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日本滅亡〜日本が大変な事になりました〜  作者: 灰谷 An
第1章・王族の反乱 編
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005:武士にならないか

 凄まじい速さで向かってくる北翔を、男は鍔迫り合いで受け止めようとする。

 しかし農業で鍛えた筋肉から出るパワーは、とてもじゃないが男の想定を超えているモノだった。

 鍔迫り合いになった瞬間、男は後ろに弾き飛ぶ。

 弾き飛んだ事によって、上体と刀が上に上がってしまって隙が生まれるのである。


 このままではマズイと男は焦る。

 全力で上腕を使って刀を、正面の構えに戻そうとするのであるが、まだまだ北翔は加速する。

 刀が正面に来る前に、男の懐に入り木刀を振るう。

 これにより今度は男の体がくの字に曲がる。

 そのままさっきの北翔みたいに、後ろに男が吹き飛んでいくのである。



「ど どうなってるんだ! さっきまでとは比べ物にならないぞ!」



 吹き飛ばされた男は、北翔の進化した速さに驚きを隠せずにいる。

 素直に驚いていると、北翔は休ませてくれない。

 膝をついている男に向かって飛びかかる。

 横に飛び出しても避けられないと思った男は、衝撃を覚悟して北翔の攻撃を受け止める覚悟をした。


 向かってくる北翔と鍔迫り合いになる。

 すると北翔のパワーにより受け止めた瞬間、男の下の地面にヒビが入るほどの力だ。

 こんな攻撃を喰らって、タダで済むわけもなく口から血を吐くレベルで食いしばっている。

 それでも受け止めた男は、刀を振るって北翔を自分から遠ざからせた。



「いきなり雰囲気が変わったかと思ったら、身体能力まで上がったように見える……どういうカラクリだ?」


「どうもこうもねぇよ! テメェを叩き斬る為に、全力を出してるだけだろうが」


「それだけで、ここまで変わるものか……面白い! そんなガキに、世の中の現実っていうのを教えてやる」



 男は立ち上がると北翔に向かって飛び出す。

 スーッと息を吸ってから息を止め、そこから北翔に向かって連撃を行なうのである。

 まさしく台風の中に入ったように、凄まじい威力の攻撃が四方八方に飛んでくる。

 これには北翔も何とか防ぐ事で精一杯だ。


 しかし次第に北翔の体の各所に、男の刀によって付けられた刀傷ができてくる。

 これは男の攻撃を防げなくなっている証拠だ。

 ここに来て経験値の差が、露骨に出て来てしまう。

 それでも耐えなければ、直ぐにでも北翔の首は刎ねられてしまうだろう。


 必死になって耐えている。

 呼吸を止めて攻撃に振り切っているのだから、呼吸をする為に攻撃の手が緩む。

 それまで耐えればいいのだ。

 北翔は全身全霊をかけ、男の攻撃を受け切る。

 そして遂に男の息継ぎの瞬間が来た。



「今、ここだ!」



 北翔はカウンターを男の頭部に打ち込む。

 刀でやっていれば即死も行けただろうが、木刀でやっている為、額から血を流させる事しかできない。

 それでもまた男を後ろに後退させる事はできた。



「血を流したのは久しぶりだな……俺を本気で怒らせたみたいだぞ」


「本気で怒らせた? 笑わせるんじゃねぇよ、さっさと本気でやらねぇと死ぬぞ?」


「調子に乗るなよ、ガキがぁ!」



 額から流れている血を触った男は、かなり怒り心頭の表情を浮かべながら北翔を睨む。

 それに対し北翔はビビるどころか、もっと煽る。

 これに耐えられなくなった男は、さっきまでの繊細な構えではなく無造作な構えで突撃する。


 北翔は与四郎がやっていたように、木刀を正面で構えたまま顔も体も動かさずに待つ。

 ジッと動かずに男を間合いまで誘い込む。

 そして間合いに男が入った瞬間、北翔は全身に力を入れ渾身の一撃を北翔に叩き込む。


 男の刀は北翔に当たらず、北翔の木刀は男の顎に命中するのである。

 そのまま男は後ろに吹き飛んでいく。

 この衝撃で男の手から刀が、スポーンッと北翔の前に飛んでいくのだ。



「こ この俺が、どうしてこんなガキに……」


「テメェと俺とでは戦う理由が違うんだよ!」



 男は北翔の足元に飛んでいった刀を取ろうと、這いつくばりながら移動する。

 しかし先に北翔が刀を手にした。

 その瞬間、男は思わず「あっ……」と声を漏らす。

 そこから間髪入れず、勝てなかった理由は戦う理由であると言って男の背中に「仇っ!」と言わんばかりに突き刺してトドメを刺した。

 これにより男は「うっ!」と言って力尽きる。


 北翔は男が完璧に死んでいるのを確認してから、刀に付いた血を払って秋時陛下のところに駆け寄る。

 まさか男に北翔が勝てるとは思っておらず、衝撃で口を開けたまま言葉を失っていた。

 そんな秋時陛下に北翔は「陛下?」と聞く。

 すると「あ あぁ……」と陛下は動いた。



「す 凄いな! あの男に、サシでやって討ち取る事ができるなんて……ちょっと感動したよ」


「ほ 本当ですか!? ありがとうございます! 陛下に、お褒めの言葉をいただけるなんて……とても恐悦至極です!」



 まさか自分の国の王様に褒められるなんて思っておらず、北翔は目をキラキラさせながら頭を下げる。

 秋時陛下が褒めるのも無理は無い。

 あの男とサシで戦って勝ってしまうなんて、普通の12歳の少年が戦っていたとは思えないからだ。



「北翔、1つ聞いても良いかな?」


「はい? 何でも聞いて下さい!」


「君は武士になりたいの? 助けてくれた君たちは、戦争にすら行けない下級百姓だよね?」


「確かに戦争すらいけない国民です。陛下からしたら取るに足らない存在かも知れません……しかし! 俺は親父のように武士道を探求する人間なりたいです」



 秋時陛下は北翔に、1つ質問をする。

 それは北翔は武士になりたいのかという質問だ。

 どういう意図で、この質問をされたのか北翔には難しいところではある。

 しかし自分が思っている事を言えば良いのだと、百姓ながらに武士道を探求したいと伝えた。

 この答えに秋時陛下は、ニコッと笑った。



「これは俺の独断専行だが、この戦いが終わったら平民の地位をやろうと思ってる。もちろんそこからは1番下の二等兵から成り上がって貰うけどな」


「マジですか!? 俺、武士になれるんですか!?」


「本当の武士になるのは、もっと先だろう……だけど本当の武士になる頃には、日本列島に北翔の名は轟いているかもしれないな」


「そうなるように頑張ります!」



 秋時陛下は泰周殿下との戦いが終わったら、北翔を下級百姓から平民にあげるつもりだという。

 これで北翔は戦争に参加する事ができる。

 まさか北翔は、そこまで秋時陛下にして貰えるとは思っておらず、ガッツポーズをするくらい喜んだ。

 この姿に秋時陛下も笑みを溢す。



「それでこれからどうするんですか? このまま何もしないってわけにも……」


「もしもの時の為に、浅井と合流するところを決めているんだ。今からそこに向かいたいと思ってる」


「それなら良いですね! そこはどこですか?」


「胆振郡安平町だ」



 このままに洞窟の中にいるわけにもいかないので、北翔はこれからについて質問する。

 どうやら秋時陛下と浅井との間で、何かあった時に合流するところを決めているとの事だ。

 それならこれから向かおうと北翔はいう。

 秋時陛下は「あぁ!」と答える。



「ちなみに……安平町までの行き方って」


「あぁ知らない! どうやっていくべきか」


「そ そんなぁ」



 北翔は秋時陛下の異変に気がつき、安平町までの行き方は知っているのかと聞いた。

 すると案の定、秋時陛下は安平町への行き方を知らなかったのである。

 これからどうしたものかと困惑する。

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