消えた努力のお金
エリーたちとは別れを告げ、今は宿屋に戻ってきた。
今日の仕事の報酬は20マインだった。これで100マインまで溜まり、目的を達成した。とは言っても目的は85マインだから15マイン多いんだけど。けど、お金が多いことはいい事だな。シルフィーに何か買ってやろう。何が喜ぶかな?
そんなことを考えつつ眠りについた。
◆ ◇ ◆ ◇
__翌日
「おはよう、シルフィー」
「うん…おはよー」
まだ眠たそうな仕草をするシルフィーは、カーテンを開けると背伸びをした。
「そういえば、85マインは溜まったんだよね?」
「あぁ、昨日の仕事でな。むしろお釣りまで戻ってくるくらいだぞ」
「じゃあ早速行こ?」
「待て待て、まだ店は開いてないだろ。早朝だぞ?」
「…そうだね。さきに朝ご飯でも食べてよう?」
宿屋で提供されている朝食を食べることにした。たくさんのパンとサラダ、ドリンクなど洋食の朝食だった。
お代わりが自由という点でシルフィーは大喜びしてパンをたくさん食べてしまって、作るのが間に合わなくて品切れになってしまった。すると今度はサラダに目が移動してしまったのでそこは止めておいた。もう遅かったかもしれないが他にも客はいるんだ。正直、シルフィーの食欲に他の客も若干引き気味だった。分かるよ。その細い身体のどこにそんなに入るのか不思議だ。エルフっていうのは不思議だな。シルフィーだけかもしれないが。
とにかく食べ終えるとカレー屋に向かった。ちょうど今開店したようだった。
「すみません!偽造の銀貨を1枚払ってしまったようなの。その分のお金を持ってきたので許してください」
「あ?お客さん3日前の大食いの子じゃねぇか。あん時はいい食べっぷりで俺も作って良かったって思ったぜ。で、偽造通貨?そんなもん、見つかってねぇぞ」
「でも…」
「うちの店にはな、偽造通貨を見分ける“マジックアイテム”を備えてあるんだ」
「じゃあ…」
俺はポケットに手を突っ込むと、銀貨は入っていた。もしかして……
「アンインストール」
空想で創った物を解除すると消える呪文みたいなものを唱えると、手の平の銀貨は光に溶けるように消えた。
「マジかよ……」
「あっ、本当に本物だったんだ〜。ごめんなさい、お時間をとってしまって」
「いや、良いんだよ。それにしてもお嬢ちゃんの連れはひどく落ち込んでるな〜。まっ、また来てくれ!」
「はい、ありがとうございました」
絶望だ。本物の銀貨を払ってしまったのか。
「どうしたの、京夏?」
「ミスった…」
「何が?さっきから様子変じゃない?」
俺は休憩スペースの椅子に腰を掛け、頭を抱え込む。シルフィーは心配そうに見てくる。
高々銀貨1枚、されど銀貨1枚だ。
俺にとってはかなり宝物に近い銀貨だった。管理が甘かったのもあるけど、こんな形で無くなるとは思ってもいなかった。首にかけておけばよかったか?いや、そもそも穴がない。
「ねぇ、あの銀貨は京夏のなんだったの?」




