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第63話 マリの独壇場

 「はぁ……そうなんですね。 あぁ、なんてこと~! 私の~王国が滅びたなんてー! あぁぁぁ~!」


 突然始まったマリの棒読み演技に周囲の者達は固まる。もしメリーがこの場に居たら即刻クビにされる演技力だ。 因みに、偽の知らせを聞いた時用の台詞はこれだけだ。 メリーが何度も唸って考えたが、これだけで限界だと判断したのである。


 当の本人は不服そうだったが。


 「……は? いや、その……うん。それで、マリよ。 王族調停は既に不可能となった。 お前はこれからどうしたいのだ? 私は当初と違いお前の豪胆さを気に入っている。 もし、滅びた王国と共に死にたいのなら今度こそ処刑してやるが?」


 キャベルはマリの目の前に立ち、真っ直ぐに見つめる。マリが死を望めば即座に叶うだろう。


 「亡き王国で最後まで戦った者達の為に、出来る限り精一杯生き延びたいと思います」


 棒読みの演技からいきなり冷静に受け答えをするマリを見てキャベルはニヤリと笑った。 周囲の女貴族達や兵士達は何が起きたのかわからずにいる。


 「そうか……ふむ、どうしたものか。 確かキャット王国からもドック王国からも、お前の引き渡し要請は知らせには書いて無かったな。 つまり、煮るも焼くも好きにしろ……か」


 キャベルがマリを見つめながら思考に耽っていると、後ろから近衛師団団長カエサルが進言した。


 「キャベル女皇帝陛下、恐れながら申し上げます。 その小娘は即刻処刑すべきです! 生かせば女貴族達や将兵からの不満の種となりましょう」


 「カエサル……誰が発言を許可した?」


 キャベルの低い声にカエサルは爽やかイケメンの笑顔を引きつらせた。


 「も、申し訳ございません!」


 必死に頭を下げるカエサルを無視し、キャベルは周囲の者達を見回す。


 「デラン……忠臣であるお前の意見が聞きたい。 道中、お前はこのマリに何を思った」


 キャベルに問われ、デランは臣下の礼をしながら答える。


 「はっ! マリ女王陛下は私の配下の者達とすら数日で打ち解け、下の人間を大切にする慈悲深きお方だと思いました。 また、途轍もない酒豪です」


 デランの返答にキャベルは驚きの声をあげた。


 「マリ……その見た目で酒飲みなのか?」


 マリは2人の様子を見て違和感を感じたが、キャベルに話し掛けられていると気付き咄嗟に答える。


 「え? あ~……黒騎士団の皆を酔い潰すぐらいには?」


 マリの返答にキャベルは目を丸くした後に笑い始めた。 話したデランでさえ微かに笑っている。


 この世界では男より女の方が偉いとされている。その基準で考えると、小国といえど一国の女王が戦働きしか能のない男達と野営で酒を飲むなど言語道断であり酔い潰す等あり得ない事だ。 しかも、相手は攻めてきた敵の兵士達なのだから。


 「はっはっはっ! 面白い、本当にお前は面白いな! よし、決めた。 勝負だマリ、酒飲み比べでお前が勝てば生かせてやる。 負ければ……そうだな、確か女王を失ったばかりの小国があったな。 其処に売り飛ばすか」    


 (そうきたか……う~ん、負けないとは思うけど負けたらルカの計画が台無しになるしな。 どうしよっかなー……ちなみにお酒どんなのが出るんだろ。 もしかして飲んだ事の無いお酒とか出るのかな……うん!受けても良いよね!)


 マリは一時考えたが、直ぐに決断した。


 酒が飲めるなら万々歳だと。


 「その勝負受けます! そうですね、私が勝てば暫くこのお城にご厄介になりましょうか」


 一応負ける気の無いマリは、当初の目標を果たすべく条件を提示した。


 「よし! おい、酒を持って来い!! マリには悪いが戦勝祝いだ皆も飲め!」


 大広間にメイドが大勢入って来て戦勝祝いの準備を始める。


 女貴族達や将兵達は、自分の王国を滅ぼした戦勝祝いをするという状況にマリが流石にショックを受けているだろうと高を括っていたが。


 当の本人は準備される酒の品々に小躍りして喜んでいた。隣のキャベルは面白い余興だとマリの隣で笑っている。


 意気揚々で戦勝祝いの宴を待つ姿を見て女貴族達や将兵達は余りの衝撃に固まり、近衛師団の兵士達や団長カエサルですら口を大きく空けて放心した。


 そして、黒騎士団の団長デランとマリの酒好きを身を以て知っている兵士達は笑っていた。

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