五粒と三片
皆さま、お久しぶりでございます。
さぼっておりまして申し訳ありません。
もうちょっとスピードを上げて、ラストまで突っ走りたいのですが。
お布団の恋しい季節となりまして、なかなか夜更かし早起きができませぬ。
さて、前半、アガイル宰相(サヤ父)とカヤ辺境女伯(サヤ母)の若かりし
頃のエピソードが。宰相もちょっと気の毒だったのですよ、いろいろ、と。
それから、“優しい女王さま”の過去も出てまいります。これでちょっと
女王さまへのバッシングが減るのかなぁ…?
マルモア王都から北の辺境エルミヤへ至る街道。
今でこそ車が通れるように舗装され、要所に給油・給水施設が整備されている。
また、軍用鉄道が敷設されて後、貨物運搬用鉄道、旅客運送用鉄道と承認され、
人や物資の交流が一昔前に比べると格段に容易となった。
アガイル宰相閣下が若かり頃。
彼が、まだ軍部に在籍していて、将軍になる前の、准将であった頃。
エルミヤといえば“ド田舎”の代名詞、どころか、ほとんど陸の孤島と呼んでも
差し支えない状況であった。もっとも、その地名を知らぬマルモア国民はいない。
北方に広がる高山地帯から異民族の侵入が度々あり、マルモア中央府としては国防上の
要衝となるエルミヤに、事あるごとに大軍を投入しては北方討伐を行っていたのだ。
エルミヤの民にとって…マルモア国軍は必ずしも歓迎すべき存在ではない。
残忍な異民族を討つのは良いが、彼らはしばしば本来友好的で共存している者たちまで
攻撃対象にしたからだ。また、国軍が派手に戦闘を繰り広げる度に、ただでさえ乏しい
農耕地や牧場が荒れてゆく。更には、やれ軍事徴用だと越冬のための備蓄食糧が奪われる。
それから、現地の若い女性に国軍の下っ端兵士らが手を出すという問題も絶えない。
百害あって一利なし…とまでは言わない。が、十害あって一利くらいはあるかも
しれないけれど、なるべく来てほしくない、というのがエルミヤの民の、
マルモア国軍に対する正直な感想であった。
鉄道はもちろん、車も十分にない(あっても難路で通行できないし、給油施設がない)
時代、マルモア国軍が移動や戦闘に多用したのがマガと呼ばれる馬に似た形状の獣で
あった。但し、鋭い牙と爪を持ち、気性も荒いため一般には普及せず、専ら軍用に
飼育されていた。
そんなエルミヤの民にとっては畏怖の対象ともいえる肉食獣マガに跨がり、道なき道を
ものともせずに全力疾走する青年武官がいた。目的地まで最短距離を取ろうと、わざと
街道を外れ、山の急斜面に微かに伸びる仕事道や獣道を辿って進む。
王都と異なり、エルミヤの手つかずの自然は危険に満ちている。
集落にほど近い里山であれば春の山菜、秋の茸と収穫を楽しめるが、わずかにも遠ざかれ
ば狼、熊、虎などの猛獣が「人間さん、いらっしゃ~い」状態でお待ちかねなのである。
そんな危険地帯でも、また、実際に“元人間”の残骸が草むらに散らばっていても、
彼…若きアガイルに一切の恐怖はなかった。
雷のようにマガで突き進む准将を阻むことができるものなど、人であれ、獣であれ、
この世には存在しない。そうして、彼は王都からエルミヤ首府までの行程をわずか
一昼夜にして走破して見せた。
「カヤ、カヤはいるか?」
マガから飛び降り、案内を乞うのももどかしく大声を張り上げる。
如何にマルモア国軍の准将とはいえ、辺境女伯に随分と無礼な態度である。
が、彼に真っ向から逆らう者なぞ…ほんの一握りの者を除いては…いない。
アガイルは応対に出た秘書官の首を締め上げる勢いで、カヤの居場所を聞き出すと、
一目散にそちらへ向かった。彼の進む所、進む所、蜘蛛の子を散らすように人が
逃げてゆく。「准将を見たら全力で逃げろ」という御達が、冗談ではなく、
辺境女伯より発令されているのである。
そうして、ようやく見つけた相手は家臣たちと“真剣に”…豆の品評会を行っていた。
たかが、豆と侮るなかれ。
冷害に強い農作物の栽培と商品化は辺境にとって最重要課題の一つなのだ。
「緊急の用件だ。外せ」
乱入した准将の姿に、カヤ以外の全員が慌てて席を立つ。
これでもアガイルとしては、辺境女伯の側近に対し、多少の配慮をしているつもり
なのだ。本来なら、「お前ら邪魔だ。死にたくなければ、とっとと失せろ」くらい
高飛車に言ってのけるところだ。
彼は、エルミヤ辺境女伯に近づく全ての人間が気に食わないのだから。
広い食堂は瞬く間に人気がなくなり…ただカヤとアガイル二人だけが残された。
「喜べ、カヤ!俺たち“政略結婚”できるぞ!」
喜色満面の准将は目の前の小柄な女性に飛び付き、ぎゅうぎゅうと締め上げ…いや、
抱き上げた。
「えっ?」
訳が分からないという顔のカヤを更に高く抱き上げ、アガイルはその場で
クルクルと回り出す。
「国王陛下が北方平定の布石として、俺を准将から将軍に昇格し、エルミヤ辺境女伯
との婚姻をお命じになったんだ。これで大手を振って結婚できるぞ。
さんざん鬼、悪魔、鬼畜と思っていたが、陛下もたまには良いことをする」
これまでの所業を思えば…鬼、悪魔、鬼畜はむしろお前だろうと、追及したくなる
カヤであった。国王の冷酷非情な命令を実行に移すのはアガイルら直属部下なのだから。
北方軍総司令部総司令官である准将と王家の血を引くエルミヤ辺境女伯爵。
身分がどうのという以前の問題で、互いの立場が違いすぎる。ほとんど対極に近い。
アガイルとカヤが婚姻を望んだとしても相当の困難が予想された。
エルミヤの民は度々自分たちを苦しめた国軍司令官を辺境女伯の配偶者としては
受け入れ難いし、マルモア中央は反逆者を祖父に持つ辺境女伯を国軍司令官の配偶者
としては受け入れ難い。
アガイルは国王より実力を認められ、破格の昇進を果たしたが、元は傭兵あがりの、
出自もはっきりしない男だ。いつ国王を裏切るやも知れぬ…旧臣の一部からはそんな
疑惑すら持たれていた。
しかし、他ならぬ国王の命令となれば、状況は一変する。
辺境女伯は主君である国王の定めた相手との婚姻を拒めない。
下手に逆らえば、それこそ謀叛の意志ありと受け取られてしまう。
准将の方も北方討伐の恩賞ということで、将軍の位と共に、元は王家に連なる姫君である
女性を賜るということであれば否やを唱えることはできない。
「政略結婚、万歳だ!誰も反対できまい。俺たちは、陛下の命令で結婚するのだから。
早速、明日にも神殿に行って誓いを立てるぞ。
政略結婚だから、婚約発表だの式の準備だのは全て省略する。
政略結婚だから、同情されこそすれ、お前を恨みに思うエルミヤの民はいないだろう。
万一、お前を逆恨みする奴が現れたら、俺がぶっ殺してやるから心配するな」
そう巻くし立てるや、不埒にも辺境女伯の胸に手を這わせ、首筋に熱い唇を寄せる。
寝室まで待つつもりはなかった。どうせ彼を怖れて、誰も近づいて来やしないのだ。
「アギィ」
警告が耳元で発せられた。
その時になって、アガイルはカヤの目が少しも笑っていないことに気付いた。
「アギィ、そこに座んなさい」
てっきり自分と一緒に小躍りして喜んでくれるものと思ったのだが。
どうやら彼は、“また”ヘマをして、辺境女伯を怒らせてしまったらしかった。
手近な椅子を引いて座ろうとして更に睨まれ、准将はしおしおと床の上に正座する
ことになった。これ以上、お怒りが増すと触らせてもらえなくなってしまう。
わずかの休暇をもぎ取るのがやっとで、エルミヤには長く滞在できないため、
貴重な時間を無駄にしたくなかった。
「アギィ、貴方、何回“政略結婚”って言ったか覚えている?」
記憶を頼りに真面目に数え出す准将を見下ろして、辺境女伯は盛大に溜め息をついた。
どう贔屓目で見ても「良い人」とはいえない、この男と知り合って6年近く。
エルミヤへの被害を最小限に押さえるため、カヤはアガイルの動向をつぶさに観察し
続けた。その結果、彼が饒舌な割に肝心なところで抜けて…いや、
言葉足らずだったり、目的のためには手段を選ばぬ…というか、時に常識を
ぶっ飛ばした行動に及んだりすることを認識していた。
しかし、認識と許容は別ものだ。
言わなくても分かっているだろうと、何でもかんでも省略されては堪らない。
「私、アギィと結婚するなんて、ひとっことも言ってないでしょ」
准将の顔がさっと強張る。
よもや断わられるなど想像していなかったのだろう。
いや、カヤだって別に断るつもりはないのだ。
だが、先ずは肝心なことを聞け、言いたいのだ。
「だが俺たちは国王の命令で…」
「アギィは、陛下の命令だから仕方なく私を娶るんだ」
「ち、違うっ!」
「辺境だからって私が何も知らないと思わないでね。
都では、王妃さまのご寵愛が眩しいことも、夜を共にする女性が複数いることも
調べは上がっているのよ」
辺境女伯として王都の動静には目を光らせている。
エルミヤへの影響力が大きい准将の弱みでも握れればと探らせてみれば、
出るわ、出るわの女性関係。予想できないことではなかったが、報告書に延々と連ねられた
女性の名に心底、嫌気がさした。
結局、自分もその中の一人に過ぎないと思い知らされるようで。
「誤解だ」
「どこが誤解?なにが誤解?ここで“愛しているのはお前だけだ”とか言われても
全然嬉しくないんだけど」
“愛しているのはお前だけだ”の裏側は“他の女たちは遊びだ”になる。
それを聞いて喜ぶ女の気がしれない。
「…もしここで俺と結婚しなかったら、お前はいずれ他の男と結婚するだろう?」
アガイルが正座したまま、不貞腐れた顔で逆に問い返してきた。
「まぁ、そうでしょうね」
この時、カヤは21。反逆者として処刑されとはいえ、祖父は王弟であった人物だ。
つまり、いかに現王室から煙がられていようと、王家の血筋なのは事実。
しかも、貴族制度が廃されて久しいマルモア王国で、例外的に爵位持ち。
更に若い独身女性。小柄で可愛い(注:口さえ閉じていれば)外見、ときたら、
求婚者はそれなりにいる。
「結婚したら、遠からず子どもができて、家庭ってのを作るんだろう?」
「まぁ、普通はそうでしょうね」
「俺は、カーヤが、俺以外の男と家庭を作るのは絶対に嫌だ」
だったら他に言うべきことがあるだろ!というのは女伯の心の叫び。
「カーヤが、俺以外の男と結婚するなら、俺はエルミヤ全土の制圧に乗り出す」
しかも、卑怯な脅しまでかけてくる。
准将は軍事には天才的に秀でているのに、時々どうしてか、ごく普通のことができない。
「あのね、アギィ。“喜べカーヤ!俺たち「政略結婚」できるぞ”が、求婚の言葉
だったりするわけ?将来、娘でも生まれて、尋ねられたら、そう教えるわけ?」
ようやく、自分が肝心のことを告げていなかったとアガイルは自覚した。
「だ、だが、今更言葉にしなくても全部分かっているだろう?
主君の伴侶だから邪険にはできないものの、王妃なぞ何とも思っていないことも。
都に女が複数いても、全部仕事絡みでの関係だということも。
愛しているのも、結婚したいのもお前だけだということも。
全部分かっているだろう?」
「…全部分かっていたとしても、そこは言葉にしなきゃいけないところだよ」
「…すまん」
カヤが上体をかがめるに併せて、アガイルが正座を解き、両膝立ちになる。
そこで二人の唇がゆっくりと重なった。
「王都で浮気するな、とは言わない。私は側に居られないし。
寂しがり屋の貴方が長く独り寝できるとも思えないし。
但し、本気の女を弄ぶような真似はしないで」
「承知した」
「本当に分かっているの?王妃さまには絶対手は出さないで。
例え、王妃さまが裸で迫ってきても、全力で振り切って、逃げるのよ!」
一度も顔を合わせたことはなくとも、女の勘が告げる。
王妃は本気だと。王の黙認さえ得られれば、早晩にもアガイルを愛人に据えかねない。
「カーヤ、もしかして妬いているのか?」
「ばっ…!」
図星を指されて、身体を離そうするものの、准将にがっちり捕らえられて動けない。
「女の癇癪と嫉妬は醜いと言うが、お前のは大歓迎だ」
「馬鹿っじゃないの!勝手なことを言わないで!」
ジタバタともがくものの、益々相手の腕の中に囲い込まれてしまう。
「心配するな。俺の“女王”はお前だ。お前だけだ」
調子に乗ってきたアガイルはそんな殺し文句を甘く囁く。
「そんな上っ面だけの言葉いらないから。行動で示しなさい」
カヤは誠実な態度をとれと言ったつもりなのだが。
「むろんだとも」
にやりと笑ったアガイルは別の意味に解釈した。
傍らの卓に積まれた麻の小袋を片腕で薙ぎ払い、愛しい女を横たえる。
国王から与えられた休暇は僅か3日。
鉄道も車もない、この頃の王都=エルミヤ間は軍のマガを駆っても通常2日かかる。
それを3日で往復し、結婚までして来いという国王の命令は、随分と無茶で乱暴だ。
しかし、どれほど無茶だろうが、乱暴だろうが、アガイルはカヤを手に入れる好機を
みすみす逃すつもりはなかった。
短い逢瀬に男は滾るような熱い想いを女にぶつけ…ようとして、失敗した。
彼が薙ぎ払った麻袋の幾つかから豆がこぼれ落ち、コロコロと床に散らばり始めたのだ。
「ああっ!アギィ、あんた何てことをするのよっ!」
辺境女伯は容赦なく准将の頭を殴り、卓から素早く身を起して服装を整えた。
「拾って、早く!種類の違う豆が混じったら、品種が分からなくなるじゃない!」
「お前っ…俺と、豆とどっちが大事なんだ!」
明日にも王都にとんぼ返りしなければならない恋人に背を向けて、せっせと床から豆を
拾い始めた女伯に准将は本気で腹を立てた。
「はぁ?何当たり前のこと、聞いているの?豆の方が大事に決まっているじゃないの」
麻袋の口を一つ一つ固く閉めながら、カヤはきっぱりと言い切った。
「冷害に強い豆ができないことには、今年の冬も餓死者を出すことになるわ。
アギィは別に放っておいても死なないでしょ」
後に宰相となるアガイルの、エルミヤに対する嫉妬心はこの辺りから始まることになる。
夫よりも豆が大事、と断言するような妻は、確かに“腹黒”で“計算高い”女だと思う。
国王直属の将である男をいつもその掌で翻弄し、その眼差しで一喜一憂させるのだから。
一方、愛情を言葉ではなく、行動で示せと述べてしまった女伯は深く後悔すること
になる。
例えば。
その後、なかなか世継ぎに恵まれぬ王妃を見かねて、既にアガイルと結婚していた
カヤを、国王の愛人に召し上げようと画策した旧臣一派がおりました。
これを将軍となったアガイルが問答無用で粛清。名家の一つが王都から消滅しました。
そんなのはまだ序の口で。
異民族の起こした反乱で、平和的解決のために自ら陣頭指揮を執っていた女伯が
暴徒に襲われ負傷しました。その挙げ句に不幸にも最初の子を流産してしまいました。
これにブチ切れた将軍閣下はマルモア国軍を率いて、暴徒全員を皆殺しに。
またこんなことも。
エルミヤ大飢饉の最中、幼い娘が攫われ、あわやシチュー用の肉にされそうに
なりました。怒り狂った将軍閣下は人攫いの村に進軍するや、油を撒き、火を放ち、
逃げ惑う者を容赦なく…それこそ年寄りも、子どもも、赤ん坊も例外なく絶命させました。
サヤの子ども時代に父親の影がないのは、ある意味、当然、なのである。
将軍となったアガイルがエルミヤに滞在できる期間は一年を通じてわずかの日数
しかない。そのわずかの時間は…平時であれば、妻と共に寝室に引き籠り
(娘の寝顔だけは見ている)、非常時であれば、苛烈な軍事行動を起こしては、
怒り狂った妻の袋叩きにあい、エルミヤから追い出されるという
…その繰り返しだったからである。
二人が互いを思って、そして二人の間に生まれた一粒種を守って固く秘した故に。
アガイル将軍とカヤ女伯の“政略結婚”の内実を知るものはほとんどいなかった。
*** *** *** *** ***
サヤは不機嫌な表情を隠しもせず、サヴァイラ第二枢機卿からお裾分けしてもらった
林檎をシャクシャクと咀嚼していた。
主神殿併設の果樹園にある林檎は、酸味が強く、あまり生食には向かない。
過熱して加糖し、ジャムなどを作るのに適している。
もっとも、若い女性には珍しく、甘いものが苦手なサヤにとっては好ましい味であった。
シイからの、そして、シイへの思いから逃げるように、サヤは街中の“隠れ家”を離れ、
宰相邸に移っていた。さて、叙爵式を明日に控えて、朝食の席についたものの、食べられ
る物が少ない。
別に屋敷の使用人たちがサヤに意地悪しているのではない。
それどころか、焼き立てのデニッシュだのマフィンだのドーナツだのワッフルだの
プチケーだのがテーブルの上に所狭しと盛り付けられている。
そんな思いやりが重い…要するに全部サヤの苦手なものなのだ。
その中から辛うじて、一番糖分が少ないと思われるマフィンを選んで、手に取る。
もっとも、不機嫌の理由は食べ物ではなかった。
(どうして、この男がいるのよっ?)
向かいの席で宰相閣下が朝食をとっておられるのだ。
軽く両目を閉じたまま、焼きたてのワッフルを召し上がっていらっしゃいます。
ここは宰相閣下のお邸なのだ。
宰相閣下が居て不思議はない。
宰相閣下だってご飯を食べる。
ワッフルを選んだって悪くはない。
だが、しかし…!
(連日王宮に泊まりこみで、めったに帰ってこないんじゃなかったの?
できれば叙爵式まで会いたくなかったのに)
サヤの不躾な視線を物ともせず、宰相は食事を続けていた。
エルミヤでは恐怖の代名詞であるかのような男が、蜂蜜がけのワッフル。
しかも成り上がり者の割には所作が美しく、フォークやナイフが音を立てることもない。
「お前がカリウドを選ぶとは意外だった。あの手の変態が好みなのか?」
そして唐突に始まる不愉快な会話。
その変態を結婚相手に推薦してきたのはどこのどいつだ、と追及するのも馬鹿馬鹿しい。
「まあ、お前の場合、右を向いても左を向いても変な奴しかいないか。
唯一比較的まともなレンがお勧めだったのに、上手くいかんものだな」
宰相の脳内には、某枢機卿や某異種族の姿が浮かんでいたのだが、サヤには
誰のことやら見当もつかない。
「副宰相はあれで結構イロイロ役に立つ男だ。あっさり殺してくれるなよ」
「仰る意味が分かりかねます。自分の婚約者を害したりするはずないでしょう?」
バレバレだろうが、表向きはシラを切る。
「あいつが異民族や異種族を憎むのも理由がある。お前がまだ生まれる前のことだ。
エルミヤで大規模な反乱があり、討伐隊にいたあいつの父親が惨殺されている。
あいつの母がその知らせを聞いて倒れ、1週間後に亡くなっている…腹の中にいた
子も助からなかった。あいつが8つの時だ」
「エディン戦役の時?」
「そうだ」
エルミヤを治める者として知識はある。異種族による最後の大反乱といわれている。
マルモア側では“反乱”と呼ぶが、もともとエルミヤは辺境地帯…国境の確定しない
地域だったのだ。
緊張が高まる辺境地帯で異種族の最後の純血が亡くなった。
マルモア側に殺されたというのが有力説だが本当のところは分からない。
いずれにせよ、それが引き金で大反乱が起こり、双方合わせてで3万人以上の死者を出す
大惨事となった。
「あいつの親父は名家の頭領で、文官としてならともかく、司令官としては無能だった。
見当違いの命令で味方に随分と犠牲を出している。で、部下の裏切りに遭って、
あっさり殺されたわけだ。母親もまた名家出身の、か弱いご令嬢という女で、
夫が戦死した途端、自分も後を追うように死んでいる…根性ないよな。
家も、8つの息子も、腹の子も、何一つ守れずに、自分の悲しみに負けて死ぬとは」
「それで、閣下が副宰相殿を“拾った”のですか?
亡くなった父親に頼まれたのですか…それとも母親に?」
「いいや。傭兵なぞ同じ人とも思っていなかった名家の連中だ。
さんざん傭兵を使い倒しておいて、最後に息子を頼むと言われても、な。
奥方にも泣いて縋られたが、全く食指は動かなかった」
「では、なぜ?」
「リウ自身が頭を下げて来たんだ。
名家のボンボンが出自も知れぬような傭兵隊長の俺に。
たかだか8つの餓鬼でも、奴はこのまま家名頼みではダメになると悟っていた」
そうしてカリウドはアガイルの下で働くようになり、彼が軍を引くに伴い、自分もまた
武官から文官に転じている。娘のサヤよりもずっと長い時間を宰相と共有していた。
「なぜ…そんな話を?」
副宰相殿のお気の毒な生い立ちなぞサヤには興味なかった。
それに、異種族を恨む理由があるからといって、シイにした仕打ちは正当化できないし、
許せない。
「さあな」
宰相の意図がさっぱりだった。気まぐれな情報提供なのか、何か思惑があるのか。
自分とよく似た顔が目の前にある。
前髪の跳ね方まで酷似しているので、サヤは慌てて髪を撫でつけた。
「聞かせろ」
「は?」
「もっと声を聞かせろ。お前の外見は私似だが、声だけはカヤにソックリだ」
「はぁ?」
やはり宰相閣下は謎の御方であった。
「性格はどちらかというとして私似か。母親に似なくて良かったな」
「どういう意味です?」
微笑みを浮かべる努力をサヤは早々に放棄する。頬が引きつり、痙攣しそうなのだ。
性格が宰相似なら今更すぐ人間止めたい!
「カヤは自分勝手で嘘つきな酷い女だったが、お前はだいぶマシという意味だ」
バンっ
朝食の全てが大きく跳ねた。サヤが両手の平で思い切り卓を叩いたからだ。
いっそ卓袱台返しを試みたいくらい腹が立ったが、深刻な飢饉を何度も経験している
サヤには、いついかなる時も、食べ物を粗末にすることなどできはしない。
また、エルミヤは常に貧乏なので…高価なテーブルウェアを叩き割ることもできない。
それくらいなら、ごっそり盗んで、こっそり売ってやる。
「私の前で二度と母さまの悪口を言わないでください。
そんなに母をお厭いなら、さっさと離婚でもなんでもすれば良かったんです。
先王のご命令で、渋々、嫌々、政略結婚なさったのでしょうけど、先王亡き後は
離婚だってできたはず。母さまだって閣下と別れた方がせいせいしたはずです!」
「なんだと」
宰相の機嫌が急降下してゆく。
「いっつも不在で、まったく頼りにならない、とっても女にだらしない、夫なんて。
母さまもとっとと見切りをつけて、さっさと別れれば良かったのに。
エルミヤで母さまを慕う殿方なんて、沢山いたんだから。
再婚相手には全然不自由しなかったはず」
いっつも不在。
まったく頼りにならない。
とっても女にだらしない。
ポンポン投げた言葉の矢が宰相の胸にグサグサ刺さっていく。
実は結構な打撃を父親に与えているのだが、娘は気づいていない。
何よりも宰相を激昂させたのは。
「離婚…再婚だと馬鹿も休み休み言え。この“政略結婚”に、離婚も再婚もありえん!」
「どちらにしろ…母さまはもういない。今更、何を言っても、取り返しがつかない」
「勝手に死ぬ方が悪い!私が王都で一歩も動けぬ時に勝手に死ぬ方が悪いっ!」
宰相もまた拳で食卓を殴り、拍子に立てかけていた杖が転がってゆく。
やはりそれを拾い上げる優しさを見せることが、サヤにはどうしてもできなかった。
ただ、「失礼します」と短く告げ、不愉快な朝食の場から退出するのみ。
もしもここで宰相が「俺を残して死ぬなんて酷い奴だ」と本音を吐露できれば…
父娘の関係も少しは違っていたのかもしれない。
あるいは、“政略結婚”を利用した“大恋愛結婚”でした、とを暴露できれば。
しかし、それができる位なら、ここまで親子関係が拗れたりしない。
何しろ宰相はつい先日まで、娘に本気で嫌われ…るのも通り越し、見捨てられている
ことすら気が付かない、天然お鈍さんなのだ。
食堂を飛び出した途端、サヤの機嫌は更に悪化を辿る。
扉の向こうに予期せぬ人物が立っていたのだ。
(なぜ、アンタがここにいる?)
それは“優しい女王さま”の女官長であった。
いつぞや見かけた悩ましい姿…ではなく、首元までぴっちりとした公務用の衣服を
身につけ、髪も後ろでまとめて上げてきっちりと詰めている。
それにしても、朝から宰相邸に現れるところは、やはり不快に思ってしまう。
「お邪魔して申し訳ありません」
女官長の視線はサヤを素通りして、その向こうの宰相閣下に向けられていた。
「どうした?」
「女王さまのご容体が。急ぎ王宮へお戻りを」
ちらりと二人の視線がサヤに向けられる。
いかにも彼女が居るために、それ以上話せないという態度がありありだ。
「仕度をするので少し待て」
宰相が消えると、サヤは女官長と二人で部屋に残されてしまった。
メイド長が居るので完全に二人きりではないのだが、どうにも気まずい。
何しろ相手は…公的には女王さまの女官長、私的には宰相さまの愛人。
「お疲れ様でございます。どうぞお掛けになってお待ちくださいませ」
取りあえず無難な台詞を口にする。
「お待ちください」
メイド長にお茶を頼み、自分も退室しようとして、思いがけず引き止められる。
「差しでがましいことを申しますが、あれでは閣下がお気の毒すぎます」
どうやら先ほどの言い争いを聞かれてしまったらしい。
あれだけ派手に怒鳴りあっては、致し方ない…とはいえ。
むかつく。
「それでは女官長殿が慰めて差し上げてください」
サヤは、つい、険しい表情を向けてしまう。
相手はそこで、少し疲れた顔をしながらも、微笑んで見せた。
それは決してサヤを侮るものではない。
むしろ小さな子どもに向けるような暖かいもので。
けれども、その後に続いた言葉が大問題であった。
「なぜ閣下と私が時折、肌を重ねるか分かりますか?」
「分かりません!」
サヤの目が泳いだ。頬が自然に熱くなる。
女官長サマ、何てことを聞いてくるんだ!
国民公認のような形で宰相さまは“優しい女王さま”の恋人なのだ。
主君の相手と関係する、のみならず、それを口にする精神構造がサヤには
サッパリである。
「…寂しいからよ」
「え?」
「互いに最愛の者を亡くしているから。相手の心が自分にないことなど百も承知。
ただ寂しいという気持ちだけを共有して、仮初めの関係を結んでは束の間、
互いの身体を温め合うの。まだ若い貴女には理解できないかもしれないけれど」
「最愛の者?」
誰ですかソレ。
寂しさを埋めるためだけの大人の関係なんちゃらとやらはサヤには難しすぎる。
「一つ教えて差し上げる。私の夫は先の陛下が選んだ“4人”の中の一人だったわ。
名家出身で赤茶の髪をした…といえば分かるかしら?」
「女王さまの…?」
自分の推測は間違っていないと思う。けれどはっきり口にするには躊躇われた。
それは王家の禁忌のはず。
「そうよ。先王のご命令で女王さまのお相手に選ばれた者の一人」
「では王女さまは」
「先王の御子ではないわ」
女官長はさらりとトンデモないことを暴露した。
その内実がサヤには今やはっきり読める。
年々病が重くなった先王陛下はご自身の御子を諦めなければならなかった。
代わりに名家出身でご自分と髪や瞳が酷似した殿方を選んで、密かに女王さまに
侍らせたの。言ってみれば、女王の“側夫”として。
「…なんてことを」
サヤの祖父が謀叛で討たれ時、王家は一度大きく揺らいでいる。
旧貴族が依然復権を虎視眈々と狙う中、先王が“自分の子”に拘った理由は想像できる。
当時王妃であった女王さまに複数の“側夫”を宛がったのも実父が特定されて、
その者が将来権力を握るのを防ぐ目的があったのだろう。
“優しい女王さま”は。
サヴァイラ第二枢機卿の言葉が甦る。
同じ痛みを知っていると告げた彼女の苦い横顔が思い出され、胸が痛い。
従兄ではあるけれど、自分の両親を処刑した先王に嫁いで。
身体の不自由な先王と普通の夫婦生活を送ることは難しく。
そして世継ぎを産むために、夫の選んだ男たちに身を任さなければならなくて。
他の男…宰相を思っていたとしても、もちろんそんなことは許される訳なくて。
サヤは“優しい女王さま”が嫌いだった。あの美しい偽善顔に吐き気すらした。
今もその気持ちは変わらない。変わらないけれど…心の底に少しずつ小石が
積まれてゆくように、さまざまな思いが、複雑に波紋を広げては沈んでゆく。
「死期を悟った先王陛下は自分が選んだ4人の男を始末した。
ご自身亡き後、女王さまと王女さまが心配だったのでしょう。
おかしなことに、あれだけ酷いことをしておきながら先王は女王さまを愛してらした。
王女さまのことも…ご自分の娘ではないと分かっていながら最後まで気にかけて
らした。だからこそ…後の憂いとなるものは全て消して逝かれた」
「女官長」
「でも先王陛下のために…夫は意に添わぬ役目を負うことになり、そのせいで終には
毒杯を賜ることになった。幸い?かしら。死にはしなかった。
ただ正気を失ってしまい、閉じ込めるしか方法がなかっの。
5年、そんな状態が続いて、遂に一度も…錯乱したまま、自分が殴ったり、蹴ったり
罵ったりする相手が自分の妻だとは分からぬまま…亡くなったわ。
それでも5年で苦痛から解放された私はマシなのかしら?
カレント少将は10年、壊れてしまった義兄を看ていたのだから」
「レンの兄も?」
「“4人”の内の一人。最後の一人だったけれど先日亡くなったのは知っているでしょ。
だからもう誰も残っていないの」
だからこそ女官長の口も軽くなっているといえる。
ここでサヤが真実を叫んだところで、もはや生き証人となる者はいないのだ。
「どうして…私に話すの?」
「宰相閣下は隠したがっているようだけれど、私は貴女に全てを知って欲しいから。
知った上で王家の血を引く者として、どうすべきかを選んで欲しいの。
私にはもう誰を憎んでいいのだか、怨んでいいのだか…分からないから」
「私の選択は王家のためにも王国のためにもならないかもしれない」
サヤが守るべきはエルミヤの地とエルミヤの民。
そこに火の粉が降りかからぬ限り、女王も王女もマルモア王国も、どうでもいい。
知ったことか、というのが今も変わらぬ正直な気持ちで。
「女官長!」
二人の間に突然割って入った者がいた。
「サヤに余計なことを吹き込むな!」
現れたのはカレント少将であった。
彼もまた遅れて宰相を迎えに来たのだが、女官長の姿を見て血相を変えたのだった。
「騒がしいぞ、レン」
そこに宰相が戻ってきた。身支度を整えた彼は、ほとんど押しつけるように
分厚い茶封筒をサヤの手に押しつける。
「明日の叙爵式の要領だ。全て頭に叩き込んでおけ。私に恥をかかせるなよ」
それに合わせるかのように、女官長も胸元から封書を一通取り出した。
「こちらもどうぞ。叙爵式の心得をざっと認めてまいりました」
「ありがとうございます…?」
サヤは御礼を述べたが、最後が疑問形になってしまうのは、閣下と女官長の親切が
不気味だからだ。
「先に行くぞ」
何か言いたそうなレンを置いて、宰相と女官長は先に出かけた。
サヤとしては少将も一緒に連れて行ってほしかったのだが、思い通りには
いかないものだ。
「サーヤ、これもやる。明日の注意事項だ」
袖口から、紙縒りのようなものを取り出す。受け取るために手を伸ばしたサヤは
そのままレンに引き込まれ、抱きしめられた。
「ちょ…レン!」
「すまんっつ!」
腕の力を緩めぬまま、少将がいきなり謝ってきた。
そのまま頭を下げたので、サヤと軽く頭突き状態になってしまう。
「レン、あんた、私に何の恨みが」
何とか身を離したサヤは、額に手を当てながら少将を睨んだ。
「俺はサーヤが好きだ。サーヤの幸せを願っている。それは本当だ」
謝罪の次が愛の…告白?
相手の言動がさっぱり読めず、サヤは舞い上がる気にもなれない。
「だが、俺はシイやイオとは違う。サーヤのためだけに動くことはできない。
君の幸せを願うなら、マルモア王室から引き離しておくべきなのに、俺にはそれが
できない。君が、もしかしたら何もかもを丸くおさめる鍵となるから」
「何を言われているのかサッパリ分からないわ」
私が鍵?無事叙爵が叶ったとしても、辺境地方の一領主に過ぎない私が?
「助けてほしい」
誇りもなにもかなぐり捨ててレンは本音を漏らした。
「助けてほしんだ、サヤ。全ては叙爵が無事終わってからだが、
マルモアが崩壊するのを 食い止めてほしい。君の力が必要なんだ」
「マルモアが崩壊…?女王さまや宰相閣下がいるのに?」
「閣下が政治を投げた場合、女王さまでは一日と王権は維持できない。
いや、二人のことよりも、もっと深刻なのが第五枢機卿だ。奴が今、一番やばい」
「はぁ?イオが?」
「サヤが副宰相と婚約するなんて言い出すから、完全にブチ切れて暴走している。
5年前の騒乱では奴も乗り気じゃなかったし、宰相閣下が介入したから何とか
なったが、今回の場合、イオ自身が直接動くつもりだ」
「待って、待って、言っていることが全然分からない。
イオが王女さまと結婚するっていう話なら、私は別に止めないわよ」
「天が落ちても、地が割れても、二人の結婚はありえん。さすがに王女が気の毒すぎる。
仮にイオが進める素振りをしても、俺が絶対に妨害してやる」
王女が気の毒って、むしろ第五枢機卿に惚れきっていて、結婚を熱烈歓迎しそうだが。
「…イオは何をしようとしているの?」
悪い予感がする。一刻も早く止めないと取り返しのつかないことになる。
そんな焦りが生まれる。
イオに腹を立てていたはずなのに、忘れたいと思っていたはずなのに、
こうしてレンの話を聞くにつけて心配でたまらなくなる。
「叙爵が終わったら、話すよ」
「でも、女王さまのお加減が悪いなら延期の可能性も」
「それは絶対に、ない。
宰相閣下はどんな手段を使っても明日の叙爵式を決行するだろう。
彼だって明日を待ち望んでいたのだから」
「宰相が…?」
信じられない。
けれど、サヤは自分が今まで見ていたのは宰相のごく一面に過ぎなかったということに、
もう気づいている。第二枢機卿も女王も女官長も皆、サヤの知らない側面を持っていた。
宰相も第五枢機卿も恐らく。
「明日エルミヤ辺境女伯爵が正式に誕生する。
俺はそれを見込んで君に助けを求めている」
「協力するかどうかは約束できない。でも話は聞きます」
「それでいい。ありがとう、サーヤ。明日、王宮で君を待っている」
護衛役を兼ねるのは“婚約者”となる予定の副宰相の役目。少将に出番はない。
そのことで言いたいことは山ほどあるはずなのに、レンは一つも恨みごとを口にしない。
もう一度彼はサヤを抱きしめると、思いを振り切るかのように身を離し、
足早に立ち去った。
「明日」
レンのこと、イオのこと、シイのこと。
心配は尽きないが、感傷に浸る時間は、ない。
宰相と女官長と少将が残したものに眼を通し、サヤはげっと呻いた。
叙爵式を甘くみていたわけではないが、進行次第に宮廷作法に想定問答に、と
サヤの苦手とするものが、これでもかと並んでいる。
頼みの綱のシイは側におらず、多忙なサヴァイラ枢機卿とは明日まで会えない
…自分一人で何とかするしかない。
「勘弁してよ」
涙眼になりながら、サヤは直前の詰め込み猛勉強を行うことになった。
さすがに見かねた執事とメイド長、訪ねてきたナナツが途中から助け舟を出したが、
結局は深夜まで準備にかかってしまった。
そうしていよいよ、エルミヤ辺境伯代理から「代理」の取れる日がやって来る。
宰相閣下
Q いろんな女性と関係しながら、なんで女王には手を出していなかったのか。
A 奥さんに、「本気の女には手を出すな」と言われたから。
意外なことに、そんな約束を守り続けていたりするのです。
宰相閣下
…忙しいのに娘に会うために邸に戻り、朝食を共にしていた訳ですが
親子関係は全然修復できておりません。しかも、どうやらまだ
サヤが甘いものダメなことに気づいていないようで。
いろいろ鈍すぎな父です。
さて、次回、叙爵式はともかく、その後の婚約発表で一波乱。
某少将、某元秘書官、某枢機卿、が黙って指を咥えているわけないですよね。




