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日本滅亡〜日本が大変な事になりました〜  作者: 灰谷 An
第1章・王族の反乱 編
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007:避暑地

 北翔たちは安平町に向けて出発したが、それまでの道のりが半日かかるので、どうして目の前に秋時陛下がいるのかの説明の続きをするのである。

 王弟である泰周殿下が、長縄右院卿と結託して反乱の準備を進めていたところまで話を聞いた。

 なので、そこから話の続きを聞く。



「準備を整えた泰周たちは、俺たちを討ち取る為に動き始めた。それを早めに察知した浅井は、俺の事を秘密の通路を使って脱出したんだ」



 泰周殿下の作戦決行の時、密かに密偵を潜ませていた浅井が事態を察知する。

 それにより秋時陛下は抜け道から脱出する。

 浅井の私兵たちで護衛をしながら城内を突破し、安全圏内に逃げ切ろうとしていた。

 するとそこに予期せぬ男が現れた。


 その男は軍を引き連れており、逃げ切ろうとしている秋時陛下たちの後ろにピッタリと張り付く。

 まさか泰周殿下たちに読まれていたのかと、浅井は驚いて後ろを振り向くのである。

 しかしそこにいたのは王弟軍では無かった。



「あ あの軍は!? ま まさか……」


「どうかしたのか! 追って来てるのは誰だ!」


「あの軍は……《蓮沼 定行(はすぬま さだゆき)》元帥の私兵軍です!」


「なに!? 蓮沼元帥だと!?」



 浅井は軍の正体を目の当たりにして驚く。

 その軍は北星王国において、現在たった1人しかいない元帥の位を貰っている《蓮沼 定行》元帥だ。

 これには秋時陛下も驚きを隠せない。

 後ろを振り返ってくると、2メートルを超える大男が先頭を切って向かって来ている。

 ガハハハハッと笑っているのが、さらに怖さを引き立てているようなものだ。



「陛下っ! ここは私が残りますので、どうか陛下は安全なところまでお逃げ下さい!」


「し しかし! お前を残して行くわけには……」


「そんな事を言っていられません! あの男に少しの猶予も与えてはいけません!」



 この判断は正しい。

 軍人として最高位の位を貰っている男に、少しでも猶予を与えたら不利になるのは確実。

 ならば早めに手を打つのが得策である。

 そこで浅井たちが時間を稼ぐ為に、足止めをすると志願して馬の方向を変える。

 今こそ政治家だが、昔は軍人だった浅井は剣の腕に少しは自信があった。

 だからこそ時間を稼げると思ったのだ。



「行ってまいります!」


「武運を祈っているぞ!」


「ありがたき幸せ! 行くぞ、羽鳥っ!」



 浅井は自分の私兵の将である《羽鳥 浩三(はとり こうぞう)》を連れて突撃して行った。

 その背中を見る事もなく秋時陛下は馬を走らせる。

 ここで生き延びなければ助けて亡くなっていった兵士たちに顔向けできないからだ。

 それから必死になって逃げているうちに、北翔の家の前に倒れたというわけである。

 これが全てだ。



「そんなに大変な事があったんですか……」


「あれ? 確か元帥って引退したはずじゃ?」



 話を聞いた流華は、蓮沼元帥は数年前に引退して領地にいるはずでは無いかと聞くのだ。

 確かに蓮沼元帥は数年前に引退している。



「それは俺も気になっていたところだ。領地で練兵ばかりしていた元帥が、今になって泰周に付く理由が思いつかない……」


「何か理由があるのは明確だな。まぁ今は、そんな事を考えてても分からないよな」



 元帥が横槍を入れて来たのには、何か理由があるが今は考えていても仕方ないと結論つける。

 そのまま3人は安全な経路を使いながら進む。

 普通の王からしたら、こんな道のりはキツイものだが秋時陛下は表情に出さない。

 それには北翔と流華は違和感を感じざるを得ない。


 しかし聞けるわけもなく、たわいも無い話をしながら半日歩き続けたのである。

 遂に安平町に到着した。



「待ち合わせ場所は、どこなんですか?」


「確か目印に……あっあのお地蔵さんが目印だと、浅井は言ってたな」


「アレですか? じゃあここで待つわけですね?」



 秋時陛下の指差す方向に、お地蔵さまがあった。

 アレが目印だというので、北翔と流華は「ここで待つんですね!」と言う。

 しかし秋時陛下は首を横に振った。

 北翔たちは、どういう事なのかと首を傾げる。



「これは待ち合わせ場所への目印なんだ。本当の目的地は、確かこっち側に……あったぞ! ここが待ち合わせ場所の入り口だ!」



 秋時陛下は、お地蔵さまの後ろにある茂みに入る。

 草木を掻き分けていくと、そこには洞窟の入り口を発見するのである。

 これこそが本当の目的地であると言った。

 どうして洞窟が待ち合わせ場所なのかと思いながら北翔と流華は秋時陛下の後ろを追う。


 洞窟の中に入ってみると、奥の方に小さな光のようなものが見えるのである。

 そのまま突き進むと光が強くなり、あそこが外に繋がっていると直ぐに理解した。

 洞窟の暗さで目が弱っていたので、北翔は手で光を遮りながら光に目を慣らす。

 そして目を開く。


 するとそこに広がっていたのは、天井部分が吹き抜けになっている神秘な空間だった。

 この空間の中央には小さな屋敷だが、それにしては豪華な建物が建っているのである。

 北翔は、どうしてこんなところにあるのかと思う。

 この疑問を秋時陛下が説明してくれる。



「ここは元々、第2代国王である憲明が避暑地として使っていた場所だ。それから代々、国王の秘密の避暑地として使われているそうだ」


「ここが歴代の国王の避暑地ですか……まさかこんなところに来れるとは思いませんでしたよ!」



 この空間が国王が代々使っているという事を知った北翔は、周りをキョロキョロして興奮している。

 こんな貴族ですら来れないようなところに、平民以下の自分が来れるなんて思っていなかった。



「王族が使ってるっていうなら……何か金目のものでもあるんじゃねぇか?」


「テメェ! ここで盗みなんてしてみろ。俺がテメェの腕を斬り落としてやるぞ!」


「やれるもんならやってみろよ! こっちは、これで生活して来てんだよ!」



 流華は別の意味で興奮していた。

 しかしあまりにも下世話な話題を口に出してしまったので、北翔が刀を抜いて構えるのである。

 これには流華もやれるもんならやってみろと煽る。

 本当に北翔ならばやりかねない空気感になる。

 それを「そこまでだ、2人とも!」と言って秋時陛下が割って入ってくれた。



「今は喧嘩してる場合じゃないだろ! とにかく中に入ってみようじゃ無いか」


「陛下、すみませんでした……」



 北翔は我に帰って、わざわざ秋時陛下の手を煩わせてしまった事を頭を下げて謝罪をする。

 謝った北翔の両肩を秋時陛下はポンポンッと叩く。

 気にするなという風にやってくれたので、北翔はホッとして刀を鞘にしまうのである。

 

 そして秋時陛下が言うように、3人は避暑地の屋敷の中に入ってみる。

 最近は使われていないと聞いていたが、中身は思っていたよりも綺麗さを保たれていた。

 北翔は何も思わなかったが、秋時陛下と流華は違和感を感じているのである。



「なぁこれって本当に使って無かったのか?」


「あぁ前々代は使う前に亡くなり、先代は使う暇も無かったはずだ」


「それじゃあどうして、こんなに綺麗なんだ?」



 2人は使用していないのに、こんなに綺麗なわけがないと違和感を強く感じている。

 何かあるかもしれないと2人は警戒し、北翔1人だけがホゲッとしてる。

 しかし何かを外から感じ取ったのか、北翔は刀に手をやって外を警戒し始めた。

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