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第85話 メイド暗部部隊と暗躍する猛禽類

 「くぴくぴくぴ……ぷはぁ~、美味しいぃぃぃ」


 鬼殺しをワイングラスに並々注いだマリは一気に飲み干し、幸せそうに呟いた。


 「陛下……続けてもよろしいですか?」


 「うん、いいよ~」


 メリーは半目でマリを見ながら、残りの者に自己紹介を促す。


 「うふふ、良い飲みっぷりですね。 初めて……では無いですが、多分陛下はご存知無いと思いますので自己紹介しますね。 スィクススと申します。 序列6位の普通のメイドですよ~。エントン王国では給仕メイドとして陛下にお食事をいつも運んでたんですよー?」


 何とも可愛らしい少女メイドがお辞儀をした。

 容姿は茶髪で口元にホクロがあるぐらいで、他の一般メイドに混ざると判別は難しいだろう。


 現に、エントン王国ではマリの食事の給仕は全てスィクススが行っていたがマリの記憶には全く無かった。


 メリー曰く、メイドとして紛れ込む才能が飛び抜けておりこの帝国でも当たり前の様に初日から帝城の給仕メイドとして働いているそうだ。


 「次は私だね。 初めましてマリ女王陛下、さっきのスィクススは言ってなかったけど私もメイド暗部部隊の支援要員の1人、序列7位のセヴンスだよ。 主な任務は潜入かな? 今は近衛師団に潜入して陛下の監視に抜擢されてるぜ? 中々やるだろ?」


 少し男勝りな黒髪メイドだ。 体格もそれなりに筋肉質だが、それは戦闘では無くメイドとしての雑用等をこなした結果である。今は近衛師団に潜入している為に鎧を着ているが普段はメイド服を着ているそうだ。


 セヴンスも言っていたが、既にこの帝国に近衛師団の一員として溶け込んでおりキャベル女皇帝からの勅命であるマリの監視を任される程だ。


 メリー曰く、メイド暗部部隊で一番の情報収集力を持っておりエントン王国でも仕事の時は確実な情報を入手してくるそうだ。


 そして、残りの3人か一斉にお辞儀をし、顔を上げた3人をしっかり確認したマリは驚いた。


 「「「お久しぶりです、陛下。 ルーデウス殿下の女装見れなくて残念でしたね。 あ、すみません。 私達はエイトス、ナインス、テンスでございます。 ご存知の通り、エントン王国ではメリー隊長と共にお着替え等のお世話をさせて頂いておりました。 序列は最下位の8位と」9位と」10位でございます」


 3人が同時に喋るが、違和感なく混乱する。


 容姿が全然違う所を見るに、三姉妹とかでは無く連携が神業レベルなのだ。


 左から金髪メイドのエイトス、真ん中が銀髪メイドのナインス、右側に白髪メイドのテンスだ。


 マリが女王に就任する際に、無理矢理正装ドレスに着替えさせていたメイドの3人である。


 メリー曰く、支援要員達は潜入の達人であり序列の各位関係無く皆がその道のプロだと云う。


 しかし、マリはそんな説明はどうでも良かった。


 鬼殺しの瓶をテーブルに叩きつけ、3人の下に近寄る。


 「陛下、以上がメイド暗部ぶ「それどころじゃないよ!」


 メリーの言葉を遮り、マリは凄まじい剣幕で3人に掴みかかる。


 「ルーたんの女装って何?! 聞いてないんだけど!? 詳しく、今すぐ詳しく教えて! 推しからの供給を逃すとかオタクとして万死なの! 即死なのよ!! 教えて、早く早く教えろぉぉぉぉぉ!!」


 嫉妬の炎が燃え上り、推しの女装という最高のご褒美を逃したマリの雄叫びが部屋に木霊した。


 ◆◇◆


 マリの雄叫びが木霊している頃、キャベル女皇帝は執務室でマリから提出された羊皮紙を見ていた。


 「おい、ブラック宰相を呼べ」


 「はっ! 直ちに」


 兵士が執務室を退出し、直ぐにブラック宰相が猛禽類の様な目を細めながら入ってきた。


 「女皇帝陛下、お呼びですかな」


 「来たか……座れ」


 ブラックはキャベル女皇帝が非常に不機嫌なのを瞬時に悟った。座ったブラックの前に羊皮紙が置かれる。


 「これは……不正、腐敗、横領、職権乱用、殺人、誘拐、人身売買。 この羊皮紙に記されたリストは本当ですか?」


 「あぁ、お前の言う通りマリに裏切り者を探す様に命令した。 この帝国で何も力を持たぬ小娘に肩書きすら与えてな。 少し……演技が過ぎたかも知れぬが、マリは本当に一月も過ぎぬ内にこれだけの女貴族達処刑リストとやらを作りおった」


 「ふふ、やはり私の予想通りですか。 それで? デラン団長を嵌めた者の事は書かれて無いようですが?」


 ブラックは笑った。

 やはり、自分の判断は間違っていなかったと。


 「ふんっ……我を誰だと思っている。 初めから友である黒騎士団団長デランを嵌めた者が誰かも分かっておるし、カエサルが裏切り者であるアバンに肩入れしているのも知っている」


 「分かっていながらデラン団長の仇を討たないのは……御子息だからですかな?」


 「皆まで言うな。 友と息子……天秤に掛ければ息子が勝つのが親の情よ。 それより、ブラックの言う通りマリの情報収集力は異常だ。 何か隠しているのか……だが、監視からの報告では問題は無いのだ」


 キャベルは苛立ちながらテーブルを叩く。


 「ですが、このリストは有用でございます。 折角、亡国の女王が身を粉にして働いたのです。 使って差し上げましょう」


 「だが、これ程の人数を処刑すれば不義を働いていない女貴族達から反感を買うぞ?」


 「問題ございません。 この処刑リストに無慈悲にもサインしたのはキャベル女皇帝陛下ではございません。 マリ元女王陛下に全てを押し付け、忠義厚い女貴族達のガス抜きに利用しましょう」


 「だが……一応は面倒を見ると我が口にしたのだぞ?」


 「このリストを作る情報収集力を見るに、恐らく本当は裏切り者にも見当が付いているのでしょう。 正直に報告しない所を見るに、脅すか何か良からぬことを考えているのかも……」


 ブラックの言葉にキャベルは顔を顰めた。


 全てはゴルメディア帝国の繁栄の為。


 これまでも、多くの犠牲を払ってきたのだ。 長年の友を失った怒りよりも、息子アバンが帝国最強の黒騎士団団長デランを嵌めて死なせた事が広まる方が一大事なのだ。


 キャベルは深く考え、ため息を吐いた後。


 ブラックに命令した。


 「このリストの女貴族達を処刑せよ。 財産、土地全てを没収しろ。 それが終わったら……マリを、エントン フォル マリをゴルメディア帝国に対しての反逆者として広場での斬首を命じる」


 その命令にブラックは猛禽類の様な目を細めて微笑んだ。

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