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第89話 裏切り

 マリは選んだ窓の光景を見ようとするが、肩のティナがまだ反対をしていた。


 『ちょっとマリ! あんた何考えてんの!? ダメよ、ダメ! 絶対にダメ! あんたの未来を見ないと後悔する事になるよ!』


 しかし、マリも一歩も引かなかい。


 「ごめんね、ティナ。 でも、私はファーストを助けたい。 まだ知り合って1ヶ月ぐらいの仲だけど……時々私を信じられないモノを見るような目で見てくるけど仲間なの」 


 マリはファーストが鎖に繋がれた未来を見る。


 これが最善と信じて。


 ◆◇◆


 ファーストはメイド長の激務を行いながらクロモトの監視を続けていた。


 先日のメリーからの指示で、クロモトが隠し部屋から出てきたら即座に殺せと命令が下されたからだ。


 (あの不気味な人形は工房までは出て来ないのね……良かった)


 ファーストは、一度だけ目視で確認した両手が剣の人形を思い出し寒気を覚える。


 単身でキャット王国に殴り込みに行くファーストが1体の不気味な人形を前にして死を覚悟したのだ。


 (もしアレが複数いるなら、戦闘員全員で襲ってギリギリ相討ちね)


 メリーの次に強いファーストは絶対に勝てないとは言わない。 動力が報告書にあった通り、精霊を閉じ込めて動かしているのならその檻を破壊すれば人形は止まるだろう。


 最悪止まらなくても粉々に砕けば良いのだ。


 (怪しまれる前に戻らないと……ん!?)


 ファーストが今日の監視を終えようとしたその時、工房の隠し部屋に続く扉が開いた。


 見た目は本棚だが、其処が開くと隠し部屋に繋がっているのだ。


 「目標確認……人形は居ないわね」


 隠し部屋から出てきたクロモトは不敵な笑みを浮かべたまま工房から出ようとしていた。


 「いける。 死ね……がっ?!」


 クロモトの背後に降り立ったファーストが、素手でクロモトの首を跳ねようとした瞬間クロモトの背中から大量の剣がファーストに向かって突き出てきた。


 ファーストは瞬時に反応するが、剣を避けきれず身体に複数刺さってしまう。


 「ぐっ……何故バレた! それに、貴様……クロモトでは無いな!」


 クロモトの首が180度回転し、不敵な笑みを浮かべた顔が無機質にファーストを見る。


 「ひゃひゃひゃ! かかった、かかった! どうじゃ? 儂お手製の麻痺毒じゃ。 もう動けまい? 幾ら化け物と云えど」


 隠し部屋から本物と思しきクロモトが現れ、ファーストを笑う。 そして、その後ろからもう一人隠し部屋から出て来た。


 「ふん、やはり貴様か新メイド長。 怪しいと思っておったのだ。 幾ら近衛師団団長カエサルの推薦でキャベルが褒める程に優秀とは云え……貴様は優秀過ぎた」


 現れたのはブラック宰相であった。


 ファーストは麻痺毒のせいで意識が昏倒とし、遂には気絶した。


 「ひゃひゃひゃひゃ、おい儂の可愛い人形ちゃんや。 そのネズミを奥へ連れて行くぞ」


 クロモトが偽物に話しかけると、クロモトの身体を切り裂き中から人形が現れる。


 その人形は女性の面影を持つ無機質な人形だった。


 しかし、ファーストが間近で見れば即座に理解出来ただろう。

 

 人形の身体は、まるで生きた人間の様な皮膚だったと。


 ◆◇◆


 ファーストは隠し部屋に連れて行かれ、鎖に繋がれていた。


 暫くした後にファーストの意識は回復し、周囲と鎖を確認する。


 どうやら、隠し部屋の中にある牢屋に閉じ込められたようだ。


 周囲の壁には血痕や爪痕が多く残され、此処に入れられた者の末路を物語っている。


 「……くっ、力が入らない」


 ジャラジャラと鎖が音を鳴らすが壊れる事は無かった。


 「ひゃひゃひゃひゃ、お目覚めかな? ネズミちゃん」


 牢屋にクロモトとブラック宰相が入り、扉の入口に両手が剣の人形が見張りなのか立っていた。


 「ぐっ?! ちっ……殺せ」


 ファーストは即座に死を覚悟し、舌を噛み切ろうとするが身体に力が入らず噛み切る事は出来なかった。


 「先に情報を寄越せ、そうしたら楽に殺してやる」


 ブラックの猛禽類の様な目がファーストを睨みつける。


 「おい、ブラック。 約束が違うぞ! コイツから情報を聞きだしたら儂の研究に使って良いとあのお方に言って頂いたのじゃ!」


 しかし、クロモトがブラックに文句を言い。 それにブラックは苦虫を噛み潰したような顔で押し黙った。


 「すまんすまん、安心して欲しい。 用済みになったとて、ちゃんと儂が有効活用してやるからの。 ひゃひゃひゃひゃ、楽しみじゃ楽しみじゃ。 あのお方の望みに一歩また近づくのじゃ!」


 狂人の戯言にファーストは眉をひそめるが、今は何も出来ない。


 しかし、少しでも情報を得て何とか仲間に残そうと力の入らない口を動かしファーストはクロモトに質問した。


 「あのお方……どんな素敵な人……なの?」


 なるべくクロモトが気に入りそうな言葉を選ぶと、クロモトは上機嫌で話し始めた。


 「気になるか? そうじゃろ、そうじゃろ……特別に教えてやろう」


 「おいクロモト! 口を慎め」


 ブラックに口止めされるがクロモトは意に介さなかった。


 「怖がりじゃのぉ、ブラックは。 どうせ、このネズミが知った所で何も出来ん。 仮に生きて逃げられたとしてものぉ」


 ニチャァと擬音が聞こえそうな程にブラックは不気味に笑う。


 「あのお方は儂の全てじゃ! 見よ、この可愛い人形ちゃんを! あのお方から与えられた知識を元に、科学の技術を融合させ創り上げたのじゃ! 全てはあのお方が望む未来の為!! 悍ましき未来を壊し、新たな希望に満ちた未来を築くじゃぁぁぁぁ!」


 牢屋にクロモトのけたたましい叫びが響き渡る。


 ファーストは聞きながらも、必死に身体をよじり少しでも逃げれる様に動こうとした。


 しかし、全ては遅かった。


 突然ファーストの首が音もなく落ち、それを見たクロモトが悲鳴を上げる。


 「そんなぁぁぁ! 儂の研究がぁぁぁぁ!」


 そして、ファーストの脱力した肩に黒い何かが降り立った。


 『良くもまぁペラペラと……ねぇクロモト。 ()()()の存在をほのめかすなとアレ程言ったよねぇ? ダメじゃない、あの女がこの未来を見るかもしれないんだから』


 「「申し訳ございません……」」 


 ◆◇◆


 クロモトとブラックが頭を下げた相手を見た瞬間、マリは窓から飛び退き、ティナを見た。


 肩からはじき飛ばされたティナは空中に浮かんでいる。


 『ほらぁ……後悔する事になるって言ったのにぃぃぃ』


 不気味に笑うティナの身体は肌は褐色のままだが、金髪や妖精っぽい服も全て真っ黒に染まり瘴気の様な黒い靄が背中から出ていた。


 「嘘だよね……ティナ」

  

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