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日本滅亡〜日本が大変な事になりました〜  作者: 灰谷 An
第1章・王族の反乱 編
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002:始まりの話②

 与四郎が木刀を構えた事で、村人たちは家の中に少年がいると悟ったのである。

 もう話し合いも意味が無いと思ったリーダー格の男は、村人たちに「囲め!」と指示を出した。

 この言葉通りに村人たちは、農具を持ったまま与四郎の周りをグルッと6人で取り囲む。



「与四郎っ! 痛い思いしたくなきゃ、さっさとそこを退け!」


「退くわけないだろ! どうなるのか、分かってて避ける武士が、どこにいんだよ」


「お お前は武士じゃないだろ!」



 リーダー格の男は、隣人の情けとして道を開けるように警告する。

 しかし与四郎は少年が売られるというのが分かっているのに、武士として少年を村人たちに渡すわけにはいかないと拒否した。

 この与四郎の武士発言に、リーダー格の男は武士ではなく百姓だろうとツッコミを入れる。



「もういい! お前ら、やっちまえ!」


『おぉおおお!!!!!』



 本当はやり合いたく無いが、村人たちも家族の生活がかかっているのでやるしか無い。

 リーダー格の男の掛け声と同時に、雄叫びを上げながら与四郎に向かっていくのである。

 村人たちの顔は覚悟をした表情をしている。

 色々と気持ちを抑え込んで向かっているのだ。


 それに対し与四郎は、木刀をスッと構えたまま表情も動きも変えずに待っている。

 そして村人たちが間合いに入ったと見るや目にも止まらぬ速さで、向かって来た1人に胴を打って数メートル吹き飛ばすのである。

 これには村人たちの足が止まる。

 止まるどころか、後ろに下がり始めた。



「どうした! さっさとかかって来い!」


「に 逃げるぞ!」



 1人がやられた途端、攻めて来なくなった村人たちにかかって来いと煽る。

 しかしもう無理だと負けを悟る。

 そのままリーダー格の男の掛け声で、必死になって闇の中に逃げていく。

 与四郎は何とか守り切ったと木刀を下げた。


 その瞬間、消えていった闇の中から「うわぁ!?」という村人たちの叫び声が聞こえて来た。

 どうなっているのかと与四郎は振り返り、目を細めながら闇の中を確認した。

 すると全身がゾワッとする感覚があった。

 恐怖心を感じて直ぐに木刀を構える。



「親父、どうかしたのか?」


「外に来るな!」


「ど どういう事だよ?」


「良いから外に出るな! 木刀を持って!」



 いきなり警戒態勢に入ったので、北翔は与四郎に何があったのかを聞いた。

 凄まじい気迫で近寄るなと言われた。

 なおさら何があったのかと困惑していると、与四郎は北翔にも木刀を持つように言った。

 何も分からないまま北翔は木刀を持つ。


 すると暗闇の中から人影が現れた。

 目を凝らしてみると、真っ黒なローブを着た怪しい男が現れたのである。

 その男の雰囲気は、北翔でも「ヤバい!?」と分かるくらいに殺気を纏っているのだ。

 与四郎の額から汗が流れている。



「テメェは誰だ! テメェも少年を狙ってんのか!」


「無駄な問答はいらん。ガキを渡さなければ、お前らを……殺すっ!」



 男に男の目的を問いただす。

 やはり男も少年を狙っているのだった。

 素直に渡さなければ殺して奪うと脅してくる。



「北翔っ! 母ちゃんと少年を連れて逃げろ!」


「え!? でも!」


「良いから逃げろ! コイツは冗談にならねぇ!」



 もうさすがにヤバいと思った与四郎は、北翔に麻央と少年を連れて逃げるように促す。

 しかし男として武士としてプライドがある北翔は、父親を残して逃げられないと反発する。

 だが与四郎は目の前の男が、冗談にならないほどに強いと思っている為、とにかく逃げるように言う。

 こんな与四郎を初めて見る北翔は逃げる事にした。


 麻央に「逃げるよ!」と言ってから少年を、背中におぶって木刀を手に持つ。

 そして家の裏手から外に出ると、山の中に逃げ込もうと全力疾走するのである。

 それに麻央は必死に食らいついて行く。

 あともう少しで山の中に入るといったところで、男が追いついて来た。

 その男の手には与四郎の首が持たれていた。


 父親が死んだと分かった北翔は、止まるわけにもいかないので走りながら涙を流している。

 とにかく生き延びなければいけないと思いながら走っていると、もう追いつかれそうになる。

 すると麻央が男の腰に抱きついた。

 北翔の足も一瞬止まる。

 しかし麻央は北翔の方を向きながら「早く逃げなさい!」と涙を流しながら叫ぶ。

 生き延びると決めた北翔は、麻央に背中を向けてから森の中に走っていく。



「親父……母ちゃん………」



 背中の方から麻央の叫び声が聞こえて来ながら、振り返る事も助けに行く事もできない。

 そんな辛い状況でも北翔は山の中に走っていく。

 そしてかなり進んだところで、洞穴のような洞窟を発見したので、そこに身を隠す事にした。


 洞窟の中に入った北翔は、地面に少年を寝かせる。

 さっきまで必死に走っていたので、少し感情を抑えられていたが、落ち着けるところに来た瞬間に色んな感情が溢れ出てくるのである。

 溢れ出てくる感情のまま洞窟の壁を殴る。

 血が出てこようが関係ない。


 すると暴れている北翔の音で少年が目を覚ます。

 目をパチッと開くと、どういう状況なのかと目を動かして情報を集めようとする。

 それから上半身を起こして、さらに情報を集める。

 起き上がったところに、泣き叫びながら壁を殴っている北翔を発見した。

 とりあえず立ち上がって警戒をする。

 しかし敵対の意思が無いと悟った。



「お おい! 大丈夫か?」


「ん? 目を覚ましたのか……良かった」



 少年は状況を理解できていないが、とりあえず北翔に大丈夫かと声をかける。

 北翔は声をかけられて少年の方を見た。

 元気そうに立ち上がっているので、北翔は少しではあるが安堵の気持ちが芽生えた。



「ここはどこなんだ? 俺は山の中にいたか?」


「いや、そういうわけじゃないんだ」



 少年は自分が山にいたのかと困惑している。

 北翔は何があったのかを、少年に分かりやすく説明してあげるのである。

 与四郎が村人と戦った事や与四郎と麻央が、謎の男によって殺された事もだ。

 その話を少年は静かに、小さく頷きながら聴く。



「俺が寝てる間に、そういう事があったのか……」


「それでお前は誰なんだ?」


「自己紹介をしないとな。俺は……北星王国第7代国王《瀧上 秋時(たきがみ あきとき)》だ」



 北翔は少年が口にした名前に耳を疑った。

 頭の中で情報が整理できず、目の前に王様がいるわけがないと思って「も もう1回」と聞き直す。

 それでも秋時陛下は国王であると言った。

 王様と聞いたのは嘘ではなかったと思った北翔は、飛び上がって数メートル下がり頭を深々と下げる。

 これは首を刎ねられるのでは無いかと焦っている。



「そんなに恐縮するな。貴殿らは俺の命を救ってくれた恩人だ、貴殿の両親も全てが終わったら供養する」


「あの……一体なにが、どうなっているんですか?」


「その話をすれば長くなる……聞いてくれるか?」


「え? えぇ聞かせて下さい!」



 寛大だった秋時陛下は、笑って許してくれた。

 何とか処刑は免れたところで、何がどうして国の王様が自分の目の前に居るのかと聞くのである。

 理由を聞かれた秋時陛下は暗い表情をした。

 ここにいる理由を説明するとなると長くなるが、それでも良いかと北翔は聞かれる。

 もちろん理由を聞けるのならば長くても聞く気だ。

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