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夏鶯の空~千年を越える夢~  作者: 星影さき
第十一章 自分の使命
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私に出来ることは

 いまだかつてないくらいに頭をフル回転させていくけれど、悲しいことに立派な言葉が何も浮かばない。


 どうしよう、どうしたらいいの?


 ……ああ、こんなんじゃ、何も変えられない。

 所詮しょせん私はこの程度だったんだ。


 だけど、わかってたことじゃないか。菅原奈都はどんくさくて間抜けで何も出来ないお子様だって。

 どうせ上手くいかないよ。

 一生懸命やったところで、意味なんてないよ。


 頭の中で諦めの声がこだましていく。


 ここから逃げて帰って、碧に謝ろう。

 『私には無理だったよ』って。

 碧のことだから、呆れながらもきっとどうにかしてくれる。


 しょうがないじゃん。頑張ったって、無駄なんだもん。 




――何で…………続けるの?


 頭を支配する諦めの声に混じって、突如過去の言葉たちがしみわたるかのように響き渡っていく。

 その声に、はっと目を見開いていった。


――何でそんなになってまで走り続けるの?



 白黒映画のように、あの時の光景がよみがえる。


 土砂降りの雨の中、ぼろぼろになった猫。

 碧く澄んだ輝く瞳の先にあったのは、空と大地を結ぶような虹。

 諦めることなく前だけを見つめて走り続ける小さな体。



――奈都、俺の後ろに隠れてろ!


 そう言って私をかばってくれたあの背中。たいして身長も変わらないはずなのに、不思議と広く見えるその背中。



――本当に神仏の助けが必要な者たちが祈ることをやめ、良い暮らしをしている貴族のほうが必死に(きょう)を唱えているなんて、皮肉なことだ


 生きる気力を失ったおじいさんと、痩せこけた女の人……



――この大通りはまだ綺麗なもんだが、一歩通りに入れば、そこらじゅうに死体が転がっているし、治安もさらに悪くなる。本当にひどい有様なんだ


 川辺に捨てられた大量の亡骸なきがら……



 あんな悲しい人たちをもうこれ以上増やしたくない。

 決めたでしょ、わかったはずでしょ。

 変えようとしなければ何も変わらないって。

 言葉でわかっても、人に伝えられても、行動にうつせなきゃ意味なんてない。


 変えよう……最初の一歩さえ踏み出せば、きっとこんな私だって変われる。

 こんな怠け者で馬鹿で情けない私でも、誰かのために何かが出来るって思いたい。


 苦しむ京の民に希望の光を届けたいんだ。



 みんなに伝えたいことは何?

 今の私が出来ることは何だ?


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