2人の人外は大空へ
まぁー 訂正することでもないな。
こいつらみたいな雑魚には先制攻撃をした方が有利そうだな。勝手な偏見かもしれないけどな。
「設定、超加速!」
「消えただと!」「何処に行った?」「お、お前の後ろだ!」
気付くのが遅いんだよ。3人いるだったら、背中合わせて周りでも警戒するのが普通だと思うけど?
とにかく、俺はこの魔法を使って3人の中で俺から一番遠いところに立っていた男の背後に一瞬で移動した。
ちなみに、この魔法は瞬間移動じゃないんだよ。読んで字の如く、一気に加速しただけだ。けどその速さは瞬間移動に匹敵する程なんだ。だから人間じゃあ、目視すらできないさ。
そして、背後に回ったその人の横腹を蹴り飛ばした。普通に蹴っただけなのに軽く5mは飛んでいってしまった。可愛そうに…。お前がこのエルフの子を襲っていなければ良かったものを。
「この野郎!」
っともう1人の黒服の男が、不意討ちを狙って後ろから殴りかかってきた。俺はそれを避けて手の甲で相手の顔面を殴った。恐らくこの黒服の男ら 軍人かなんかだろうけど一撃で、しかも鼻血を出して倒れた。
「こ、こいつ…!何者なんだ!」
まったく…、いくら俺が吸血鬼だからって怯えてるなよな。心外だわ~。
とか言っているうちに残る黒服の男が1人、敵である俺に背を向けて転けそうになりながらも やられた仲間を置いて全力で逃げていった。
「大丈夫か?」
「助けてくれてありがとね」
「良いって。それよりもどうして、あの男らに囲まれていたんだ?」
「たぶん、私が“エルフ”だからかな?」
なるほどな。今思い返すと このエルフという種族は、普段 滅多に出会わない希少な存在であり、悪魔的な存在からの迫害を受けていたり、悪徳商人の商品としてや科学者の研究材料によく狙われていると言った話を、よく耳にするが本当だったとは。
「あのね…」
「さっき逃げた奴が上に報告したかもしれん。話は場所を変えてからで」
「…そうね」
とは言ったものの、この森については何も知らないからな~。エルフがこの森にいるってことは、ここは森の奥地、“秘境”か?だとしたら、エルフの方がよく知っているはずだ。
「安全な場所…“聖霊樹”の根元とかか?」
「ダメだ。そこってエルフの領域なんだろ?だったら黒服のやつらもそこを捜索するだろうするだろうに」
「そっか~」
「…もう、いっそのこと空から逃げるか」
「空へ?でも私たちには羽なんてないし…」
「大丈夫。少女1人なんて、余裕だ」
そう言って、俺はコウモリのような翼を広げた。その翼を見て、エルフの少女は涙目になっている。
…まさか、まだ俺のことをエルフだと思ってたのか?これはたぶん、そうだな。吸血鬼だってことを説明するのは色々と面倒くさいんだよな~。
「安心して!俺は吸血鬼だから」
「何が、『安心して』よ!きゃー血を吸われる~ぅ!」
「血を吸うならとっくに吸ってるし、こんな説明もしないし…」
ごちゃごちゃ言っていたけど、なんとか納得させて、エルフの腕を掴んで空へ飛んだ。当然この子は叫んでいるけど、空の旅を楽しんでくれ。地球と異世界が融合してもう96年…、この世界には飛行機とか存在しないから、普通は空なんて飛べないんだからな。
次回…黒服の男らの正体が明らかに!