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日本滅亡〜日本が大変な事になりました〜  作者: 灰谷 An
第1章・王族の反乱 編
8/28

008:命をかけて

 北翔は外から殺気を感じ取り、刀に手をやりながら屋敷の外に飛び出すのである。

 するとそこにはヒョロッとした背の高い男が立っているのであるが、ローブを被っており顔が見えない。

 明らかにヤバい匂いがしてくる。

 それにしても、どこかで見た既視感がある。



「あっ! 洞窟で戦ったやろうの仲間か!」



 直ぐに思い出した。

 この男は北翔の両親を殺した男の仲間だ。

 刀を向けられながら言われた男は、口角をキュッと上げてニヤけながら「正解だぁ」と呟いた。

 動作の1つ1つに気味悪さを感じる。



「まだ陛下の命を狙ってんのか! 俺がいるからには陛下に、指1つ触れられると思うなよ!」


「暑苦しい奴は嫌いだぁ……早く倒して家に帰るぅ」



 北翔は刀を構える。

 すると男は左右に揺れながら、前に倒れるようにして北翔に向かって走り出す。

 デカい図体にしては動き出しが速い。

 それでも北翔は懐まで誘い込もうとする。


 もう少しで間合いに入りそうになるが、男の腕がローブの中にあるので剣が見えない。

 どう攻撃して来るのかと警戒心を強くする。

 間合いに入る少し前で、ローブの中から突然として剣が突かれるのである。



「危なっ!? そんな図体しておいて速い上に、手足が長い厄介な野郎だな……」



 想定よりも手が伸びて来たので、北翔は急いで後ろに飛び避ける。

 この時、遂に男の手足がローブの外に出る。

 その手足は雲のように長かった。

 図体がデカいのに、速い上に手足が長いなんて厄介な野郎だと警戒心を強く持つ。


 男はニヤッと笑ってから長い両腕をムチのようにしならせ、斬りかかって来るのである。

 それを北翔は上手く刀で捌こうとするが、変幻自在に向かって来る刃を防ぎきれない。

 顔や腕に切り傷がついてしまう。



「厄介な野郎だな……だが、それくらいじゃねぇと面白くねぇよな! テメェに勝って養分にさせて貰う!」


「やれるものならやってみれば良い」



 こんな強い相手と手合わせできるなんて、北翔からしたら強くなるチャンスだと喜ぶ。

 グッと柄を掴んで構える。

 そこから左足を、スーッと後ろに下げる。

 そして男に向かって斬りかかっていく。


 北翔と男は胸の部分で、グッと鍔迫り合いになる。

 均衡は五分と言いたいところだが、男の方がギリギリ勝っているくらいだ。

 しかし洞窟の戦いを経験している北翔は、男の膝部分を蹴って怯んだところを押し切る。


 後ろに蹌踉めいたところを、北翔はトドメを刺そうと斬りかかるのである。

 だが残念ながら男は、無理矢理に剣を振るう。

 それにより北翔の刀は弾かれ防がれた。

 あと少しのところだった。



「(チッ! あと少しのところだったが……まぁ今のは悪くなかった! まだチャンスがあるぞ)」



 北翔は残念がるが

 しかし今のは悪くなかったからチャンスは、まだやって来ると柄を握り直す。

 そこからジッと相手の様子を伺う睨み合いが続く。

 間合いを保ちながら円を描くように回ってから、一気に相手に向かって斬りかかる。


 遠くから見ている秋時陛下と流華ですら、あそこに入っていける人間は少ないと唖然としている。

 それくらい2人の戦いは激しいのだ。

 少しでも油断すれば、どちらかの首が飛んでもおかしくは無いという状況である。



「(どれだけムチのようにと言っても、結局のところは人間の腕だ! そんな無理な攻撃は来ない!)」



 本当に腕がムチじゃないのだから、腕の可動域内で攻撃が仕掛けられて来ると北翔は考える。

 だから警戒はしながらも無理に前に出れる。

 しかし北翔の意識外から剣が飛んできた。

 顔を下に下げる事で何とか避ける事はできたが、こんな軌道を描くなんて北翔は予想していなかった。


 あまりに驚いた北翔は、後ろに数回ジャンプして下がり距離を取るのである。

 あんな予想外な軌道を描かれたら、どうやって攻めたら良いのかと混乱する。

 そこから北翔は男に押されるようになった。



「北翔っ! 逃げてばかりでは勝てないぞ。武士なら腹を据えて覚悟を決めろ!」


「陛下……ありがとうございます!」



 見かねた秋時陛下は、男を指差して真っ向から戦う覚悟をするように叫ぶ。

 それを聞いた北翔は、ジッと男を見て秋時陛下の言葉の真意を理解するのである。

 刀を構えると、スーッと深呼吸して集中する。

 そして男に向かって走り出す。


 男は無造作に腕を振りまくって、北翔を近づけさせないようにするのである。

 北翔はイナバウアーをするように、滑り込んで男の攻撃を避ける。

 すると男の懐に北翔は到達した。

 そのまま掴んだチャンスを逃さないように、男の胸をバッサリと一刀両断した。


 男は胸から大量の血を流し「ゔっ!?」と倒れる。

 仰向けで大の字に倒れた男は、ピクリとも動かなくなり北翔は男に勝利するのである。

 ビビって距離をとっていれば北翔に勝ちはなく、覚悟を決めて飛び込んだからこそ勝利できた。

 北翔は秋時陛下に感謝するのである。




〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜




 北星王国の王宮は石狩郡札幌市にある。

 札幌市といっても広いので詳しい場所としては、もうオブジェ化している〈さっぽろテレビ塔〉の前だ。

 王宮内の王の間に長縄右院卿が部下を連れ、一列に並んでいる。

 しかしそこには泰周殿下の姿は無い。

 じゃあどうしているのか。

 それはここである人物と会う為だ。



「長縄さま、本当に来るんでしょうか?」


「あの男は絶対に来る……というよりも、もう既に肌がピリピリするような感覚がする。近くに来ているかもしれない」



 けっこうな時間を待っているので、本当に約束の人物はやって来るのかと部下の男は疑問を抱く。

 だが右院卿は、その男の気配を察知しているので近くに来ているはずだというのだ。

 するとやはり扉が、ガチャッと開く。

 入って来たのは蓮沼元帥と、その部下であり蓮沼軍の副長をしている《樽田 正嗣(たるだ まさつぐ)》中将だったのである。



「こりゃあ待たせて悪かったなぁ。でも道に迷ったんだから仕方ないよな、樽田も思うだろ?」


「えぇ! 元帥のいう通りです」


「御託はいいから座れ! こっちとて時間が惜しい。引退して惚けている、お主らとは違うんだ!」



 悪びれる感じもなく蓮沼元帥たちは、右院卿の前まで歩いて行って座る。

 その軽い感じに右院卿は、イラッとする。

 しかしここで怒っても仕方ないと右院卿は思って、仕方ないから本題に入る事にしたのである。



「それで浅井の首は取れてるんだろうな? そうでなければ、わざわざ迎え入れた意味が無いからな」


「そうだそうだ! 浅井の首は……どうしたっけ?」


「ちゃんと持参していますよ。おい! 浅井の首を元帥の前に持って来い!」



 蓮沼元帥たちがやって来たのは、浅井の首を獲って持って来たからだという。

 樽田の命令で兵士が箱を持って来る。

 その箱を右院卿の目の前で、パカッと開くと傷だらけになった頭部であろうモノがあった。



「こ これは……本当に首なのか?」


「あぁまごう事なき浅井の首だ。お前たちが、喉の奥から欲しがっているモノだろ?」


「それは確かに、そうだが……これは本当に浅井の首なのか? 顔が判別できないだろ」



 あまりにも酷い有様なので、これが本当に浅井の首なのかが分からないのである。

 これを言われた蓮沼元帥はジロッと睨む。

 威圧感に右院卿は「ひ!」と声を出した。



「俺と戦った人間は、あまりの激しさから見るも絶えない姿になる。だから今回の浅井も同じだ……俺の言葉を信じないのか? ならば確かめてみるか?」


「わ 分かった! お前たちを信じよう!」



 信じられないなら試してやっても良いというが、そんな事をされては困るからと発言を撤回した。

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