脳裏から離れない過去__風間side~回想~
吸血鬼との戦闘の最中だが、ちょっとした俺の昔話をしてやろう。
今から14年前 俺が13歳だった頃の話だ。俺はまだ科学者ではなく冒険者で、3人1組でチームを組んでいた。
近距離で大剣を使いこなす金髪のナルシスト、クリス。中距離から“水ノ魔法”で攻撃する当時の俺の彼女、リンカ。そして後方から二丁拳銃で攻撃し なおかつ二人の指揮をする俺、風間 尚哉というメンバーだった。
その頃は冒険者の間でもかなり有名なチームで実力もあった。
その街の冒険者の宿での1ヶ月の仕事量が断トツで1位だった。
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「おぉい!風間、次の仕事どうする?」
「早くぅ。勝手に仕事決めるよ?」
遠くから俺を呼んでいる、クリスとリンカ。いくら、遠くにいるからって室内なんだから聞こえてるって。けど、勝手に決められるのは困るから俺は急いで依頼の掲示板に向かった。
「出来れば、次こそは簡単な依頼にしない?連続で難しい依頼が続いてるからさぁ?」
何言ってるんだよ、リンカ。俺たちが簡単な依頼をやってしまったら、難しい依頼は誰がやるんだ?
リンカには賛同しにくいな。
「簡単は簡単すぎるだろ!魔獣:化け狐はどうだ?」
俺が口を開くよりも先にクリスが口を開いた。なんだよ、来たところで二人で喋ってるじゃんか。しかも簡単は簡単って当たり前じゃないか。
「あれは嫌。“妖炎”が大っ嫌い!」
「リンカは水ノ魔法が使えるだろ?」
「知らないの、尚哉?妖炎は水では消せないのよ」
「マジかよっ!」
「マジよ。」
リンカは俺とクリスでは態度が全く違うな。
そうだな~。掲示板を見る限りでは難しい依頼はたくさんあった。
「“雪山の白い竜”はどうだ?これはたぶんアイスワイバーンのことだろ?」
「寒いじゃん」
「雪山は寒いよな」
「尚哉、リンカの見方か?そうだよなカップルだもんな」
「羨ましいのか?」
「そうじゃねぇ!!」
不満な俺らを余所にクリスは依頼を受けた。
こうなるのはいつものことだった。
◆ ◇ ◆ ◇
「やっぱり寒いんだけど」
「おい、クリスどうするんだよ。吹雪で前が見えんのだが」
「…俺に言うなよ」
この時期の雪山はより一層寒く、しかも今日は吹雪が吹いていた。
こうも吹雪が強いと見た目が白いアイスワイバーンを見つけるのは難しい。
3人とも目を凝らしながら真っ白な世界を進んでいった。
「なんでこんな時期にこの依頼を選んだんだよ。雪山の状況は冒険者の宿で聞かなかったか?」
「今日は昼から晴れるって言ってたから」
「山の天気は変わりやすいものよ。少なくとも昼までは洞窟で休みたいわ」
「そうだな。洞窟を探すか」
リンカの提案…と言うか希望で洞窟の中で吹雪が止むまで火を囲んで待った。
数十分経って、ようやく吹雪が止んだ。
俺たちは再びアイスワイバーンを探した。さっきと違って先まで見えて探しやすくなっていた。
リンカは自慢するように胸を張っていた。それに対して「お前が晴らした訳じゃねぇ!」と怒っているクリス。
これくらいの喧嘩は日常茶飯事だった。喧嘩するほど仲が良い って言うからな。
この後、悪夢のような出来事で分裂するともとも知らずに__
次回…悪夢の事件




