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第97話 女王の矜持

 「マリ陛下、ご無事で何よりです!」


 元黒騎士団団長のデラン達がファーストとセヴンスを連れたマリに駆け寄る。


 「デランさん! 良かった、此処は見つかってないのね」


 「はい、陛下のメイド達が退避して来た際に脱出を開始することを聞きました。 今はエイトスさんとナインスさんが先導して部下達の家族を避難させています」


 デラン達は完全武装だ。


 もし、此処が敵に見つかれば戦うつもりなのだろう。


 「そっかそっか、でも……先に逃げて無くて大丈夫? 見つかったら、帝国の兵士と殺し合いになっちゃうよ?」


 「構いません。 何故、陛下が処刑される事になったかは聞きました。 正直……もうゴルメディア帝国に忠誠心はありません。 部下達も気持ちは同じです! そうだろお前達!!」



 「「「「「おぉぉぉぉぉぉぉっ!!」」」」」


 広い地下都市に大勢の黒騎士達が武器を掲げる。


 「あはは、頼もしいね。 後はメリーさんとスィクススと……誰が来てない?」


 「戦闘員ではセカンド、サード、フォース、フィフスがまだです。 支援要員はスィクススのみがまだですね」


 マリの質問に答えたのはメイド暗部部隊のテンスだ。


 「テンス! 貴女も無事で良かった!! じゃあ、これで支援要員の皆はスィクスス以外揃ったんだね。 他の戦闘員の皆は?」


 「各自、退避する穴を塞ぎメリー隊長の下に行きました」


 「そっか~、でも戦闘員の皆がメリーさんの応援に行ったなら大丈夫かな……。 大丈夫だよね? ファースト」


 負傷したセヴンスを座らしたファーストがマリの方を見た。


 「断言はしかねます。 隊長は凄まじくお強い方です……まず心配は要りません。 ただ……セヴンスから聞いたのですが、妖精様が敵方になったとは本当なのですか?」


 マリは黙って頷く。 

 理由は定かでは無いが、黒いアレはティナでは無かった。


 正気を取り戻したティナの言葉がマリの脳内に響く。


 『ごめんね、あたいが全部悪いの。 だからあたいはもう良い……』


 (どういう意味? ティナの身体が黒くなった事に理由がありそう……んんんん! 分かんない!)


 マリの知識には無い出来事がまた発生した。


 乙女小説の正史には、妖精ティナが何かに乗っ取られる様な事は無かった。


 これも自身が行った事で正史が歪んだ結果なのだろうかと自問自答していると、奥からアマンダが駆けて来た。


 「陛下! よ、良かったですー! ご無事だったんですねー! 直ぐに降りて来ないから、わだじ、わだじ心配じだんでずがらねぇぇぇ!!」


 顔中が涙と鼻水で溢れているアマンダをマリは抱きしめる。


 「よしよし、ありがとうアマンダ。 セヴンスのおかげで何とか生きてるよ~」


  その後、アマンダが落ち着くまでマリは背中を擦り続けるのであった。


 ◆◇◆


 暫く経った後、残っていた元黒騎士団達もドワーフ達も退避しマリはメリー達が来るのを待っていた。


 「陛下、残すのはこの場に居る私とデラン殿含めて3人となりました。 隊長を信じて脱出すべきです。 最悪、敵が乗り込んで来るとなると危険です」


 ファーストに進言されるが、マリは動かない。


 「ありがとうファースト。 でも、私は行かない」


 「陛下……私もファースト殿に賛成です。 退避すべきかと」


 デランにも注意されるが、マリは頑なに降りてきた穴の前で待ち続けた。


 「何故? メリー隊長はともかく、他のメイド暗部部隊等……知り合って間もない捨て駒では無いですか」


 ファーストがマリに問う。


 「それは違うよ、ファースト」


 それをマリは否定した。


 「貴女も、他の皆もエントン王国の守るべき民に変わりない。 私には戦う力は無いし、待つしか出来ない。 でも、私は待つ。 もし敵が攻め寄せてきたら、一番に囮になるべきは私だから」


 仁王立ちで待ち続けるマリにファーストは啞然とした。


 「そうですか……。 貴女は、先代と本当に真逆の人なんですね」


 ボソリと呟いたファーストの言葉はマリの耳には届かなかった。

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