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第96話 人質

 6人はドワーフ工房の1つ上の部屋に到着していた。


 「やはり、工房は敵兵士が多いですね」


 メリーが空けた大穴から下を覗き、多くの敵兵士達が死体の片付けやマリ達の捜索を行っているのを確認する。


 「隊長、帝城に居る味方はこの場にいるので全員です。 地下への退路に直ぐ様入り、入口を崩落させてしまえば追手の心配も無いのでは?」


 スィクススの進言に、メリーは指先を噛みながら思案する。


 「あれ~? メリーちゃん、何か近付いて来てるよ~!」


 見張りをしていたサードの報告にメリーは覚悟を決めた。


 「全ての敵を殲滅する時間はありません。 下に降りたら退路の近くに居る敵のみ殺し、退路に撤退します。 セカンドとフォースが先に、サードはスィクススと一緒に行って。 フィフスは皆の援護をしながら撤退しなさい」


 「「「了解!」」」 「了解さんよ~」


 「それは良いっすけど、隊長は最後っすか? 自分、さっきから何か嫌な予感してるっす」


 フィフスだけが不安気にメリーに問う。


 「私はこの暗部部隊の隊長ですから。 それに、マリ陛下は貴女達の死を望んでいません。 貴女達はマリ陛下に忠誠心は其処まで無いでしょう……でも、私はあの人の望みを叶えたいのです」


 5人は各々に目を合わせ、驚いた顔を見せた。


 「へへっ、隊長何か可愛くなったっすね。 了解っす!」


 「余計な事は言わない! 行きますよ!!」


 赤面したメリーが合図し、6人は工房へと降りる。


 ◆◇◆


 「おい! あの女のメイドが居たぞ!」


 降りると同時に敵兵に見つかり、メリーのこめかみに青筋が浮かび上がった。


 「……お前、私の陛下をあの女と言ったのか? その首刎ねてあげましょう」


 メリーの逆鱗に触れた兵士は叫んだと同時に首を刎ねられ、床へと転がった。


 「自分、さっき言った発言撤回するっす」


 フィフスが弓を構え、矢を放ちながら呟やく。


 「えぇ、首狩りメリーは健在ね」


 セカンドが退路を塞ぐ兵士をナイフで斬り裂きながら答えるが、内心でフィフスはセカンドも大概だと思った。


 毒殺されたくないので、決して言葉にはしないが。


 「おらおらおら! やっぱり生きてる相手が1番だぜえ!」


 ようやく、自身の拳が効く相手に出会えたフォースは満面の笑みで兵士の顔を殴る。


 「スィクススちゃん、怪我をしてるのだから離れたらダメだよ~?」


 「すみません、サード様。 ありがとうございます」


 捕らえられ、負傷しているスィクススをサードが守る。


 戦闘を開始して暫く、遂に退路へと辿り着いた。


 「隊長、退路は無事です! 撤退しましょう!」


 セカンドが本棚を倒し、地下へと進む道を開いた。


 それには6人を囲む兵士達は驚愕するが、時すでに遅しだ。


 「撤退を開始しなさい! フォース、貴女が最後よ!私が入ったのを確認したら入口を矢で崩しなさい!!」


 「「「「了解!」」」」 「了解さんよ~」


 セカンドとフォースが入口を守り、スィクススとサードを撤退させる。


 次にセカンドとフォースが入り、フィフスに合図する。   


 「隊長準備完了っす! 来て下さいっす!」


 メリーはフィフスの声を聞き、直ぐに退路へと下がる。


 そして奥へと進み、フィフスが限界まで絞った矢を放った。


 退路の入口は崩れ始め、隊員達が各々に明かりを灯し安心しかけたその時。


 『あはははは! 残念でしたぁ~~~!』


 6人しか居ない洞窟の中で知らない声がしたと瞬間に、メリーが5人を奥へと突き飛ばした。


 「逃げなさい!!」


 メリーが叫ぶと同時に身体が宙に浮き、崩れ始めた入口に向けて高速で引っ張られた。


 「隊長!!」


 メリーはそのままドワーフ工房へと引きずり出され、残された5人の下に知らない声が響いた。


 『マリに伝えて~。 貴女があのピンクの身代わりになるなら、まだ殺さないであげる。 勿論、1人で来てね~。 あたいはずっと見てるからね? 貴女が必要なの……目的を達成させる為に。 だから、お前達は……今は殺さないであげるね』


 声が止み、セカンドはマリ女王に報告する事を直ぐに決めた。


 「仕方ありません。 女王陛下に報告するべきです」


 「くそっ! 見えないとか意味分からねぇ! ぶん殴れねぇじゃねぇか!」


 「落ち着いて~。 メリーちゃんで良かったよ~、他の誰かだったら直ぐに殺されても不思議じゃなかったからね~」


 「サード様は、あの声の主に心当たりが?」


 「皆もメリーちゃんの連絡書は読んでるでしょ~? 考えられるのは、妖精さんだと思うの」


 「えぇっ!? 本当に妖精っていたっすか!?」


 「皆さん、話しは後です。 此処も崩れるかもしれません、先に進みましょう」


 「でも、女王陛下って本当に信用できるんっすか? 身代わりにわざわざ死にに行くなんて信じられないっす。 だって、何だかんだ言っても人間っすよね?」


 「フィフス、黙りなさい」


 真顔のサードに嗜められたフィフスは押し黙る。


 「す、すんませんっす」


 こうして、残された5人はマリの下へと急ぐのであった。

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