指名された依頼
俺は扉の方まで行き、中に入るように言った。
「入っていいぞ」
「お邪魔します」
「京夏、この人とどんな関係なの?」
変にシルフィーが強く聞いてきた。敵対心なのだろうか?別に悪いやつではないんだけどな。
「…はっ、まさか、私以外の女?」
「何を言ってるか分からんけど、彼女は話をしたいと言っているだけだ」
「何の?」
「それは俺も知らないけど…」
なんだ?今日のシルフィーはいつもとは違う反応をする気がする。
とにかくエリーには椅子に座ってもらった。
シルフィーはお茶を出してくれた。ここは探偵事務所か何かかよ。
そういえば、世界が融合してから探偵なんていなくなったな。そりゃ、世界が変われば生活も変わるってやつか。
「お話というのは迷える子羊を探してほしいのです!」
「どういう事だ?」
「あの、実は主人の家畜の子羊を1匹、私のミスで逃がしてしまったのです。その羊を…」
それってこの部屋で話すことか?ただの宿泊する部屋だぞ。しかも、探偵っぽい話だし。エリーは真面目に話しているが、少し可笑しく思えた。
「そういうのは、冒険者の宿に行ったほうがいいぞ?」
「貴方達を指名しているのです!」
「なんで京夏と私になの!?」
「この件は秘密にして頂きたいからで。貴方達を選んだのはたまたまです」
最後のは余計だな。
別に冒険者の宿に『これをやりたい』という依頼もないし、どうせだから引き受けよう。今の俺らには5マインあれば十分なことだし。
「よし、良いぜ。その依頼引き受けた」
「本当ですか?ありがとうございます」
「でも、結局は冒険者の宿には伝えないといけないぜ?依頼と同時に冒険者も同行すれば、指名された依頼だっていうことが分かる。そういう仕組みだ」
「えぇ、分かりました。では、参りましょう」
「あっ、待って〜」
エリーは勢いよく席から立ち上がり扉の方へ早足で向かう。その後ろで一歩遅れて歩く俺。対してシルフィーは慌てた様子で掛けてくる。
街に出てみればまだ朝早いため、店は準備に追われている。
シルフィーは宿から出る前にフードを被った。同様に耳が尖っているが俺は隠さない。―面倒臭いからな。それにこの服装にはフードは付いていないから。
何処も彼処も店は閉まっているから寄る所もなくぼちぼちと歩いていたら、目的地の冒険者の宿に着いた。
流石は四方から情報が集まるところだ。既に開いていた。24時間やっているのか?コンビニかよ。
俺とシルフィーは冒険者ということだから手際よく“輪証”を見せて中へ入っていく。エリーは冒険者ではないため冒険者の宿の人に話して中へと入ってきた。
俺ら3人は奥の部屋に入り指名式の依頼書を作成した。勿論そこには冒険者の宿の人も立ち会ってのことだ。
エリーは報酬金を書く欄に“20マイン”と書いた。
どうして、子羊を1匹探すのにそんなに報酬を払うのだろうか。それこそ、5マインで良いというのに。
「本当に20マインもよろしいのですか?」
と心配そうに冒険者の宿の人が聞く。俺らからすれば、高い報酬だから嬉しいけど、中立の立場である冒険者の宿の人の心遣いだな。
しかし、エリーはその心配を余所に1回頷いて依頼書にサインをした。
サインをした時点で成立とみなされるから、俺らは依頼通り遂行するだけだ。
「了解。俺らに任せろ!迅速に見つけてやるよ」
「私たちが必ず探してみせるので」
依頼書を手に子羊捜索に出発した。




