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さ~て。 世界の欠片でも集めるか!!__京夏魔王編  作者: 結城 睦月 & まひる
第二章
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鬼畜の所業

「そうは言っても、これは依頼だから」

「知ってるけどぉ…」


これはダメかもしれない。

…と言ってもこんなところで、いつまでもいるわけにはいかない。食料とか大量に持ってきてないからな。


別に俺は心配ないんだけど、シルフィーが、な。


「悪いけど、さっさと終わらせるぜ!」

「…分かったわよ。ここ 空気がとっても綺麗だからもう何処にも行きたくなかったけど、仕方ないものね」

「なんか、嫌味に聞こえるけど?」


シルフィーはにこりと微笑んで、足元の花から探し始めた。

そう。今回の依頼は“七色(ななしき)の花”を1輪ゲットするという内容だった。

シルフィーは綺麗ということで選んだようだけど、実際は“砂漠の中で1本の針を探す”ように“花畑の中から1輪の花を探す”ことだ。

しかも異常な広さを誇る虹の谷での話だから、事は上手く運ばない。

地道に1本1本見ていくしかないな。

2人だと人手が足りないから、分身でも出しておこう。


「クリエイト」

「え?そんなものまで創れるの?」

「そう。何でも創れるぜ。逆に創れない物がないな」


シルフィーはその言葉に驚きを隠せなかったようで、両手を口に当ている。


◆ ◇ ◆ ◇


2時間探しても何処にもお目当ての花がない。

これ以上探していたら、宿に着く時には完全に日が暮れているだろう。そして、夜道は危険だ。相手の命の保証がないからな。


「ないね〜、七色(ななしき)の花」

「そろそろ帰らないとヤバイな」

「何が?」

「いや、何でもない」


だいぶ太陽も傾いてきた。その時シルフィーが一つの提案をしてきた。


一層(いっそ)の事 クリエイトで創っちゃえば?」

「いいのか?それで…」

「こんなクエストは1日で終わらせたいもん。出せる?」

「イメージすれば、な」

「見たことあるんだよね?」

「当然だろ」

「じゃあ お願い」


もう少し違ったお願いの仕方があるだろうに。けど、シルフィーがそれでいいなら創り出すか。

俺は右手を前に出して、空想(ファンタジー)を使用した。


「クリエイト!」


差し出した右手の掌には、薄く光り輝く七色(ななしき)の花があった。


「これなのね!すごく綺麗な花だね」

「こんな事だったら、ここまで来なくても良かっただろ?」

「気持ちの問題かな。あと、これって消えたりしないよね?」

「あぁ。アンインストールで消さない限りずっとあるぞ」


そんな会話をしていると、前方から武器を手にした2人の冒険者がやってきた。


「おいおい、それは“七色(ななしき)の花”じゃねぇか」

「俺らのために探してくれたんだな?」

「これは私たちの花よ!」

「だったらそれを寄越しな」


この2人の冒険者、俺らがここへ来た時に見かけたやつか。

こいつらもこの花を探していたようだ。横取りしようなんて、冒険者として許せんな。

けど、そうは言ってもこれは本物と見間違えるほどの“作り物”だ。ちょっとむかついたから、暇潰しに遊んでやるか。


「随分と横暴だな。とても目障りだ」

「は?何だテメェ…」

「死にてぇのか?」

「俺らは死になくないから、これはくれてやるよ」


俺は手の上にある花をその冒険者に軽く投げると、何の疑いもなく受け取った。


「最初っから口答えぜずに、渡しておけば良かったんだよ」


俺は後ろを振り返りシルフィーに小声で「行くぞ」と言い残し歩き始めた。戸惑いながらもシルフィーもついてきた。


「本当に良かったの?」

「俺の気分を少し悪くさせたことを、後悔させてやる」

「…悪い人」

「おいおい、俺は魔の者だぜ?」


「それもそうだね」とシルフィーは黙ってしまった。

そろそろいいだろうか?あの冒険者からは十分に離れた筈だ。

俺は面白さを堪えきれず、思わずニヤリと笑ってしまった。


「アンインストール」


俺はさっき創り出して渡した“七色(ななしき)の花”を消した。

今頃あの2人は困惑して怒ってるんだろうなと、想像すると笑いが止まらなくなりそうだった。

次回…追いつかれた京夏たち

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