表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

64/231

第62話 王族調停大荒れ

 「ほ、ほぉ……そうか。 何故そう思う」


 血管を浮かせたキャベルは、それでもまだ冷静を装いマリに再度問う。


 周囲の女貴族達は憤慨し、将兵達も切り捨てろと喚き立つ。何事かと別室で待機していた近衛師団の団長カエサルや黒騎士団の団長デランが兵達を連れて大広間へとやってきた。


 余りの煩さにキャベルが声を張り上げようとすると、先にマリが大声で応えた。


 「うるさぁぁぁぁぁい!! 何故自分の国がこんな小娘にゴミ以下だと言われるのか、それすら考えが及ばない……恥を知りなさい!」


 大広間が静まり返り、キャベルは深くため息を吐く。


 「そうか……私の帝国はゴミ以下か。 はっはっはっ! 長く続く帝国の歴史でも初めて言われた事だな。 なぁ、小国の女王よ。 まさか、王族調停だからと言ってその首が刎ねられない等と思っていまいな」


 キャベルが玉座を立つと、隣に来ていた近衛師団団長カエサルが腰の剣を抜く。


 マリはカエサルを睨んだ後、キャベルの事を真っ直ぐに見つめた。


 「聞かれた事に応えただけなのに……ゴルメディア帝国の女皇帝陛下ともあろうお方がそんな浅はかだとは残念でなりません」


 剣を突きつけられても態度を全く変えないマリを見て、キャベルすら唾を飲み込んだ。 


 「哀れな小国の女王は……死ぬのが怖く無いのですか?」


 カエサルが剣を握る手に力を込め、マリの首を刎ねようとしたその時。


 「待てカエサル!! キャベル女皇帝陛下が命じてもいないのに王族調停に守られた他国の女王を害するつもりか!」


 後一歩でマリの首が飛びそうになった瞬間、デランが大斧でカエサルの剣を受け止め弾いた。


 「なっ?! デラン殿……何故邪魔をするのですか!?」


 驚くカエサルの後ろで他の女貴族達も疑問の目をデランに向ける。


 (しまった! 頭に血が上りすぎてたー! まさか、デランさんはこれでキャベル女皇帝に疎まれ殺すように勅命を出されたの?!)


 大広間に居た者達の視線がデランに集中している中、マリは胸中で猛省していた。 お世話になったデランが自分を庇うきっかけを自分自身で作った事に衝撃を受けた。


 デランが激しく凶弾され始めた直後、マリはキャベルに対して深くお辞儀をした。


 「キャベル女皇帝陛下、度重なる非礼心よりお詫びします。 長旅の疲れから故、口が過ぎてしまいました」


 マリが形式上とは云え、謝罪した事でキャベルは動かざる終えなくなった。  


 「皆静まれ! マリ女王の謝罪は受け取った。 黒騎士団団長デラン、カエサルの狼藉を止めた事感謝する」


 キャベルに礼を言われたデランは片膝を付き頭を下げている。 マリはそんなデランを射殺す様に睨みつけるカエサルの事を見ていた。


 (お前にデランさんの家族は絶対に殺させないからな! まぁ……デランさんがカエサルに睨まれてるの実質私のせいなんですけどね)


 マリが胸中で唸っていると、キャベルが咳払いをし懐から羊皮紙を取り出し話し始めた。


 「さて、まだ1つ目の質問だったな。 では、2つ目だ。 マリ女王はまだ知らない様だが……エントン王国はキャット王国とドック王国により滅ぼされたそうだ。 それで……聞かせて欲しいのだが、既に王国亡き女王がどんな理由で王族調停を果たすのかな?」


 それを聞いた女貴族達はニヤつき、将兵達やカエサル達はマリを嘲笑う。 愚かな女王だと、既に守る王国は滅びたと云うのにノコノコと帝都までやって来た阿呆だと。


 援軍の任に元々付いていたデランと黒騎士団の兵士達が驚愕していた所を見るに、知らせは届いたばかりなのだろう。


 皆の様々な視線がマリに集まる中、マリはひたすらに面倒くさそうにため息を吐いた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ