第84話 全員集合メイド暗部部隊!!
ルーデウス達がマリの為に動き始めてから1ヶ月近くが経過した。
その間、マリは新しく与えられた部屋でひたすらゴルメディア帝国の裏切り者を炙り出し腐った膿を出す仕事をしていた。
与えられた部屋は牢屋より質素だが、それなりに豪華である。 客人でもあり、特別改革大臣でもある身分を考えたら相応しい部屋を与えられたのだろう。
部屋の隠し部屋には監視が付いているが、当然メリーにより対策済だ。
「うえーん! メリーさん、まだ終わらないのー?! 女皇帝さんに言われてからずっと働きっぱなしなんですけどー?!」
マリは半泣きになりながらメリーから渡された羊皮紙にサインし続ける。
「陛下、これも時間稼ぎの為です。 そろそろエントン王国を離れて1ヶ月……タイムリミットが近付いている筈ですが、まだ伝令はありません」
「でも、そもそもこの処刑リストを作ったのはメリーさんとメイド暗部部隊の皆でしよ? 皆でサインしたら良くない?」
メリーに羊皮紙を渡され続ける状況にマリは限界を迎えていた。
自分の王国と大好きな弟の為ならいくらでも血を流すし、処刑リストにもサインしまくるが。 あくまで、この帝国は敵国だ。
マリの首が跳ばないように、お願いという命令を必死にこなしているだけなのだ。
「そうですが……あ! そういえば、今日にでも皆集まる事が出来そうですよ? 全員に一度会って起きますか?」
「お! いいじゃんいいじゃん! 息抜きになるし、呼んでよ~」
マリの返答を聞いたメリーが手を叩くと、直ぐに部屋の扉が叩かれた。
「あ、あの! 陛下にお目通りしたいと、メイド長さん達と近衛師団団長のカエサル様が来られてます」
扉の前を警護していたアマンダの声が聞こえる。
「ありがとうアマンダ~。 入ってもらって大丈夫だよ~」
扉が開かれ、8人のメイド達と近衛師団団長カエサルが部屋に入って来た。
「ひーふーみー……あれ? メイド暗部部隊の皆って10人じゃなかったっけ?」
「貴女もよ。 出てきなさい」
マリの疑問を他所にメリーが壁に向かって話し掛ける。
すると、隠し部屋から1人の近衛師団の鎧を身に纏った兵士が出てきた。
「えっ!? そんな所に人居たの!?」
驚くマリを見てメリーはため息を吐いた。
「陛下……この部屋を与えられた当日にお伝えした筈ですが?」
「あー……お酒を飲むのに忙しかったもので」
メリーはこめかみを押さえ、メイド暗部部隊の方を見た。
「陛下に直接お会いするのが初めての者が多い筈。 1人つづ自己紹介をなさい」
メリーに言われ、横一列に並んだ左端のメイドから前へと進み出る。
「ファーストでございます陛下。 メイド暗部部隊での序列1位として主に戦闘員として任務に就いております」
優雅に一礼をしたのは、赤髪メイドのファーストだ。
亜人解放作戦の際にもメリーにより単独でヨハネの監視に付き、その後はキャット王国に単身で殴り込みに行く等かなりの武闘派だ。
メリー曰く、自身の次に強いのがファーストだという。
「セカンドでございますマリ陛下。 メイド暗部部隊での序列2位として主に暗殺や毒殺等の任に就いております」
セカンドは、長い茶髪を後ろで結んだ美少女である。 微笑む表情は聖母の様に優しいが、先の任務では近衛師団の兵士を首チョンパで殺したと聞いたマリは背筋を震わした。
メリー曰く、怒らした後に出された紅茶は飲んではいけないらしい。
「サードだよ~マリ陛下さん。 メイド暗部部隊の序列は3位だよ~! 何時も誰かに変装したり記憶を奪ったりゴミを掃除したり色々してるよ~」
サードと名乗って一礼したのは近衛師団団長カエサルだ。
見た目はカエサルだが、その正体は自身の身体を変形させ誰かに変装する可愛らしい少女だ。 本当の見た目は何故か見た者の記憶には残らず、可愛らしい少女という記憶のみ残される。
メリー曰く、永遠の少女らしい。
「フォースって呼んでくれ女王さん! 私は序列4位だけどよ、近接格闘術ではメリー隊長の次に強いのは私だよ!」
短髪で赤髪のガッチリとした体格のメイドはフォースと名乗った。 フォースはThe脳筋であり、家事は不得意なメイドだ。
メリー曰く、緊急時での護衛対象防衛能力はメイド暗部部隊で1番だそうだ。
「フィフスっす、初めてお会いするっすね! 序列は5位っすね。 因みに戦闘員は私までっす! こうみえて、遠く離れた獲物を一発で仕留めれるっすよー?」
長い青髪を靡かせ、弓矢を構える動作をしながら自己紹介するのはフィフスだ。 メイド暗部部隊最後の戦闘員であり、遠距離では敵なしらしい。
メリー曰く、昔の任務では視界の悪い暗闇でもエントン王国に来た暗殺者を尽く矢で射抜き殺したそうだ。
「ここからは支援要員です。 先ずは……」
「ごめん待って!!」
メリーが残りの5人を紹介しようとすると、頭を抱えたマリがストップをかけた。
「え? 陛下、どうされました?」
何か問題があったのかと不安気にメリーが聞くと、マリが鬼殺しの瓶を持って申し訳無さそうに言った。
「長くなるなら……お酒飲んでいい?」




