地底の洞窟
シルフィーは自分に酷いことをしてきた科学者のことを気にしているようだった。
「ねぇ 京夏。あれ大丈夫?死んでないよね?」
「死なない程度には殴ったけど?」
「えっ?…でも、額から血を流して倒れてるよ?」
シルフィーはあんなやつの心配までするのか。俺だったら、放っておくけど。てか、俺がやったんだけどさ。
見ると、科学者はゆっくりと立ち上がっている。それを見てシルフィーは無い胸を撫で下ろしている。おっと、失言だ。
「お前ら、絶対許さねぇ。…けど、今戦ったら俺が死んでしまう」
とボソボソと喋りながら、科学者は白衣のポケットからスイッチを取り出した。まさか、まだ科学兵器が?
その予感は的中し、足元の少し後ろに簡易装置の円盤が設置されていた。
「また会う時があれば、それはお前らが研究される時だ」
と言って科学者はスイッチを押したようだ。
そう。気付いた時には時既に遅し。円盤を壊す前に地面に大きな穴が開いた。
落下していく俺とシルフィー。科学者め…今度会った時は、確実にお前が殺してやる。まだ怒りが治まっていないからな。
それよりも、落下している訳だから翼がないシルフィーを助けないと。
俺は背中から羽を出し抱き上げた。上に上がろうと思ったが、何故か穴は塞がれていた。恐らく円盤を壊したのか、取り外したのかそれは俺には分からない。
上に行けないのなら下に降りていくしかない。
「いつまで お姫様だっこしてるの?は、恥ずかしいんだけどっ」
「飛べないだろ?」
「そうだけどぉ…」
「腕を掴むよりかは楽だろ?地面に着いたら降ろすから」
「…」
シルフィーからの返答はなかった。暗くて顔は見えないけど、照れているのだろう。
そして、地面に足が着いたのでシルフィーをゆっくりと降ろした。
暗すぎてさすがに何も見えなかったから、クリエイトで“鬼火”を20個程度辺りに出した。
「辺りを照らすのは良いけど、火が青いと周りが見えにくいんじゃない?」
え?俺はこれでも十分見えるけど、シルフィーは見えにくいのか。俺は指を一回鳴らして、鬼火の色を青から赤に変えた。
降り立ったところは広い空間の真ん中だった。四方には道が続いていた。
「ねぇ、後ろの手枷を外してくれない?」
「了解」
俺は手枷を見た。どうやら、鍵がないと開かないようだ。鍵穴から中の構造を見て、合いそうな鍵を2つ創り出した。どちらかで開くだろう。1つ目…開かなかった。2つ目…カチャッと開いた。良かった、開かなかったらどうしようかと思ったよ。(壊せば済むけど)
「ありがとう」
「怪我はないか?酷いことをされたとか」
「んー、されたけど 特に怪我はないよ」
やっぱりされたのか。けど怪我がないなら十分だ。
さて、外に繋がっている正解の道はどれだ?
「シルフィー、外への道はどれか分かるか?」
「知らないわよ。洞窟には特に何もないし、魔物がたくさんいて危険だから行ってはダメって言われてきたもん」
「誰に?」
「お母さん」
なるほど。言い付けを守っていた訳か。外までは俺が何とかするか。さっきまでの戦闘で魔力をだいぶ消費してきたけど、徐々に回復してるから、まだいけるな。
「設定,超音波探知」
この魔法を使って自分の周囲の洞窟の構造を把握した。どうやら、左の通路が外へ繋がっているようだ。俺とシルフィー(と鬼火)は左の通路に進んでいった。
次回…二人は外に出れるのか?




