一旦落ち着け」
「そうだね」




